不動産市場展望~中国ショックはあるのか?

中国ショックはあるのか?

総額33兆円の巨額負債を抱える中国不動産大手「中国恒大(こうだい)集団」の経営危機により、「中国の不動産バブルは崩壊するのではないか」といったことがささやかれています。「20世紀最大のバブルといわれた日本の不動産バブルと、その崩壊がもたらした日本の長期経済停滞」「米国の住宅バブルと、その崩壊がもたらした世界的な金融危機」のようなショックは起こるのでしょうか。

不動産バブルが崩壊し、長期経済停滞に陥る原因は、次のように考えることができます。

第一が、需要の低下を通じて発生する影響です。現在の中国では、まだまだ不動産需要は停滞しているとは言い難いです。日本のバブル崩壊は、金融政策の急激な変更に、就業人口が減少に転じる時期が重なったことが大きな原因でした。

第二が、将来の期待の低下を通じて発生する影響です。資産価格は、将来収益の割引現在価値として決定されますので、将来の期待が低下し、リスクが上昇することによって割引率が高まるために、不動産価格を暴落させてしまいます。しかし、まだまだ中国の成長期待は大きく、たとえ恒大ショックのようなことが起こったとしても、中国の経済成長に対する期待がしぼむことにはならないのではないでしょうか。

第三が、経済全体の生産性が低下することによって発生する影響です。経済全体の生産性が低下すれば、家計・企業の支払い可能な家賃が低下し、その結果として土地・不動産が生み出す収益が低下し、不動産価格は下落してしまいます。とりわけ不動産市場の停滞を長期化させてしまうのは、この第三の影響です。

しかし、現在は「第4次産業革命」といわれるほどに、AIやIoTを中心とした新しい産業が急激に生まれています。そして、中国の生産性は、まだまだ改善の余地があると言ってもよいですし、新しい付加価値を生むだけの知識産業の集積があります。これらの状況を整理していくと、中国恒大集団が危機的な状況に陥ったとしても、日本の不動産バブル崩壊のようなことにはならないと考えています。

著者

日本大学教授・東京大学特任教授清水 千弘
清水千弘

1967年岐阜県大垣市生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科博士後期課程中退、東京大学大学院新領域創成科学研究科博士(環境学)。財団法人日本不動産研究所研究員、株式会社リクルート住宅総合研究所主任研究員、麗澤大学経済学部教授、キャノングローバル戦略研究所主席研究員を経て現職。専門は指数理論、ビッグデータ解析、不動産経済学。主な著書に『不動産市場分析』(単著)、『市場分析のための統計学入門』(単著)、『不動産市場の計量経済分析』(共著)、『不動産テック』(編著)、『Property Price Index』(共著)など。 東京大学空間情報科学研究センター不動産情報科学研究部門特任教授、麗澤大学都市不動産科学研究センターセンター長、マサチューセッツ工科大学不動産研究センター研究員、総務省統計委員会専門委員を務める。米国不動産カウンセラー協会メンバー。