厳しさを増す「教育業界」…eラーニングで新規参入を目指す
~本業にプラスワンで売上アップ「会社の副業」ガイド[第4回]

知名度の高い企業のなかには、業種の異なる複数の事業を展開したうえで、それぞれを法人化していることがあります。グループの力をまとめることで勢力を増大させ、大企業としての存在感を確かなものにしているのです。

しかし、大企業でなくとも他業種で新規事業を検討する価値は十分にあります。リスク分散や節税に繋がることはもちろん、ビジネスチャンスの増大という相乗効果も期待できるからです。

本連載では、他業種で新規事業を検討する中小企業に向けて、様々な業界の概況や事業開始までのポイントを解説していきます。今回、ご紹介するのは「教育業界」です。

現在の教育業界を取り巻く状況

矢野経済研究所が2019年11月に行った調査によると、国内の教育産業市場規模は2018年度が2兆6,794億円であり、2019年度は2兆6,968億円と予測されています。なお5年前の2015年は2兆5,833億円でした。その後上昇を続けていることから、業界全体が堅調に推移していることがわかります。

「教育業界」と聞くと、小中高生の学習塾をまず思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、その他にも幼児向け教室をはじめ、大人向けの資格取得学校や研修サービス、そして語学学校なども同じ業界であり、その内訳はかなり多様です。

したがって「教育業界なんて、専門性が高過ぎて無理」と即断するのは早計です。まずは、「自社が業務内で培ったノウハウを他者に教育することはビジネスとして成立しないだろうか?」という観点から検討を始めてみると良いでしょう。

eラーニングの可能性

塾や教室などの形態での教育サービスをスタートさせるとなると、専用の物件が必要になるなど、多額の初期費用がかかります。また、優秀な講師を確保できれば、経営が軌道に乗りやすくなりますが、雇用条件が悪ければ良い人材は集まりません。したがって、人件費というランニングコストも惜しむことができません。

そのような中で、近年「eラーニング」という新しい学びのスタイルが浸透しつつあります。

eラーニングとは、パソコンやスマートフォンなどのデバイス、DVDなどを利用する学習法の総称です。初期費用を抑えたスタートが可能となるため、近年注目されてきています。しかし、実際のシステム構築には専門家のサポートが必要不可欠であり、導入後もスタッフがきちんと使いこなせなければ、トラブルが多発してしまいます。したがって自力でeラーニングでの事業を始めるのは難しいかもしれません。

そこで、こうした問題を解決するために、eラーニング専門のクラウドサービスがあります。開講者・受講者双方が利用しやすいシステムを提供する代わりに、利用料を徴収するというサービスです。その多くがマルチデバイス対応で、オリジナル教材やテスト問題などの作成が可能となります。こうしたクラウドサービスを導入することで、資金や労力をかけずに教育業界への参入が可能となります。

eラーニング成功のためのポイントとは?

教育業界への参入をサポートしてくれるeラーニングですが、いくつかのポイントに留意する必要があります。

■教育のターゲットを選定する

いくらシステムが整っていても、魅力的な内容を提供できなければ、受講者は集まりません。

これから教育業界へ参入を検討する場合は、既に飽和状態である中高生の学習塾とは別の角度から「学びの機会を必要としている人口」を探し当てる必要があります。たとえば、「近年増加している外国人在留者に向けた教育業」「高齢者の生活に役立つ教育業」「専門性が強い業種のノウハウ教育業」などを模索していくことで、新たなビジネスチャンスが見つかる可能性は高まります。自社業務の強みがどれだけ活かせるかも、大きなポイントとなるでしょう。

■生徒の学習意欲をいかに持続させるか

eラーニングは、学習塾や語学教室のように、ライブ授業を提供するものではありませんので、自発的に学ぶという姿勢に欠けている人を集客するのは難しい業態です。

そのため、意欲的に学習できるような教材の作成は非常に重要になってきます。モチベーションが上がるよう静止画だけでなく、動画やアニメーション、VR動画などを内容に合わせて使用するなど、楽しみながら学べる教材を用意できると良いでしょう。また定期的にテストを出題し、理解度の確認を促す必要もあります。

クラウドサービスを利用する場合は、どこまでの内容に対応可能なのか、事前にしっかり確認しましょう。

■業界全体が構造改革を模索中

近年、普及しつつあるeラーニングですが、塾や各種教室などのサービスに比べ、まだ歴史が浅いのは確かです。多くの教育業者が「教育のIT化」に取り組んでいる最中であり、スタンダードな成功モデルを、まだ見出しにくい状況なのです。したがって、「A社のやり方を真似れば良い」という考え方ではなく、パイオニアを目指す気持ちで、企画全体を精査していく必要がありそうです。

eラーニング参入の流れ

eラーニングへの参入は、どのような流れで進んでいくのでしょうか。以下に見ていきましょう。

■事前準備

eラーニングを開業するにあたり、特に必要な資格はありません。必要なのは一般的な事業計画と事前調査です。

先述の通り、eラーニングは教育内容や使用する教材が非常に重要となります。自社のノウハウを活かす内容であれば、新たに人件費をかけることなく、魅力的な教材のアイディアも生まれやすくなるでしょう。しかし、提供する教育内容が受講者を集められる内容であるかどうかは、シビアに検討する必要があります。参入のGOサインが出たら、次にパートナーとなるクラウドサービス業者を探します。

クラウドサービス業者との相談

eラーニングでビジネス化したい内容をクラウドサービス業者に伝えると、受講者ターゲットや販売法などについてのビジネスモデルをブラッシュアップし、企画提案をしてくれます。

クラウドサービス業者とは長い付き合いになります。初期費用だけでなく、ランニングコストや保守費用を含めたトータルコスト、機能性やサービス内容など、複数社からの提案をもとに、比較・検討を重ねることが重要です。

■教材作成

先述の通り、eラーニングの教材内容は集客に大きな影響を及ぼします。そのため、「わかりやすい」「学習しやすい」ことはもちろんですが、さらに「適宜更新しやすい」「面白い」といった内容を目指す必要があります。自社の意見をしっかりとまとめ、クラウドサービス業者のアドバイスも受けながら、より良い内容作りを目指していきましょう。

■システム導入

教材や受講者の管理に必要なシステムを導入します。受講者一人ひとりの学習管理やSNS機能、クレジット決済機能などさまざまな機能がありますので、自社に適した機能を搭載しているシステムを導入しましょう。

■プロモーション開始

eラーニングサービスを販売するためには、申し込みサイトが必要です。自社のサービス内容がよく分かり、多くの受講者を集められるサイトを作りましょう。そのサイトを公開し、いよいよ運用開始となります。必要に応じてSEO対策などのプロモーションを展開すると尚良いでしょう。

 

少子化が進むなか、教育業界は斜陽産業と思われがちですが、社会教育の高まりなどでニーズは増加し、IT化の進行により参入障壁は下がっていると言えます。新規事業の鍵といえるeラーニングは、一見システム導入など難しそうですが、業者任せにせず、作成した経営計画をもとに自社の意見を取り入れていくことが大切です。また、今後さらに加速する教育のIT化のなかには、大きなビジネスチャンスが潜んでいるかもしれません。それに合わせて自社のサービスを進化させ続けていくことも重要です。

 

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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