「世界の都市総合力ランキング」2021年版発表~東京は総合第3位、「働き方の柔軟性」がジャンプアップ

森記念財団による「世界の都市総合力ランキング」の2021年版が2021年11月24日に公表されました。世界48都市の中で東京は、前年と同じく総合3位。ただし、そのスコアを決定する指標の一つ「働き方の柔軟性」において、東京のランキングが前年41位から2位にジャンプアップして話題となっています。その内容を知ることによって、世界における「東京の現在の姿」を読み解いてみましょう。

「働き方の柔軟性」が2位へ急上昇、「居住」は世界12位から9位へ

この「世界の都市総合力ランキング」(Global Power City Index, GPCI)は、世界48都市のそれぞれの総合力を、「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」の6分野で評価するというものです。その分野はさらに詳細な計70種の指標によって構成され、その総合スコアによって順位が決定されています。このランキングは森記念財団「都市戦略研究所」が2008年から公表しています。

今回公表された2021年版の結果を見ると、総合1位ロンドン、2位ニューヨーク、3位東京、4位パリ、5位シンガポールであり、上位8都市までは前年と同じ結果にとなりました。しかし、1位ロンドンと2位ニューヨークは総合スコアを前年よりも落としていて、それを3位東京と4位パリが、スコアを上げつつ追い上げています。

このランキングが例年よりも注目を集めたのは、各都市における新型コロナの影響がその数値に表れているからです。

なかでも顕著だった指標が、東京の「住居」分野における「働き方の柔軟性」です。前年41位だった同指標は、なんと一気に2位まで上昇しました。これは、新型コロナ禍におけるテレワークの促進などによるものだと考えられます。

この突出した数字によって東京は、「居住」分野においても12位から9位まで上昇。ニューヨークの総合順位は2位ですが、この「住居」分野のランキングは分野40位であり、そのため東京はこの分野を手がかりに、ニューヨークを総合順位でも追い上げようとしています。

東京の課題は、やはり「経済」

また東京は、「経済」分野における「ワークプレイス充実度」のランキングも上げています。これは、東京における労働環境が好転したことを意味しています。その理由の一つとして、コワーキング施設の拡充が大きく影響していると思われます。コワーキングとは、事務所スペースなどを共有しながら独立した仕事を行う共働ワークスタイルです。

しかし、「経済」分野において東京は、「ワークプレイス充実度」が順位を上げたものの、ほかの指標ではスコアを落としています。

とくに「証券取引所の時価総額」において、東京は2021年、上海に抜かれています。また、「世界トップ500企業」の指標も芳しくありません。結果、経済分野においては世界4位を維持したものの、5位香港が僅差に迫っているという状況にあります。

東京では、「観光地の充実度」なども以前からの課題となっています。アフターコロナに向けて各国・各都市がさまざまな観光戦略を準備する中で、東京がどのような対策を講じるかは、日本のGDPにも関わる問題であり、その意味においても都市力をさらに上げる必要に迫られています。

新型コロナが世界に与えた影響は?

このランキングでは、新型コロナの影響を特に受けた19指標を「国際交流」「企業活動」「働き方」「都市環境」という4つの分類に振り分けて検証していますが、その中で最も注目すべきは「企業活動」です。

「企業活動」分野の指標「世界トップ500企業」では、世界中のほとんどの都市がスコアを落とすなか、中国の北京、上海、香港の3都市と、台湾の台北が売上を伸ばし、そのスコアを上げています。その詳細を見てみると、

  • 北京、58社中42社が売上アップ(8社が新規掲載)。これは建築、銀行、航空宇宙産業などが売上を伸ばした結果です。
  • 上海、9社中8社が売上アップ。銀行、建設、不動産など、多業種で売上が増加しています。
  • 香港、7社中5社が売上アップ(2社が新規掲載)。PC、医薬品、物流業で売上が増加しています。
  • 台北、7社すべてが売上アップ。7社のうちPC、電子機器業関連が5社を占め、大幅に売上を増加させています。

これに対して、他国の主要都市の企業活動を見てみると、

  • 東京、37社中24社が売上ダウン。
  • パリ、24社中20社が売上ダウン。
  • ニューヨーク、17社中12社が売上ダウン。
  • ロンドン、16社中10社が売上ダウン。

という状況であり、昨今の中国の強さが数値的にも明確に表れています。

そのほか、「国際人流」分野には、「外国人訪問者数」「国内・国際線旅客数」などの指標が含まれていますが、新型コロナの影響によって各都市とも前年に比べると激減。とくに総路線数において国際線旅客が多く占める、パリやシンガポールなどが苦戦を強いられる結果となっています。

また、「都市環境」分野では、48都市中38都市でPM2.5濃度が減少しています。

東京のバランスシートは?

今回の結果を総合的に俯瞰してみると、東京は「住居」分野においてニューヨークよりも高いランキングを示したものの、それ以外の分野では突出した数値を示していません。

東京において優良とされる指数としては、「都市内交通」「クリーンな都市空間」「就業環境」「経済・人的集積」「学力・特許数」「受入環境」などがあげられていますが、その一方で、「国際ネットワーク」「都市の自然環境」「生活良好性・利便性」「ビジネス環境」「起業数」「発信力・観光資源」などにおいては評価が高くはなく、いまだ改善の余地があるようです。

さまざまな課題を抱えてはいるものの、「東京」にとって今最も重要なのは、アフターコロナで出遅れないことだといわれています。新型コロナの影響が一段落して、世界の都市間の人流が戻った時、ビジネスや研究、観光に関してどのような手を打っていくかが、東京または日本の総合力に大きく影響するといえるでしょう。

今回のランキング公表に際して森記念財団の委員長である竹中平蔵氏は、「東京には圧倒的な資産がある」とし、世界は相変わらず東京に注目し続けていると語りました。また、その資産を生かし、東京の総合力をさらに上げるヒントとして、「税制」「アクセス」「規制」の改革がポイントだと述べています。

新型コロナ禍からの脱却だけでなく、コロナ禍以前よりも強い東京を目指すとき、この3つのキーワードが大きな意味を持つに違いありません。

 

[編集]株式会社ボルテックス ブランドマネジメント課
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