100年企業レポート vol.41 佐賀編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

佐賀県の100年企業に関する分析

佐賀の街並み

九州の北西部に位置し、大阪までは約500㎞の距離があるのに対し、朝鮮半島までは約200㎞しか離れていない佐賀県。そのため、大陸文化の窓口として歴史的、文化的に重要な役割を果たしてきた。佐賀を代表する陶磁器である「唐津焼」や「有田焼(伊万里焼)」、弥生時代の環壕集落である「吉野ヶ里遺跡」など、大陸からの影響を大きく受けている。

佐賀県の100年企業数は、366社であり、全国38位である。

佐賀の穏やかな空と広く開けた土地がバルーン(熱気球)の飛行条件に適し、毎年秋に嘉瀬川河川敷でアジア最大規模の熱気球大会「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」が開催される。約100機のバルーンが参加し、色とりどりのバルーンがのどかな田園風景の中を飛ぶ景色はまるで絵本の1ページのよう。大会期間中の観客動員数は80万人を超え、佐賀県の大きな観光資源となっている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、佐賀県の特性を分析した。

『100年企業輩出率』が高い
また、自然災害が少なく企業進出にも注目が高まっている

風光明媚な玄界灘と広大な有明海に面した自然豊かな佐賀県は、古くから大陸文化の窓口として重要な役割を果たしてきた。そのため有田焼や伝統菓子、焼酎などの歴史ある産業が多く、『100年企業輩出率』が高い。しかし人口減少が進んでおり、その他の5指標はすべて下位である。そのため佐賀県では、企業立地や新産業の創出などを進めており、若者や女性等の多様な人材が継続的に就労できる環境整備に取り組んでいる。また、自然災害が少ないため、BCP対策としての企業進出にも注目が高まっている。

2.佐賀県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比43.7%であった。次いで『大正以降』の23.7%、『明治前期』の17.7%、『江戸時代』の14.6%の順である。
江戸時代、朝鮮人陶工の李参平が有田町の泉山で磁器の原料となる陶石を発見し、日本で初めて磁器が焼かれた。以来、有田では焼き物が盛んになり、その技術は脈々と受け継がれ、今や「有田焼」は佐賀を代表する伝統工芸品となった。また、「シュガーロード」と呼ばれる長崎街道沿いには、「丸ぼうろ」や「小城羊羹」など昔ながらの銘菓も多い。

②創業年TOP5

佐賀県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の中島製瓦有限会社は、全国で134位となっている。

③市町村別は『佐賀市』が最多

市町村別100年企業数では佐賀市が128社で最多であった。
1位の佐賀市では、『建築工事業』、『生菓子製造業』、『宗教用具小売業』、『燃料小売業』、『旅館・ホテル』の5業種がそれぞれ3社と最も多い。
2位の唐津市は、100年企業数64社であり、業種別に見ると『旅館・ホテル』が5社と最も多く、次いで『土木工事業』が4社である。
3位の西松浦郡有田町は、100年企業数27社であり、業種別に見ると『食卓用・ちゅう房用陶磁器製造業』が17社と最も多く、次いで『陶磁器・ガラス器卸売業』が5社である。

④産業は『第2次産業』が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が141社(構成比38.5%)と最も多かった。次いで、『製造業』124社(同33.9%)、『建設業』41社(同11.2%)の順である。
佐賀県は第2次産業が盛んである。幕末に日本の近代化を支えた高い技術力が現在も受け継がれており、建設業と製造業の数は、九州地方では福岡県に次いで2位である。
そして、九州の高速道路や鉄道がクロスする中枢に位置しており、福岡県、長崎県、熊本県は1時間圏内、九州全域と中国地方までは3時間圏内というアクセスのよさから、造船、IC関連産業等のさまざまな産業が集積している。

⑤業種は『一般土木建築工事業』と『食卓用陶磁器製造』が最多

業種別では『一般土木建築工事業』と『食卓用陶磁器製造』がそれぞれ14社で最多であった。幕末から明治時代にかけて、佐賀藩などが高い技術力で近代化を推し進めた。特に唐津での石炭採掘は、日本初の反射炉や実用蒸気船の建造、鉄道や港湾整備、さらには電気などのインフラ整備などにつながった。それにともない『一般土木建築工事業』などの建設業も発展した。
また、佐賀県は古くから焼き物が盛んで、伊万里・有田焼、唐津焼などが有名であり、今でも伝統産業として受け継がれている。そのため『食卓用陶磁器製造』も同数1位である。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比44.3%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が29.4%、『5千万円以上~1億円未満』が4.1%の順である。
資本金トップは株式会社佐賀銀行(業種:普通銀行)が160億円。以下、地方独立行政法人佐賀県医療センター好生館(業種:一般病院)が23億円、株式会社ミゾタ(業種:機械器具設置工事業)が4.9億円の順であった。
上位10社のうち製造業が5社である。

⑦従業員数は『10人未満』が5割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比33.9%と最も多かった。次いで、『10~49人』が27.8%、『5~9人』が24.7%の順である。10人未満で5割を超える。
佐賀県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社佐賀銀行と地方独立行政法人佐賀県医療センター好生館の2社は従業員1,000人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比54.1%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が32.9%、『10億円以上~100億円未満』が10.4%の順である。
売上高上位10社のうち建設業と製造業がそれぞれ3社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は2社

佐賀県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は6社であり、構成比では全国46位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は2社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは、上記の他はサービス業が1社であり、本業以外で貸事務所業を行っている企業は少ない。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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