100年企業レポート vol.27 愛媛編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

愛媛県の100年企業に関する分析

愛媛県の街並み

温州みかんを含む柑橘類の収穫量・産出額ともに日本一を誇り、果物の県として知られる愛媛県。年間の平均気温が15度以上と温暖な気候が柑橘類の栽培に適していたことに加え、瀬戸内の海風をたっぷりと浴びた、ミネラル成分が多く含まれている土壌であることから、栄養価の高い果物に育つといわれている。

愛媛県の100年企業数は、430社であり、全国29位である。

愛媛県は、果物だけでなく、歴史ある観光名所が点在していることも魅力のひとつ。文豪・夏目漱石の「坊っちゃん」の舞台としても知られる松山市内には、小説内で描かれている「道後温泉本館」や「坊っちゃん列車」があり、小説の舞台を楽しめる文学スポットとして毎年多くの観光客が訪れている。そのほか特産品のひとつでもある今治タオルの繊維業や製紙業など、今でも地場産業が代々受け継がれており、また時代に合わせて進化している。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、愛媛県の特性を分析した。

四国最大の工業県であるものの
県内の多くのエリアで地価が下落傾向

道後温泉や松山城など観光名所の多い愛媛県は、地域によってさまざまな地場産業や特産品を有している。平成30年の工業統計によると、愛媛県の製造品出荷額等は、四国全体の44.6%のシェアを誇り、四国最大の工業県として様々な産業が発展している。そのため働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)は全国平均を少し下回っているものの、四国ではトップである。また、その他の指標を見ると『商業地平均価格』も四国トップである。しかし地価が高いエリアは松山市周辺に偏っており、県内の多くのエリアでは地価は下落傾向である。

2.愛媛県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比40.4%であった。次いで『大正以降』の28.1%、『明治前期』の23.2%、『江戸時代』の7.6%の順である。
江戸時代、松山の城下町であった古町三十町と呼ばれる地区は商業の中心地であり、酒造や和菓子、呉服など多くの商業が繁栄した。明治時代になり近代化が進むにつれ、鉄道の開通や路線の拡張のため土木工事業などの建設業も発展した。こうして松山の商業地域はさらに拡大し、居住者も増加していったのである。

②創業年TOP5

愛媛県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の名門サカイ株式会社は、全国で102位となっている。

③市町村別は『松山市』が最多

市町村別100年企業数では松山市が109社で最多であった。
1位の松山市では、『貸事務所業』が7社と最も多く、次いで『清酒製造業』が4社である。
2位の今治市は、100年企業数92社であり、業種別に見ると『土木工事業』が4社と最も多く、次いで『船舶製造・修理業』、『呉服・服地小売業』、『他に分類されないその他の小売業』の3業種がそれぞれ4社である。
3位の四国中央市は、100年企業数48社であり、業種別に見ると『機械すき和紙製造業』が5社と最も多く、次いで『土木工事業』や『生菓子製造業』を含む8業種がそれぞれ2社である。

④産業は『製造業』が四国トップ

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が181社(構成比42.1%)と最も多かった。次いで、『製造業』123社(同28.6%)、『建設業』39社(同9.1%)の順である。
愛媛県は地場産業から発展を遂げた製造業が盛んであり、製造業の数は四国4県でトップである。かつての今治綿業は有名な「今治タオル」に、伊予の和紙製造は四国中央市の製紙産業につながっており、愛媛の地場産業は時代に合わせて進化している。
また、愛媛県は農業の数も四国トップである。生産量日本一の伊予間は、江戸時代終わりに宇和島市で苗木を植えたのが始まりとされている。

⑤業種は『清酒製造』が最多

業種別では、『清酒製造』が15社で最多であった。「全国新酒鑑評会」で、多くの蔵元が金賞を受賞するなど、実は愛媛県は酒どころとして全国トップレベルの技術を誇っている。そんな愛媛の日本酒造りの起源は、戦国時代後期にまで遡る。全国的にも有名な越智郡杜氏、伊方杜氏を輩出し、酒造業は発展していった。その伝統と技術は脈々と受け継がれている。
その他上位には、愛媛の古くから続く地場産業が入っている。愛媛県は、江戸時代より和紙の産地として有名であり、『機械すき和紙製造』が同数3位に入っている。そして現在では、四国中央市は紙製品出荷額が全国トップを誇る。また、愛媛の特産品である蒲鉾も元和元年(1615)、宇和島藩の初代藩主・伊達秀宗が仙台から職人を連れてきて蒲鉾を作らせたのが始まりとされている。そんな歴史のある『水産練製品製造』も上位に入っている。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比49.1%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が29.0%、『5千万円以上~1億円未満』が5.1%の順である。
資本金トップは今治造船株式会社(業種:船舶製造・修理業)が300億円。以下、株式会社愛媛銀行(業種:普通銀行)が213億円、株式会社伊予銀行(業種:普通銀行)が209億円の順であった。
上位10社のうち製造業が3社、建設業と運輸業がそれぞれ2社である。

⑦従業員数は『10人未満』が6割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比40.2%と最も多かった。次いで、『10~49人』が26.1%、『5~9人』が22.1%の順である。10人未満で6割を超える。
愛媛県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社伊予銀行は従業員2,000人を超え、今治造船株式会社、株式会社愛媛銀行の2社は従業員1,000人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比50.4%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が33.9%、『10億円以上~100億円未満』が12.5%の順である。
売上高上位10社のうち製造業が4社、卸売・小売業が3社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は11社

愛媛県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は15社であり、構成比では全国35位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は11社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせで多いのは、製造業が6社と最も多い。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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