100年企業レポート vol.05 埼玉編

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

1.埼玉県の100年企業に関する分析

埼玉県 川越市

埼玉県の川越市は、江戸時代に城下町として栄え、商人・職人町、寺町、武家地など、城郭を中心にした町割りの面影は今も色濃く残り、「小江戸」と呼ばれるようになった。城下町の整備により商業も発達し、川越と江戸で物資が輸送されるようになった。川越は「江戸の台所」とも呼ばれる商人の町として繁栄したのである。

その他にも飯能地域では、西川材など良質な木材を産出し、大消費地である江戸へ供給していた。
そのため、現在も埼玉県の森林面積の約6割を占める秩父地域の豊富な森林資源を背景に、製材業の産地が形成されており、製材業は埼玉県の中心産業となっている。

近代になると、川口の鋳物産業や関連産業としての金属加工業など、埼玉県では様々な産業が発達した。
埼玉県の100年企業数は、953社であり、全国10位である。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて埼玉県の特性を分析した。

都市圏のため働き世代と働き先は多いものの、雇用環境は厳しい状況にある

埼玉県は東京へのアクセスが良いことから、『商業地平均価格』は高いエリアである。そのアクセスの強みを生かして産業集積を進めており、働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)が多くなっている。ちなみに『100年企業輩出率』は企業数が多い都市圏ではどうしても低くなってしまう傾向がある。
また、埼玉県は『相続税課税割合』が全国4位の高さとなっている。東京に隣接している立地の良さから、ベットタウンとして需要が高まり、地価が上昇したためと考えられる。

【図表1】埼玉県の指標別偏差値と順位

【図表1】埼玉県の指標別偏差値と順位

指標 偏差値 平均との差 順位
100年企業輩出率 37.1 -12.9 43
生産年齢人口数 66.6 16.6 5
有効求人倍率 39.6 -10.4 39
商業地平均価格 53.6 3.6 6
事業所数 61.5 11.5 5
相続税課税割合 62.2 12.2 4
合計スコア 320.7 20.7 7

2.埼玉県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』が構成比41.6%であった。次いで『大正以降』の29.4%、『明治前期』の19.5%、『江戸時代』の9.5%の順である。
江戸時代は川越が『小江戸』と呼ばれ、商工業が栄えていた。明治になると、産業の発展を背景に建築工事が盛んであった。東京と同様に貸事務所業も多く、事業継続を支えてきたことがうかがえる。

【図表2】創業時期別構成比

【図表2】創業時期別構成比

【図表3】創業時期別TOP業種
江戸時代 明治前期 明治後期 大正以降
1位 清酒製造業 建築工事業 建築工事業 木造建築工事業
2位 菓子小売業
(製造小売)
貸事務所業 土木工事業 建築工事業
3位 建築工事業
日本料理店
木造建築工事業 呉服・服地小売業 土木工事業

②創業年TOP5

埼玉県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の有限会社戸谷八商店は、全国で55位となっている。

【図表4】 創業年TOP5
順位 企業名 業種 創業年
1 有限会社戸谷八商店 陶磁器・ガラス器小売業 1560
2 株式会社永嶋庄兵衛商店 米麦卸売店 1615
3 株式会社糀家 日本料理店 1620
4 堀切工務店 建築工事業 1628
5 有限会社野口組 とび工事業 1645

③市町村別は『さいたま市』が最多

市町村別100年企業数ではさいたま市が109社で最多であった。
1位のさいたま市では、『貸事務所業』が6社と最も多く、次いで『酒類卸売業』が27社、『呉服・服地小売業』、『米穀類小売業』、『料亭』が各3社であった。
2位の川越市は、100年企業数62社であり、業種別に見ると『土木工事業』、『木造建築工事業』、『日本料理店』が各3社でトップである。
同じく2位である川口市では、『銑鉄鋳物製造業』が5社と最も多く、次いで『造園工事業』、『可鍛鋳鉄製造業』、『貸事務所』が各3社であった。

【図表5】市町村別100年企業TOP10

【図表5】市町村別100年企業TOP10

④産業は『建設業』が全国4位

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が445社(構成比46.7%)と最も多かった。次いで、『製造業』227社(同29.6%)、『建設業』172社(同18.0%)の順である。
『建設業』は3番目であったが、全国に占める割合は4.8%(全国4位)であり、埼玉県は全国的にも『建設業』が盛んであった事が分かる。
尚、『農業』8社の全国に占める割合が2.8%(全国5位)であることは意外であった。

【図表6】産業別件数

【図表6】産業別件数

⑤業種は『木造建築工事業』が最多

業種別では、『木造建築工事業』が35社で最多であった。合わせて3位に『建築工事業』(24社)、10位に『土木工事業』(17社)と、建設業がやはり多く、産業の発展により工事業が増えたことがうかがえる。
2位は『貸事務所業』が33社であり、不動産を活用した事業継続を行っている首都圏の傾向が見られる。
酒造、菓子、呉服といった古くから続く業種も上位であり、小売業や製造業も多い。
ちなみに埼玉県では煎餅や人形が有名であるが、『米菓製造』は6社で38位、『人形製造』は5社で42位であった。

【図表7】業種別TOP10

【図表7】業種別TOP10

⑥資本金は『小売業』が上位

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比53.7%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が27.1%、『5千万円以上~1億円未満』が8.1%の順である。
資本金トップは埼玉県信用農業(業種:信用農業協同組合連合会)が1,394億円。以下、株式会社島忠(業種:ホームセンター)が165億円、株式会社ヤオコー(業種:各種食料品小売業)が41億円の順であった。上位5社を見るとホームセンターやスーパーなどの小売業が3社であった。

【図表8】資本金別構成比

【図表8】資本金別構成比

※2018年10月時点データを使用

⑦従業員数は『10人未満』が6割

従業員別では、『4人以下』が構成比42.9%と最も多かった。次いで、『10~49人』が27.3%、『5~9人』が18.0%の順である。10人未満で6割を占める。
埼玉県の100年企業の多くは小規模企業であるが、学校法人埼玉医科大学、学校法人獨協学園、株式会社ヤオコーの3社が従業員2,000人を超える。

【図表9】従業員規模別構成比

【図表9】従業員規模別構成比

※2018年10月時点データを使用

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比43.4%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が39.9%、『10億円以上~100億円未満』が14.1%の順である。
売上高上位10社のうち、卸売・小売業が4社、金融・保険業が2社であった。

【図表10】売上高規模別構成比

【図表10】売上高規模別構成比

※売上高は直前3期分の平均値データを仕様(2018年10月時点データ)

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は29社

埼玉県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は78社であり、構成比では全国7位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は29社存在しており、上場企業は2社であった。
貸事務所業との組み合わせは、『建築工事業』(3社)、『ガソリンスタンド』・『その他の建築材料卸売業』・『呉服・服地小売業』・『木材・竹材卸売業』(各2社)であった。

【図表11】本業以外で『貸事務所業』を行っている主な企業

No 企業名 業種
1 株式会社小野六 家具小売業、貸事務所業
2 川木建設株式会社 建築工事業、貸事務所業、不動産管理業
3 株式会社ヤオコー 各種食料品小売業、貸事務所業
4 初雁興業株式会社 一般土木建築工事業、土地売買業、貸事務所業
5 福岡工業株式会社 工業用ゴム製品製造業、貸事務所業、鏡縁・額縁製造業
6 株式会社桝徳 木材・竹材卸売業、その他の建築材料卸売業、貸事務所業
7 マルキユー株式会社 配合飼料製造業、貸事務所業、スポーツ用品卸売業
8 関中建設株式会社 大工工事業、貸事務所業、建築工事業
9 株式会社荻野工務店 型枠大工工事業、貸事務所業
10 株式会社長堀鉄工所 銑鉄鋳物製造業、非鉄金属鋳物製造業、貸事務所業

※上記は一部抜粋

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。
※創業年について
創業年が「○○年間」などのように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。
※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

金比羅橋

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

 
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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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