100年企業レポート vol.03 北海道編

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

1.北海道の100年企業に関する分析

北海道 景色

北海道はかつて蝦夷地(えぞち)と呼ばれ、アイヌ民族独特の文化を築いてきた。
明治2(1869)年に箱館戦争が終わり、新政府は蝦夷地を北海道と改名し、開拓使を設置したのである。

この開拓使設置をきっかけに北海道の本格的な開拓が始まり、産業が発達し、企業が増えていった。
北海道の100年企業数は、1,168社であり、全国8位である。

北海道はカニ、ウニをはじめとする漁業、じゃがいもやトウモロコシといった農業が非常に盛んであり、第一次産業が全国トップである。しかし現在は第一次産業だけでなく、さまざまな産業の100年企業が存在しており、その多くは県庁所在地の札幌市に集中している。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、北海道の特性を分析した。

働き世代と働き先が多い一方、有効求人倍率は平均を下回る

明治以降の開拓・開発が急速に進んだ北海道では、札幌を中心に働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)が多くなっているが、雇用環境は厳しい状況である。
札幌への一極集中の傾向があるものの、東京と同様に貸事務所業が多く、不動産を活用した事業継続を積極的に行っていると思われる。

【図表1】北海道の指標別偏差値と順位

【図表1】北海道の指標別偏差値と順位

指標 偏差値 平均との差 順位
100年企業輩出率 40.6 -9.4 40
生産年齢人口数 58.5 8.5 8
有効求人倍率 33.6 -16.4 46
商業地平均価格 46.7 -3.3 24
事業所数 60.1 10.1 6
相続税課税割合 41.0 -9.0 38
合計スコア 280.6 -19.4 33

2.北海道の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』が構成比48.7%であった。次いで『大正以降』の41.7%、『明治前期』の9.3%の順である。北海道成立が明治2年であり、江戸時代以前の創業はほとんどない。
北海道の本格的な開拓が始まったのは明治に入ってからであり、水産業や旅館が多かった。明治後期以降、ガソリンスタンドが多いが、当初からガソリンを取り扱っていたわけではなく、インフラ整備の進展や車が必須な北海道の需要に合わせて変化をしていったと思われる。

【図表2】創業時期別構成比

【図表2】創業時期別構成比

【図表3】創業時期別TOP業種

江戸時代 明治前期 明治後期 大正以降
1位 菓子小売業
(製造小売)
清酒製造業 ガソリンスタンド 酒小売業
2位 土地賃貸業 その他の
水産食料品製造業
酒小売業 土木工事業
3位 旅館・ホテル 貸事務所業、大学
旅館・ホテル
貸事務所業 ガソリンスタンド

②創業年TOP5

北海道の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の株式会社第一滝本館は、全国で2391位となっている。

【図表4】 創業年TOP5

順位 企業名 業種 創業年
1 株式会社第一滝本館 旅館・ホテル 1858
2 株式会社千秋庵総本家 菓子小売業(製造小売) 1860
3 株式会社太刀川 土地賃貸業 1863
4 有限会社丸イ伊藤染舗 他に分類されない繊維製品製造業 1869
4 金森商船株式会社 貸事務所業 1869
4 株式会社ヤマニ吉岡水産 その他の水産食料品製造業 1869

③市町村別は『札幌市』が最多

市町村別100年企業数では札幌市が200社で最多であった。
1位の札幌市では、『貸事務所業』が11社と最も多く、次いで『造園工事業』、『その他の産業機械器具卸売業』が各5社であった。
2位の旭川市は、100年企業数94社であり、業種別に見ると『土木工事業』、『内装工事業』、『一般製材業』、『生鮮魚介卸売業』、『その他の産業機械器具卸売業』、『貸事務所業』が各3社でトップである。
3位の函館市は、100年企業数88社であり、業種別に見ると『その他の産業機械器具卸売業』、『葬儀業』が各3社でトップである。

【図表5】市町村別100年企業TOP10

【図表5】市町村別100年企業TOP10

④産業は第一次産業が全国トップ

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が577社(構成比49.4%)と最も多かった。次いで、『製造業』154社(同13.2%)、『サービス業』117社(同10.0%)の順である。
北海道は広い大地と豊富な漁場があることから、第一次産業である『農業』、『林業・狩猟業』、『漁業』の3産業は全て全国トップである。
また、『不動産業』50社の全国に占める割合が3.3%(全国7位)であり、不動産業も盛んと言える。

【図表6】産業別件数

【図表6】産業別件数

⑤業種は『貸事務所業』・『ガソリンスタンド』・『酪農業』が最多

業種別では、『貸事務所業』、『ガソリンスタンド』、『酪農業』が各31社で最多であった。
広大な土地を活かした『酪農業』は昔から盛んであったと推測できるが、『貸事務所業』、『ガソリンスタンド』については、もともと本業だったわけではなく、時代と市場環境の変化に対応して、業態変化をしてきたことがうかがえる。北海道の100年企業は時代の変化に柔軟に対応してきた企業が多いと言えるのではないか。
豊富な観光資源があり、多くの観光客が訪れるため『旅館・ホテル』も多い。

【図表7】業種別TOP10

【図表7】業種別TOP10

⑥資本金は『大学』が上位

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比53.5%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が24.0%、『5千万円以上~1億円未満』が5.4%の順である。
資本金トップは国立大学法人北海道大学(業種:大学)が1,545億円。以下、国立大学法人室蘭工業大学(業種:大学)が133億円、DCMホーマック株式会社(業種:ホームセンター)が109億円の順であった。
上位10社のうち3社が大学であり、2社が漁業協同組合であった。

【図表8】資本金別構成比

【図表8】資本金別構成比

※2018年10月時点データを使用

⑦従業員数は『10人未満』が6割

従業員別では、『4人以下』が構成比39.4%と最も多かった。次いで、『10~49人』が28.4%、『5~9人』が20.6%の順である。10人未満で6割を占める。
北海道の100年企業の多くは小規模企業であるが、国立大学法人北海道大学、社会福祉法人函館厚生院の2社が従業員2,000人を超える。

【図表9】従業員規模別構成比

【図表9】従業員規模別構成比

※2018年10月時点データを使用

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比44.1%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が38.6%、『10億円以上~100億円未満』が13.7%の順である。
売上高上位10社のうち、卸売・小売業が8社であった。

【図表10】売上高規模別構成比

【図表10】売上高規模別構成比

※売上高は直前3期分の平均値データを仕様(2018年10月時点データ)

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は19社

北海道で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は65社であり、構成比では全国15位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は19社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせで多いのは、『建築工事業』・『その他の水産食料品製造業』・『生菓子製造業』・『木材・竹材卸売業』・『婦人服小売業』(各2社)であった。

【図表11】 本業以外で『貸事務所業』を行っている主な企業

No 企業名 業種
1 及能株式会社 水産缶詰・瓶詰製造業、貸事務所業、畳卸売業
2 株式会社渡辺組 土木工事業、建築工事業、貸事務所業
3 株式会社大万杉岡商店 男子服小売業、婦人服小売業、貸事務所業
4 日之出商事株式会社 菓子・パン類卸売業、貸事務所業、駐車場業
5 池内ベニヤ株式会社 合板製造業、木材・竹材卸売業、貸事務所業
6 辻野建設工業株式会社 建築工事業、一般管工事業、貸事務所業
7 株式会社丸升増田本店 古紙棚卸業、貸事務所業
8 株式会社ハガ木材 木材・竹材棚卸業、その他の建築材料棚卸業、貸事務所業

※上記は一部抜粋

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。
※創業年について
創業年が「○○年間」などのように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。
※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

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※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

 
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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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