【case study】 コロナ禍のなか「新商品・サービス」に挑む企業
〜中小企業経営者のための注目の経営トピックス[第4回]

2020年の1月から深刻化し、オリンピック開催を史上初の延期にまで追い込んだ、新型コロナウイルスの感染拡大。国内経済が落ち込むなか、「今、できることを」という前向きな発想を忘れず「コロナショックから新たなビジネスを生み出そう」というという動きも見られます。

本連載ではメディアでも注目されている企業経営に関するトピックスを解説します。今回は、コロナ禍の中から新事業を立ち上げ、軌道に乗せ始めた事例を紹介していきましょう。

コロナ禍の危機を打開しようとする中小企業の経営者

独立行政法人中小企業基盤整備機構が令和2年4月27日~30日の期間で、全国の中小・小規模企業約2,000社(個人事業主含む)を対象に実施した調査によると「前年の4月に比べ業績が悪化した」という回答は、全体の約80%に及びました。全体の約40%が「大幅なマイナス影響が発生している」と回答しており、事態の深刻さを裏付ける結果となっています。

現在と今後の事業活動対策に関する質問については「対策していない・対策法がわからない」という回答が全体の30%以上を占め、最多となりました。しかし「公的支援施策を活用している」「金融機関等から資金を調達している」という回答も全体の25%以上を占めており、経営陣の不断の努力が伺えます。

また今後の事業活動対策として「新たな商品・サービスの開発」をあげる企業は全体の20%以上に及びました。公的支援について情報収集しつつ、自分たちの力で状況を打開しようとする中小企業のサバイバル精神に、大きな期待がかかります。

[図表1]事業活動面の対策(現在/今後)

事業活動面の対策(現在/今後)

(出所) 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「新型コロナウイルス感染症の中小・小規模企業影響調査」(2020年4月)より株式会社ボルテックス100年企業戦略研究所が作成
※複数回答

瀕死の観光業からいち早く新事業を立ち上げ

コロナショックの中で、最も大きな打撃を受けた業界の筆頭にあがるのは観光業。JTB総合研究所の調査によれば、2020年3月の訪日外国人数は前年の3月に比べ93%減という結果が出ています。各国で渡航制限や査証の無効化などの移動制限措置が強化されたのですから、無理もありません。

国内の有名な観光地で、外国人観光客向けの体験ツアー事業を展開していた、石川県の「株式会社こはく」は、2月に利用者の大幅な減少、そして4月にすべての予約キャンセルという最悪の事態を迎えました。しかし同社の経営者は現状を嘆くことなく発想を切り替え、構想から立ち上げまで1カ月という短期間で、新事業をスタートさせています。

具体的には成長率の高い「食品通販市場」「ギフト市場」のふたつに照準を合わせ、地域名産の食材や加工食品に特化した通販サイトを立ち上げたのです。

同社の素早い動きに注目したメディアからの取材も後押しとなり、反応は上々。また、こはく社と同様にインバウンド需要に頼っていた地元商店などからも、感謝の声があがりました。

こはく社の経営者は「これまでの外国人観光客に依存した事業内容を見直す」という方針を、今後も推進していく予定だそうです。

社会貢献度の高い飲食業界の新サービス

観光業と並び、コロナショックの中で最も大きな打撃を受けた業界に飲食業があげられます。外出自粛への要請が客足に大きな影響を及ぼしたのはもちろん、自治体から営業時間短縮の要請を受け、やむをえず臨時休業を選択した店舗も多かったことが要因と考えられます。

そんな中でも、飲食店が生き残りを賭けながら生み出した新機軸は、明るい話題としてメディアを賑わせました。「通常時は予約の取りにくい人気店が、テイクアウト用のお弁当を販売開始した」、「事態の収束後に利用可能なサービスチケットを先行販売する」などなど…。Uber Eatsを活用したデリバリーに乗り出す店舗も多かったほか、公益財団法人東京都中小企業振興公社の「飲食店業態転換支援助成金」に含まれる「移動販売における車両リース(最長3カ月)」を活用する動きも見られたようです。

こうした情勢を受け、コロナショック以前からフードトラックとオフィス街に点在する空きスペースのマッチングサービスを提供していた東京都の「株式会社Mellow」は、4月から新たに「フードトラック利用に特化した車両リース」を開始しました。利用を検討する飲食業者にとっては低リスクでのスタートが可能な内容となっており、大きな注目が集まっています。蓄積したノウハウを充分に活かすかたちでMellow社が開発した、社会貢献度の高い新サービスと言えるでしょう。

既存アイテムが広告の打ち方ひとつで人気商品に

次は海外の事例を紹介しましょう。新型コロナウイルスによる死者数が10万人を突破してしまったアメリカでは、各州で外出禁止が発令されました。同国のビジネスメディア、ファスト・カンパニーの調査によると、3月のアパレル業界の売上高は前年の同月に比べ、−50%にまで落ち込んだようです。

そんな中、ボディラインを美しく見せる補正下着を専門的に製造販売するアメリカの「Shapermint(シェイパーミント)」は、蓄積された顧客データを再検証。「リピーターの多くが、補正下着をルームウェアとして活用している」という事実に着目しました。

そこでShapermint社は、広告内容を刷新。「ストレスフリーで快適に始める、ボディラインコントロール・ラウンジウェア」という文句を打ち出したところ、巣籠り消費のアイテムを求める女性たちからの注目が集まりました。その結果、オンライン注文数は上昇し、一部アイテムはコロナショック以前のレベルにまで、売上が回復したそうです。

危機を乗り越えるために新事業や新商品を開発するのも一案ですが、既存商品を再検証し、時流に合致したセールス法を考えるというアプローチも有効だと証明した、好例と言えるでしょう。

SNSで提供した無料動画が効果的な販促に

コロナショック下での販促活動として、オンライン活用を模索している中小企業は数多いのではないでしょうか。

トレーニングウェアを製造販売しているカナダ「Lululemon(ルルレモン)社」は、SNSの自社アカウントを活用するかたちで、オンライントレーニングの提供を開始しています。視聴無料という好条件に人気が集まり、フォロワー数は急増。動画内でプロのインストラクターたちが着用しているE社製品への注目も高まり、自然な流れで購入を促進できているようです。

自社製品を取り巻く条件を見直し、いま消費者が求めているサービスと直結させれば、効果的なオンライン販促が実現する可能性も、充分に残されています。

東京商工リサーチの調査によると、2018年に倒産した企業の数は、8,000件以上。リーマンショックが起きた2008年(倒産企業数1万3,000件以上)以降、数値は10年連続で回復傾向にありましたが、残念ながらコロナショックに見舞われた2020年の展望は、暗いものとなっています。特に中小企業にとっては、いまが踏ん張り時。公的な支援を充分に活用しつつ、社内が一丸となって発想を転換することで、前向きに状況の改善を目指していきましょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

100年企業戦略研究所 ロゴ

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