経営改善を先送り…過去にすがる「既往のしわよせ」とは?
~20年で終わる会社 20年を超える会社[第2回]

信用調査機関の調査によると、2018年に倒産した企業の数は8,000件以上でした。業種別でみるとサービス業が最も多く、卸売業、建設業が後に続いています。また、「倒産した企業の平均寿命は23.9年」という数値もこちらの調査で導き出されています。

リーマンショックが起きた2008年(倒産企業数1万3,000件以上)以降、倒産企業数は10年連続で減少しています。しかし回復傾向にあるものの、楽観はできない状況です。

本連載では企業の倒産原因に注目し、企業が存続し続けるためのポイントを紹介していきます。今回は、倒産の直接的な原因となり得る「既往のしわよせ」について、特徴や対策を考えていきます。

経営悪化を放置し資産を食い潰す「既往のしわよせ」

「既往のしわよせ」と聞いても、ピンと来ない人がいるかもしれません。既往とは「過ぎ去ったこと」を指す言葉で、対して「しわよせ」は「あることの結果として生じた無理や矛盾を、他の部分に押しつけること」を指します。

このふたつを組み合わせた表現である「既往のしわよせ」は、経営状態が悪化しているにもかかわらず、具体的な対策を講じないまま過去の資産を食い潰していくことで倒産に至ることをいいます。

「借入しているわけではないし、自社の貯えを使っているのだから、倒産の原因にまでなるのだろうか」と疑問に思う方もいるかもしれません。そこで、わかりやすく個人の資産状況に置き換えて考えてみましょう。

「給料は下がったけれど、貯金を切り崩せば何とかなる」

このような状態は問題が山積みなのは明らかです。生活レベルを引き下げて何とか対応していったとしても、いずれは貯金が底をついてしまうでしょう。それが企業の場合、キャッシュフローの規模が大きいため、経営状態が悪化している状況を放置しておくと、驚くほどのスピードで倒産の袋小路へと追い込まれていくことになるでしょう。

「前年より売上が落ちている」という事実は、数字により経営状態の悪化がはっきりと明示されます。「既往のしわよせで、当座はなんとか乗り切ることができた」という経験が記憶に新しい経営者であれば、今すぐに対策を講じていかなければなりません。

「既往のしわよせ」が生まれてしまう原因とは?

企業は、いくつかの要因が複合的に重なって倒産に至ることが多く、「既往のしわよせ」だけが原因となるということはあまりありません。したがって経営悪化に至る過程を注視することで、対策が見つかることもあります。そこで既往のしわよせが生じる原因を考えてみましょう。

■経営や財務計画がきちんと機能していない

企業は年間を通し、経営や財務・経理などについて、きちんと総合計画を立案しておかなければなりません。特にキャッシュフローに関連する財務計画は重要です。しかしながらCFOまたは財務本部長に任せきりで、詳細を把握していないという経営者は意外に多いのです。こうした企業は明確な指針を持たないままに経営を続け、自ら業績の低下を招いてしまうことになります。

■人材育成や設備改善が滞っている

既往の資産を現状の赤字に充てている企業には、業績が好調だった過去があります。しかし当時に比べ、企業内の設備が劣化している、型が古くなっているという状態を放置したままでいることは問題です。設備の不調が生産に影響を与え、業績の悪化に拍車をかけてしまうことが考えられるためです。

また企業の黄金期に活躍したスタッフの技術が、後進の若手にうまく継承されているのか、いま一度見直してみることも必要です。古株のスタッフを尊重することは良いのですが、技術経験や知識を受け継ぐ若い人材の育成をないがしろにしていると、ベテラン社員の休職や退職といった不測の事態が起きた時に、業績が悪化する可能性があります。

■新規の顧客開拓を怠っている

企業の売上を支えるにあたり、大口顧客との間に緊密なつながりを築いておくことは非常に重要です。

しかし経済が不安要素に満ちている近年においては、大企業であっても不景気の影響が及ぶことも考えられます。取引縮小や下請け業務吸い上げなどの理由から、大口顧客との繋がりが断ち切られてしまう可能性も充分に考えられます。

「既往のしわよせ」に直面している中小企業の中には、大口顧客との長期的な信頼関係を重んじるあまり、新規開拓を怠っているケースや、大口顧客との取引量を減少させないため、妥協案として安易に値引き交渉に応じてしまうというケースが多いようです。

「既往のしわよせ」の状態から脱却するための対策

ここまで「既往のしわよせ」と、その原因について考えてきました。思い当たる部分が多かった経営者は、すぐに対策を講じなくてはなりません。どのような点に注意していくべきなのか、見ていきましょう。

■経営状態をきちんと把握する

財務や経理などの情報に基づき、経営計画や全体の方針を定めていない経営者は、企業内のキャッシュフローを随時確認する習慣をつける必要があるでしょう。

1年間の決算データが出た時点で初めて「前年比から数%売り上げがダウンしている」という状態を知るようでは、いつまで経っても「既往のしわよせ」の状態から脱却できません。そこで、以下のポイントを実践していくようにしましょう。

・CFOや財務責任者とのコミュニケーションを緊密化する

・CFOや財務責任者のマネジメント能力をいま一度確認し、不安を感じるところがあれば、部署全体にキャッシュフローレポートを提出させることを習慣化する

・会社の資産状態を随時確認する

・財務計画の立案を習慣化し、適宜確認や修正を行う

■現状維持ではなく、未来を見つめた先行投資の必要性

「既往のしわよせ」に陥っている企業は、過去の好況にしがみつき、新たな局面を切り拓く努力を怠っているケースが多いです。資金的な余裕があるうちに先行投資の必要性を理解し実践していきましょう。

・ベテランスタッフの力で業務が安定している現状に満足しない。また、非正規雇用の人材で隙間を補填するのではなく、将来性のある若い人材を育成する努力をする

・社内設備が老朽化している場合は、刷新を検討する

・少数の大口顧客に売上を頼っている状況であれば、新規顧客開拓の努力をする。ルート営業に頼らない優秀な人材の雇用も、検討に入れる

■企業の新たな可能性を模索する

自社の業種が衰退産業に含まれてしまう場合は、強い危機感を持つ必要があります。商品力や品質を高める努力を真摯に行うほか、蓄積したノウハウを活かし、別の業種への参入を本格的に検討するのも一案です。

まとめ

「既往のしわよせ」が起きるということは、「これまでに築いた富がある」、あるいは「先代の遺してくれた資産がある」証拠です。しかし厳しさを増す国内の経済状況を鑑みれば、過去の資産に頼った経営は、企業存続に黄色信号が点滅している状態といえるでしょう。そのような企業の経営者は、早急に対策を講じていかなくてはなりません。

 

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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