未上場株、売却時の税金。贈与税発生も!?…気を付けるべきポイントは?~中小企業経営者のための事業承継の豆知識[第9回]

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近年は、後継者が見つからないことを理由に、会社を第三者に売却するという選択肢を考える経営者が増えています。株式会社においては、「会社を売却する」ということは厳密にいうと「会社の株式を売却する」ということです。

第三者だけでなく、親族や会社役員の間で売却することも想定されますが、いずれにしても、株式を売却した場合には、多額の税負担が発生することがあります。

今回は株式を売却した場合の税金の取り扱いについて解説していきます。

※記事は2020年8月31日時点での情報により構成しています。

株式の売却には一律20%の税金を課税

株式を売却したことで利益がでた場合には、その利益に対して15.315%の所得税と5%の住民税、合計20.315%の税金がかかります。未上場会社の株式を売却した場合には、自分で確定申告をしたうえで、納税をしなければいけません。

ここでいう、利益の考え方について解説します。

株式を売却したことによる利益とは、売却した代金から、その株式を取得するためにかかった金額を引いたものになります。

たとえば、500万円で取得した株式が、1億円で売却できたとします。1億円から500万円を引いた9,500万円が、株式を売却したことによる利益で、この利益に20%の税金が課税されることになります。

株式を取得するためにかかった費用は、株式を取得した経緯によって次の通りに考えます。

●会社に出資して株式を取得した場合は「出資した金額」
●他の株主から株式を購入して取得した場合は「購入した金額」

これらはシンプルですが、間違いが起こりやすいのは相続や贈与で取得した時です。相続や贈与で取得した場合には、もともとの所有者の取得した金額が引き継がれます。相続や贈与の時の時価ではありません。

このような取り扱いだと、当然、「父がいくらでこの株式を取得したなど、わからない」という人が現われます。この場合は、会社の経理部の人たちと協力して、過去の出資者の履歴や、株主の変更の履歴などを探して金額を明確にするしかありません。

もし取得金額がわからないままだったら、売却した金額の5%で購入したものとみなされます。たとえば、1億円で売却した場合には、1億円の5%である500万円で取得したものとみなされて、9,500万円に所得税が課税されます。このように取得金額が明確にできないと、非常に不利な取り扱いを受けるのです。

時価とかけ離れた金額で売却すると「贈与税」が課税される

第三者に株式を売却するM&Aのような場合には、売り主はできるだけ高く売りたいですし、買い主はできるだけ安く買いたいと考えます。相反する立場があるので、慎重に協議を重ねて売買金額が決まります。

一方で、これがもし親子間であれば「我が子だし、安く売ってあげてもいいだろう」という気持ちが入る可能性は非常に高いです。

しかしこのようなシチュエーションで、株式の時価を無視して好き勝手に売却金額を決めてしまうと、「株式の時価」と「実際の売却代金」との差額に対して、贈与税が課税されます。

たとえば、時価1億円の株式を子どもに対して1,000万円で売却したとします。この場合には、差額の9,000万円に対して贈与税が課税されてしまうのです。

この場合の株式の時価については非常に多くの考え方がありますが、個人間で株式の売買をする際にベースとなる株式の時価は、相続税の評価額をベースにして問題ありません。

いずれにしても、親族や従業員だからといって自由に売却代金を決めると、のちのち大変なことになってしまうと知っておきましょう。

株式の「売却益」と株式の「売却損」は相殺できる

株式を売却して利益がでた場合には、そこに20%の税金がかかります。もし、利益がでた同じ年に、株式を売却して損失がでた場合には、その利益と損失は、相殺することが可能です。

たとえば、A社の株式を売却して1億円の利益がでたとしら、本来、1億円の20%である2,000万円を税金として支払わなければいけません。ただ、同じ年にB社の株式を売却して4,000万円の損失が発生したとします。すると、1億円の利益と4,000万円の損失を相殺することができるので、利益は6,000万円となります。6,000万円の20%は1,200万円。つまり800万円ほど税負担が軽くなるというわけです。

このように2社の未上場株式を持ち、1社は売却益がでて、1社は売却損がでるような場合には、同じ年に売却をすると相殺ができるのです。これで手取額が何千万円と変わることもあるので、売却時期については慎重に考えないといけません。

ちなみに未上場会社の株式の売却益と、個人的に証券会社などで運用している上場会社の株式の売却損は相殺することはできません。ひと昔前まではできたことですが、平成28年の税制改正によってできなくなりました。

株式の売却についての取り扱いをみてきましたが、順を追ってみていけば、そこまで難しいものではないでしょう。

ポイントは、売却代金から株式を取得した金額を引いた利益に20%の税金がかかることと、親族や従業員だからと好き勝手な売却金額で取引すると、時価との差額に贈与税が課税されるということです。

著者

橘 慶太

円満相続税理士法人 代表 税理士

大学受験の失敗から一念発起し税理士を志す。大学在学中に税理士試験に4科目合格(法人税法の公開模試では全国1位)し、大学卒業前から国内最大手の税理士法人に正社員として入社する。 勤務税理士時代は相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手掛けた相続税申告は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算400件以上。また、銀行や証券会社を中心に、年間130回以上の相続税セミナーの講師を務め、27歳という若さで管理職に抜擢される。 2017年1月に独立開業し、現在6名の相続専門税理士が在籍する円満相続税理士法人の代表を務める。週刊ポストや日本経済新聞、幻冬舎、女性自身など、様々メディアから取材を受けている。また、自身で運営しているYouTubeのチャンネル登録者は4万人を超えており、相続分野では日本一のチャンネルに成長している。
円満相続税理士法人:https://osd-souzoku.jp/

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