中小企業における新規事業のつくり方

中小企業にとって、自社の特徴を生かした本業の強化は経営戦略の基本です。しかし、環境の変化は早く、本業一本だけで進むにはリスクもあります。

そのため、自社の強みにはこだわりつつ、新規事業の可能性を常に探る姿勢が重要です。中小企業が新規事業に取り組む際のポイントを考えてみます。

1.中小企業に新規事業が必要な理由

中小企業の多くは、特定の技術や製品、サービスを基本に据えて事業を行っています。常に新しい事業や新しい製品・サービスの開発を続ける大企業とは異なり、中小企業は資金も人材も潤沢とはいえず、現状の事業や製品・サービスを維持する方向に傾きがちです。

しかし、どんな事業であれどこかで成長のピークを迎えるものです。製品やサービスについても多くの場合、マイナーチェンジは避けられません。

とりわけ最近は、顧客ニーズや市場構造の変化のスピードがどんどん速くなっています。こうした変化への対応が必要なことは、大企業でも中小企業でも変わりません。

むしろ、経営の安定性と継続性を考えた場合、中小企業こそ、新しい製品やサービスを含め、新規事業の可能性を意識しておくことが今後不可欠でしょう。

2.新規事業をつくるのは「商品」と「市場」

一般的に事業を規定するのは、「市場(顧客)」と「商品(製品やサービス)」であるといわれています。この2つが適切にマッチすることで、健全な事業が成立します。

新規事業を考える場合も、「市場(顧客)」と「商品(製品やサービス)」をどうマッチングさせるかがカギを握るのです。

具体的には、3つのパターンが考えられます。

①既存の市場に、新しい商品を投入する
②新しい市場に、既存の商品を投入する
③新しい市場に、新しい商品を投入する

これらのうち、成功する確率は一般的に①が最も高く、②、③となるにしたがって下がると考えられます。

①の「既存の市場に、新しい商品を投入する」パターンは、小売業や卸売業、サービス業では比較的よく見られるものです。

ただし、何が新しい商品かということについては、柔軟に考えるべきです。原材料などの中身や機能、パッケージデザインを変えるほか、顧客に対するコミュニケーションの仕方を変えることで新しい商品になるかもしれません。

「新しい商品」かどうかというのは、供給側の視点ではなく、顧客側の視点で考えることが重要です。顧客にとってこれまでにない付加価値を感じるような点があれば、それは「新しい商品」になり得ます。

②の「既存の商品を、新しい市場に投入するパターン」は、商品の特徴を生かし、別の業界への販路拡大を目指すものです。例えば工場向けの自動搬送装置を製造している企業が、自動停止装置による安全性を生かし、物流倉庫への導入を開拓することなどが考えられます。

商店街に店を構えて販売していた小売業が、インターネットを活用してEC通販を始めるような場合も、新しい販売チャネルによって新しい市場を開拓することにつながります。

③の「新しい商品を、新しい市場に投入する」パターンは、中小企業にとって未知のことが多く、優先順位は低くなるでしょう。

とはいえ、時にはこのパターンが可能なケースもあります。例えば、2012年頃、再生可能エネルギーの導入を進める国の方針から、企業による太陽光発電や風力発電への新規参入が相次ぎました。新規参入したのは発電事業者より、他業種が中心だったのです。

しかし、新規事業への参入はタイミングが重要です。発電事業の場合、買電価格が下がった現在では、参入ハードルは相当高くなっています。

3.新規事業を成功させるポイント

中小企業に限らず、こうした新規事業を成功させるには、いくつかのポイントがあります。

<市場調査>

事業を規定するのは「市場(顧客)」と「商品(製品やサービス)」であると先ほど述べました。特に、今の時代は企業側の都合や思惑だけで商品(製品やサービス)をつくっても、成功しません。市場(顧客)の声をよく聞くことが、新規事業を成功させるカギを握っています。

<時代の変化>

市場(顧客)の声を聞くということは、ある意味、時代の変化に乗ることと言い換えられるかもしれません。時代の変化は新しいニーズを生みます。その変化を捉えることが新規事業につながります。

<ビジョン>

新規事業にしろ、新しい商品にしろ、「誰のために」「何のために」というビジョンが明確になっていることが重要です。そして、ビジョンは多くの人に共感してもらえるような魅力を備えていなければなりません。曖昧なビジョンのままでは、顧客に響かないだけでなく、社内からも反発が出ることになります。

<ネットワーク>

これからの時代、自社だけで新規事業を立ち上げるのは次第に難しくなってくるでしょう。異質な組織、異質なメンバーが集まることで新しいアイデアが生まれる可能性が広がります。

これまでの取引先だけでなく、積極的に外部とのネットワークを広げることが新規事業や新しい商品開発のきっかけになるでしょう。

<撤退基準>

新規事業にしろ、新商品、新サービスにしろ、うまくいかないことを想定するのはどうかと思うかもしれません。しかし、実際には想定通りにいかない可能性も考え、撤退の基準を予め設定しておくべきです。

撤退基準を明確にしておけば、一度で成功しなくても、二度、三度と挑戦を続けることができるようになります。

4.事業ポートフォリオの視点

中小企業が新規事業を検討する場合、もうひとつ考慮しておきたいのが事業ポートフォリオの視点です。

ポートフォリオはもともと金融や投資の世界の用語で、現金、預金、株式、債券、不動産など投資対象を適切に分散し、リスクとリターンを最適化する手法です。

企業経営においてもこの発想を応用し、本業を補完するような新規事業を立ち上げることで、経営の安定性が増します。事業にはリスクが付きものですが、そのリスクを分散できるような新規事業を探すのです。

ただ、こうした新規事業は先ほどの③「新しい市場に、新しい商品を投入する」というケースが多く、一般に難易度が高くなります。そうした中で比較的参入のハードルが低いのが、不動産投資、不動産経営です。

物件の立地や種類の選定などにはそれなりのノウハウが必要ですが、安定した賃貸需要が見込める物件を取得できれば、その後の事業はさほど手間がかからず、安定した収益が期待できます。場合によっては、本業の節税対策になるケースもあるでしょう。

5.まとめ

新規事業というとつい大げさに考えがちですが、顧客の何気ないひと言や日々のちょっとした気づきがきっかけになります。既存の製品やサービスを磨き上げることも、ある意味では新しい商品の開発と捉えることができます。あるいは、事業ポートフォリオの視点から不動産投資も選択肢のひとつとなります。

これからの時代、中小企業も新規事業を柔軟な視点で捉え、経営の安定性と持続性の確保を目指したいものです。

 
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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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