都市と五輪-第8回 東京五輪2020後の経済状況②

都市政策の第一人者であり、明治大学名誉教授の市川 宏雄氏が執筆したコラムを定期的に掲載していきます。日本国内における「東京」の位置づけと役割、世界の主要都市との比較など、さまざまな角度から東京の魅力を発信していきます。
「都市と五輪」をコラム全体のメインテーマとしてとらえ、各回にてサブテーマを設定しています。全10回にわたりお届けします。

東京と主要都市の空港容量
さて東京に話を戻します。東京の弱点は何かと言いますと、都市ランキングでも説明したように、国際交通ネットワークが弱いことにあります。

資料の下の方を見てもらうと、ニューヨークには空港が3つあって離着陸数は118万回。これは国際線・国内線両方での数です。それからロンドンは5つ空港があって離着陸数は110万回。現在の東京は成田と羽田を足して75万回です。このままではいけないということで、現在9万回の国際線をオリンピックまでに4万回増やして13万回にして、その利用者を何とか運び切ることを決めています。それだけでは上位の国に追い付くのは難しいわけですが、取り敢えずその段階まで来ています。

その後どうするかですが、これには話が2つあって、1つは「成田空港の第3滑走路」、これは工事が始まるということで地元と協議を始めていて、すでに地元の反対も始まっていますが、成田空港にもう1本滑走路を増やすということを考えています。もうすでに造り始めていますから、これはおそらく数年後には完成するだろうと思われます。

そして2つ目は、最大の目玉である「羽田空港の第5滑走路」、これを造らないと将来的に回らなくなるという話です。羽田の第5滑走路というのは、今の第4滑走路の沖合に造れば良いわけですが、あと船の航路の問題が残っているものの、これら諸問題が解決すれば可能性はあるかと思います。ただ問題はそれだけではなくて、まずオリンピックが2020年に開催されるにあたり、2019年から東京都心に飛行機が飛びます。

なぜかと言うと、あと4万回増やそうとすると現在の航空領域だけでは足りなくなるので、都心方面から羽田空港に入ってくる飛行機の航路が新設されます。さらにこの先、第5滑走路を造ったらもっと航空領域が必要になるわけですが、当面ポイントになるのは都心上空を飛行機が飛ぶという事実でしょう。
新たな飛行経路案と説明会の開催場所
どこを飛ぶのかというと、これについては国交省が既に説明会を行っています。渋谷上空を通過し、大井町のすぐ上を通って飛行機が入ってくるわけです。今まで東京上空というのは、飛行機を飛ばさない聖地でした。これも東京上空を飛ばすという方向で規制緩和すれば、飛行機はあと4万回増えるわけです。

これは今回のオリンピックのため、やらなければならないのでやります。これがまさにオリンピック効果で、オリンピックがなかったら反対があるから我慢してやらないでしょうが、今回はやらなければいけないということでやります。もちろん大井町周辺などでは大騒ぎになっていて、すぐ上空を飛ぶわけですから猛反対していますが、これは“オリンピックを開催するのだから仕方がない”ということで、おそらく押し切られるでしょう。今後は飛ぶようになるわけです。

ただし、これはあくまでオリンピックまでに4万回増やすための方法です。このあとに第5滑走路ができたら、さらにこうした動きが必要になってくるわけです。
横田管制空域
第5滑走路はもっと悩ましくて、ここには有名な「横田管制空域」があり、横田基地のためにアメリカ軍が東京から新潟にわたる巨大なゾーンを持っています。これが羽田空港のすぐ脇にドーンと巨大な壁になっていて、ここを飛ばせようとしても、この空域には入っていけないわけです。

実は1992年にその一部を返還してもらいましたが、もう1本造るとなるとさらに大幅な条件変更が必要になります。空域のどこを削るのかは分かりませんが、これは日本だけでは決められないテーマなのです。これもある種の規制緩和と言えるかもしれませんが、このように滑走路を1本増減するためだけでもこれだけのことが起こります。ですから解決しなければならない問題は常にあるということです。今のところ第5滑走路はまだ構想だけで具体化していませんから、どのように削るか話は出ていませんが、これも時間の問題と言えるでしょう。

 
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著者

都市政策専門家市川 宏雄
市川 宏雄

明治大学名誉教授
帝京大学特任教授
一般社団法人 大都市政策研究機構・理事長
特定非営利活動法人 日本危機管理士機構・理事長
東京の本郷に1947年に生まれ育つ。都立小石川高校、早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。
ODAのシンクタンク(財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所(現、みずほ情報総研)主席研究員の後、1997年に明治大学政治経済学部教授(都市政策)。都市工学出身でありながら、政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本では数少ない学際分野の実践者。2004年から明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長、ならびにこの間に明治大学専門職大学院長、明治大学危機管理研究センター所長を歴任。
現在は、日本危機管理防災学会・会長、大都市政策研究機構・理事長、日本危機管理士機構・理事長、森記念財団都市戦略研究所・業務理事、町田市・未来づくり研究所長、Steering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)in Switzerlandなど、要職多数。

専門とする政策テーマ:
大都市政策(都心、都市圏)、次世代構想、災害と危機管理、世界都市ランキング、テレワーク、PFI