ボルテックス100年企業戦略研究所 所長の堀内勉が、『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』(日経BP)を上梓しました。
大変僭越ながら、今回は私自身の新著について寄稿させていただきます。
未だ収まらない新型コロナ禍の中で、現在、ほとんど軽井沢の自宅にこもってオンライン会議で仕事をこなしています。実は一昨年から、日経BP社から新著の執筆を依頼されていたのですが、東京と軽井沢を往復しながら様々な仕事に従事して多忙を極めていたため、とても執筆の時間が取れそうもないと困っていました。それが、コロナ禍のせいで却ってその時間が取れるようになり、10カ月をかけて『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』を書き上げることができました。頁数で500頁、字数で30万字以上という大部になりましたが、正に人類の歴史に残る名著を網羅的に解説できたと自負しております。
まず本書の成り立ちをご説明しますと、私の肩書のひとつとして「書評家」というものがあります。HONZという書評サイトや、東洋経済、TKCの機関誌などで書評を書いています。ジャンルはノンフィクション全般ですが、中でも資本主義や経済関係、哲学や思想関係、宇宙論や脳科学関係が多いです。
これを長年続けていましたら、一年程前に日経BPから、書評本を出しませんかというお話をいただきました。最初は「人類の歴史に残る100冊」というイメージでしたが、実際に選書をしてみると、人類の歴史に残る本が100冊で済む訳もなく、ざっと見ても1000冊位は必要になりそうでした。そこで、フィクションを割愛して、私の得意なノンフィクションに的を絞りました。神話や宗教については、フィクションともノンフィクションとも判定できないものが多いため、これはノンフィクションの方に入れました。それで半分の500冊になり、そこから10名程の大学の先生達と議論を重ね、やっと300冊に絞ることができました。しかし、前書きや全体の解説などに150頁、一冊2頁として300冊の解説に600頁を使うと、750頁の大部になってしまいます。そこでやむなく、300冊のリストは残したまま、厳選した200冊の書評を書くことにしました。更に、50冊については書評を1頁に絞り、残りの150冊について2頁の書評を書いて合計で350頁、それに前書きや解説などの150頁を加えて500頁という収まりになりました。
ジャンルは、①資本主義、経済、経営、②宗教、哲学、思想、③国家、政治、社会、④歴史、文明、人類、⑤自然、科学、⑥人生、教育、芸術、⑦日本論、の七つです。本書は特に、ビジネスリーダーの方々に、自分の血肉となるような読書を心掛けていただきたいという思いで書きましたので、最も身近な資本主義や経済や経営の書評から始めました。そして、一冊目はアダム・スミスの『国富論』で、二冊目が『道徳感情論』です。
アダム・スミスと言えば、『国富論』の「(神の)見えざる手」が有名ですが、実はそれよりずっと前に『道徳感情論』を書いていて、人間社会に秩序ができる根拠というのは何なのかを、深く掘り下げた議論をしています。そして彼がたどり着いたのが、人間は他者への「共感」に基づいて行動しているという経験的な事実でした。こうした「共感」があってこそ、自由市場が血で血を洗う無法地帯にはならないで済むのだと言っているのです。
こうした、人類の歴史に残る本の書評を、10カ月かけて一冊ずつ丁寧に書き上げました。本書は、ただの書評の寄せ集めではなく、上述したように、なぜその200冊を選んだのかや、それらが全体としてどうつながっているのかなど、解説の部分に100頁程費やしている点に大きな特色と、類書との差別化があります。
また、本の帯の推薦文についても、経営共創基盤の冨山和彦さん、独立研究者でベストセラー作家の山口周さん、エンジェル投資家の孫泰蔵さんにお願いし、それぞれ素晴らしい推薦文をいただいています。
もし機会がありましたら、是非、お手に取っていただければ幸いです。
[おすすめ記事]
・優れたリーダーに求められる「5つの要素」とは?
・リーダー必見! 困り者ほどよく育つ?最強の人材の育て方3つ
・新時代のリーダーは奉仕して導く!? 「サーバントリーダーシップ」〜中小企業経営者のための注目の経営トピックス[第14回]