東京一極集中と地方の存在|第2回 経済構造が激変するたび、東京の都市力はますます強くなっている!

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都市政策の第一人者であり、明治大学名誉教授の市川 宏雄氏が執筆したコラムを定期的に掲載していきます。日本国内における「東京」の位置づけと役割、世界の主要都市との比較など、さまざまな角度から東京の魅力を発信していきます。

日本はどういう形で国土を経営してきたかというと、「全国総合開発計画(全総)」の第1回策定が1962年、ちょうど高度経済成長の時期です。そして、最後が1999年の「21世紀の国土のグランドデザイン」で、過去に5度策定されています。

最も権威ある組織の人口推計が外れる理由

第1回の全総では、東京・名古屋・大阪の太平洋ベルト地帯構想が打ち上げられました。すると、そのほかの地域との格差が生まれますから、日本全体を均等に開発しようと、計画の基本目標として「地域間の均衡ある発展」を掲げました。以来50年以上にわたり、それが日本の国土政策の根幹となってきました。しかし、バブル経済真っ只中にあった80年代の第4回目の全総(四全総)では、人も仕事も東京に集中し続けた。なぜそうなったかというと、70年代の終わりから80年代にかけて、日本の主要産業が製造業からサービス産業に変わったからです。第三次産業というのはスケールメリットがあると発展しますので、大都市であればあるほど力を発揮します。それが東京の肥大の理由です。そこで、政府は「均衡ある発展」政策を維持するために、全国に“小東京”をつくる「多極分散型国土」政策を打ち出しました。しかし、これは失敗しました。

大都市圏の人口動向と計画(1954年-2015年)

(国土交通省国土局資料より作成)

1970年代のオイルショック以降、人口の増加を続けてきたのは東京だけです。この間、地方の人口減少分は、その多くが東京に流れました。名古屋はずっと横ばいで、大阪はずっと流出しています。結局、オイルショック、バブル崩壊、リーマンショックなど、経済構造が激変するたびにますます東京は強くなっているのです。

人口の増加について、日本で最も権威があるのが国立社会保障・人口問題研究所です。ここが出すデータには3種類あって、上位、中位、下位とあって、普通中位を使います。それによると、東京圏(1都3県)は2020年頃から人口減少が始まると言ってきた。しかし、この推計は外れています。すでに東京圏は3700万人に近づきつつあり、まだ増え続けています。

なぜ、人口推計が外れるか。それは、人口予測というのは過去のトレンドデータをもとに推計しているからです。ところが、過去数年とは異なる状況になってきているにもかかわらず、その手法を大胆には変えられないのです。

東京の人口は今後も増加していく

それでは、東京の人口がなぜ増えるか、その説明をします。ちょうどバブル経済の真っ只中の1990年に、私がアドバイザーとして参画して、東京都が初めて都市白書をつくりました。そこで、東京とニューヨーク、ロンドン、パリの昼夜間人口を比較しました。都心3区、8区、23区、この3つのゾーンに近い場所を各都市で選んでみました。

4大都市の昼夜間人口密度(1990年)

(東京都『東京都市白書91』より作成)

これが衝撃的なデータで、東京は当時、都心3区には昼間、夜間の8.3倍の人がいました。すなわち夜間に50万人だとすると、昼間は400万人以上いるわけです。同じ場所で各都市のデータをとってみると、ニューヨークは3.7倍、ロンドンは2.7倍、パリは1.5倍でした。東京は当時、人々を郊外に移動させることで都心の更新を行う政策を取っていた。それにより、これほどの差が出てしまいました。

では今、何が起きているか。8.3倍だった東京都心3区の昼夜間人口比は、2012年には5.4倍まで下がってきています。いま都心回帰が起きているのです。都心回帰は東京だけでなくて、ニューヨークでもロンドンでも世界共通で起きています。ただし、ひとつ違いがあります。ロンドンやニューヨークの都心の新築マンションは非常に高額ですが、東京では価格がそれほど高くならないのです。

その理由は、東京ではインフラやユーティリティを昼間人口に合わせて整備していますから、新たにマンションを建てても、そのための基盤整備のコストがかからないのです。ということは、まだ昼夜間人口比が5.4倍もありますから、東京の人口はまだまだ増えてもおかしくないのです。

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著者

市川 宏雄いちかわ ひろお

明治大学名誉教授
帝京大学特任教授
一般社団法人 大都市政策研究機構・理事長
特定非営利活動法人 日本危機管理士機構・理事長

東京の本郷に1947年に生まれ育つ。都立小石川高校、早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。
ODAのシンクタンク(財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所(現、みずほリサーチ&テクノロジー)主席研究員の後、1997年に明治大学政治経済学部教授(都市政策)。都市工学出身でありながら、政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本では数少ない学際分野の実践者。2004年から明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長、ならびにこの間に明治大学専門職大学院長、明治大学危機管理研究センター所長を歴任。
現在は、日本危機管理防災学会・会長、日本テレワーク学会・会長、大都市政策研究機構・理事長、日本危機管理士機構・理事長、森記念財団都市戦略研究所・業務理事、町田市・未来づくり研究所長、Steering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)in Switzerlandなど、要職多数。
専門とする政策テーマ: 大都市政策(都心、都市圏)、次世代構想、災害と危機管理、世界都市ランキング、テレワーク、PFI
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