100年企業レポート vol.30 千葉編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

千葉県の100年企業に関する分析

千葉県の街並み

房総半島と関東平野の南部にまたがる千葉県。都心へのアクセスがよく、ファミリー層に人気の東京都のベッドタウンでもある。臨海部には京浜工業地帯が広がり、石油化学コンビナートや製鉄所などが集積している一方で、温暖な気候と雄大な自然に恵まれ、全国でも有数の農業王国として豊富な農作物を生産している。なかでもほうれん草や日本なし、落花生などは収穫量日本一を誇る。

千葉県の100年企業数は、782社であり、全国14位である。

千葉県は観光資源もバラエティ豊かだ。浦安の世界的に有名なテーマパークや幕張のイベントホールなどの大型施設がある一方で、太平洋側に点在するサーフポイントや潮干狩りなど自然を楽しめるスポットも多い。また、成田国際空港から近いことから、海外からの観光客も多く訪れる真言宗智山派の大本山「成田山新勝寺」や、「小江戸」と呼ばれる水郷の街「佐原」など歴史を感じるスポットもあり、年間を通して多くの観光客が訪れ賑わいを見せている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、千葉県の特性を分析した。

働き先である事業所数が多い反面、
有効求人倍率が全国平均を下回る

千葉県は首都圏であり、生産年齢人口が全国で6番目に多く、働き先である事業所数も多い。しかし有効求人倍率は全国平均よりも低くなっている。これは東京を除く首都圏エリアの傾向であり、東京への交通の便がよく、東京都内で働く人が近隣県に住むケースが多いため、求人数とのバランスが悪化し、有効求人倍率が下位となるのである。
しかし、そのようなアクセスのよさは地価上昇の要因にもなっており、『商業地平均価格』は上昇している。『相続税課税割合』は、今後の地価動向によってはさらに高くなる可能性もあるので、適切な相続税対策を講じる必要があるだろう。

2.千葉県の100年企業データ

① 創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比44.5%であった。次いで『大正以降』の26.0%、『明治前期』の18.8%、『江戸時代』の10.7%の順である。
江戸時代は城下町、門前町、舟運で繁栄したため、酒や食品、衣服など生活用品の商業が盛んであった。明治になり、鉄道が開通したのを皮切りに、鉄道網や道路のインフラ整備が進み、建築工事業や土木工事業が増えていった。貸事務所業は、本業とは別に行っていた事業が時代の経過とともに本業になっていったケースが多い。

② 創業年TOP5

千葉県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の有限会社郡司勘兵衛薬局は、全国で153位となっている。

③ 市町村別は『銚子市』が最多

市町村別100年企業数では銚子市が57社で最多であった。
1位の銚子市では、『その他の水産食料品製造業』が5社と最も多く、次いで『生鮮魚介卸売業』が4社、『呉服・服地小売業』が3社である。
2位の千葉市は、100年企業数53社であり、業種別に見ると『木材・竹材卸売業』が3社と最も多く、次いで『造園工事業』、『酒類卸売業』、『金物卸売業』、『各種食料品小売業』、『米穀類小売業』、『貸事務所業』、『駐車場業』の7業種がそれぞれ2社である。
3位の香取市は、100年企業数42社であり、業種別に見ると『建築工事業』が6社と最も多く、次いで『木造建築工事業』、『清酒製造業』、『肥料・飼料卸売業』、『肥料・飼料小売業』の4業種がそれぞれ3社である。

④ 産業は『農業』が全国4位

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が414社(構成比52.9%)と最も多かった。次いで、『製造業』157社(同20.1%)、『建設業』87社(同11.1%)の順である。
温暖な気候と平坦な土地という自然環境に恵まれているため『農業』が全国4位である。特産品である落花生は、明治9年に山武郡南郷町(現山武市)で栽培されたのが始まりとされている。今では国内産の約8割が千葉県で生産されている。
また、石油・石炭・鉄鋼など素材産業の企業がコンビナートを形成している京葉工業地域では第2次産業が盛んであり、空港のある成田周辺地域では、空港関連産業・運輸業などの第3次産業も発達していることから、千葉県はバランスよく産業が発達していることがうかがえる。

⑤ 業種は『清酒製造』が最多

業種別では、『清酒製造』が25社で最多であった。千葉県の酒造りは歴史が古く、開始されたのは寛永年間とされている。その後幕府の酒税制度によって、房総(安房・上総・下総)で酒造業が増えていった。
2位は『呉服・服地小売』が23社であった。江戸時代に利根川の舟運により繁栄した佐原、物資や人を輸送する交通の要衝として江戸と房総を繋いでいた木更津、成田山新勝寺の門前町として栄えた成田市などで商業が盛んであったことから、衣服や食品・酒類といった生活用品の卸売りが多い。

⑥ 資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比55.9%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が27.4%、『5千万円以上~1億円未満』が4.9%の順である。
資本金トップはイオン株式会社(業種:純粋持株会社)が2,200億円。以下、京成電鉄株式会社(業種:普通鉄道業)が368億円、銚子信用金庫(業種:信用金庫・同連合会)が100億円の順であった。
上位10社のうち製造業が4社である。

⑦ 従業員数は『10人未満』が約6割

従業員別では、『4人以下』が構成比39.4%と最も多かった。次いで、『10~49人』が25.8%、『5~9人』が24.3%の順である。10人未満で約6割を占めた。
千葉県の100年企業の多くは小規模企業であるが、京成電鉄株式会社、株式会社横河ブリッジの2社は従業員1,000人を超える。

⑧ 売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比43.5%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が41.6%、『10億円以上~100億円未満』が12.6%の順である。
売上高上位10社のうち卸売・小売業が4社、製造業が3社である。

⑨ 本業以外に貸事務所業を行っている企業は13社

千葉県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は41社であり、構成比では全国23位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は13社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせで多いのは、卸売・小売業が5社と最も多く、次いで製造業が3社の順である。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

経営戦略から不動産マーケット展望まで 各分野の第一人者を招いたセミナーを開催中!

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