働き方改革、広がる禁煙…時代の潮流に乗る企業を支援する助成金
~中小企業経営者のための補助金・助成金ガイド[第5回]

めまぐるしく変わる社会情勢、人々の意識…中小企業を取り巻く経営環境はどんどん変化しています。経営者は時代の流れを読みながら、環境の変化に適応していかなければなりません。何か対策をしようと思っても、銀行などからの借入だけではまかないきれない場合もあるでしょう。そこで利用したいのが助成金です。今回は時代の潮流である「働き方改革」「禁煙」「キャッシュレス」に関する取組みを対象にした助成金を見ていきます。

時代の潮流①働き方改革
:時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)

中小企業は大企業に比べて労務管理意識が低い傾向にあり、労働環境改善の推進が急務でした。そこで2018年4月にスタートしたのが、「時間外労働等改善助成金」です。「労働時間の短縮」や「休暇の取得推進」、「テレワークの導入」など働き方改革に取り組む中小企業を対象にした制度です。直近の申込は既に締め切られていますが、働き方改革が政府の重要案件であることを鑑みると、今後も引き続き公募されることが見込まれます。細かい要件などのマイナーチェンジはあるかもしれませんが、同様の制度は継続されると考えられます。

「時間外労働等改善助成金」にはいくつかコースがありますが、最も代表的な「時間外労働上限設定コース」について見ていきましょう。

■支給対象となる事業主

次のいずれにも該当する中小企業事業主が対象です。

(1)労働者災害補償保険の適用事業主であること
(2)労働基準法第36条第1項の協定(36協定)の「労働時間の延長の限度等に関する基準」で規定する限度時間を超える内容の協定を締結している事業場を有し、時間外労働や休日労働を複数月行った労働者がいること

■支給対象となる取組

・労務管理担当者に対する研修
・労働者に対する研修、周知・啓発
・外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
・就業規則・労使協定等の作成・変更
・労務管理用ソフトウェアの導入・更新
・テレワーク用通信機器の導入・更新 など

■時間外労働時間数の成果目標

2019年度または2020年度に有効な36協定の延長する労働時間数を短縮して、以下のいずれかの上限設定を行い、労働基準監督署へ届出を行うことが必要です。

(1)月45 時間以下かつ、年360 時間以下
(2)月45 時間以上60 時間以下かつ、年720 時間以下
(3)月60 時間以上80 時間(*)以下かつ、年720 時間以下
*(3)の月の上限時間は、時間外労働時間数及び法定休日における労働時間数の合計

■支給額

以下(1)~(3)のいずれか低い方の額が支給されます。

(1)1企業当たりの上限200万円
(2)上限設定の上限額及び休日加算額の合計額
(3)対象経費の合計額×補助率3/4

【(2)の上限額】
上限設定の上限額 

休日加算額  

時代の潮流②禁煙
:受動喫煙防止対策助成金

喫煙は、肺がんを始めとするがんのほか、心臓病や脳卒中などの循環器の疾患にかかるリスクを高めます。また身の回りのたばこの煙を吸う受動喫煙も問題視されています。このような健康被害を防ぐため、2018年7月に受動喫煙対策が努力義務として盛り込まれた「健康増進法」の一部を改正する法律が成立し、公共交通機関やオフィスなど、さまざまな場所で禁煙や分煙の取組みは広がりました。さらに2020年4月からは原則屋内禁煙が義務化されます。

中小企業においても、職場の受動喫煙防止対策は必須という流れになってきています。その対策を支援してくれる制度が「受動喫煙防止対策助成金」です。オフィスでの受動喫煙防止対策を行う際には、この助成金の活用を検討してみましょう。

■対象事業主

(1)労働者災害補償保険の適用事業主であること
(2)中小企業事業主であること(下図参照)
※「労働者数」か「資本金」のどちらか一方の条件を満たせば、中小企業事業主となります。


■助成対象

(1)喫煙室の設置に必要な経費
(2)屋外喫煙所の設置に必要な経費
(3)上記以外に、受動喫煙を防止するための換気設備の設置などの措置に必要な経費

■助成率・助成額

喫煙室の設置などに係る経費の2分の1(上限100万円)となります。ただし、飲食店は3分の2が助成されます。

交付は1事業場につき1回のみとなります。過去に交付された事業場は申請できません。

※申請にあたっては、喫煙室の設置等の事業計画の内容が技術的及び経済的な観点から妥当であることが必要です。

時代の潮流③キャッシュレス決済
:キャッシュレス・消費者還元事業

世界で進むキャッシュレス化。しかし、現金の信頼性が高い日本ではなかなかキャッシュレス化は進まず、諸外国から遅れをとっていました。経済産業省が公表した「キャッシュレス・ビジョン」では、少子高齢化が進み、労働力人口が減っていく日本では、決済の効率化や税収アップ、消費活動の活性化のためにもキャッシュレス化が必要だと説いています。そして政府は、東京五輪や訪日外国人の増加を見越し、2025年度までに40%に高める目標を掲げているのです。

そのようななか、2019年10月の消費税率引上げに伴い、キャッシュレス対応による生産性向上や消費者の利便性向上も含めた需要平準化対策として、2020年6月末までの9ヵ月間、中小・小規模事業者向けの支援制度が実施されることになりました。対象となる中小・小規模店舗は、キャッシュレス化をすると、次のような補助が受けられます。

(1)決済手数料補助
(2)端末補助
(3)キャッシュレスで支払った消費者へのポイント還元の原資も国が負担

(3)のポイント還元の支援内容は下記の通りです。


中小店舗の事業への参加申込みの手続きは、選択したキャッシュレス決済事業者経由で実施します。登録が完了したら送付されてくるポスターやステッカーなどを店頭に掲示し、準備は完了です。申請は2020年4月末まで受け付けています。

 

人工知能(AI)など科学技術が加速度的に発達する時代になり、今後、経営環境も劇的に変化するといわれています。今回取り上げた「働き方改革」「禁煙」「キャッシュレス」以外にも新しい動きが次々と出てくるでしょう。たとえば、2020年から日本でも商用サービスがスタートする第5世代移動通信システム(5G)は、「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」という3つの特徴を軸に、社会に大きな技術革新をもたらすといわれています。中小企業であっても、5Gの活用が絶対的に必要になるでしょう。

これまで、大きな社会変化が起きる際には、国は中小企業への支援として助成金を設けてきました。今後、ますます変化する経営環境に対応していくためにも、国が制定する支援や助成金を上手く活用していきましょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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