国や銀行に伝わる!「事業計画書」書き方の基本
~中小企業の経営を強くする「事業計画書」作成のススメ[第1回]

会社は継続して事業を行うことを目的とした組織です。事業を継続するためには利益を生み出さなければなりません。上場企業であれば、企業理念や事業内容、事業展開、事業戦略などを盛り込んだ、中期の「事業計画書」を作成しています。一方で、中小企業の場合、「事業計画書」を作っていないケースが多くみられます。

経営力強化のためにも、「事業計画書」は作成しておきたいものです。そこで今回は、会社の説明書となる「事業計画書」、その書き方の基本を学んでいきましょう。

「事業計画書」は何のために作成するのか?

事業計画書は様々な目的のために利用します。一般的には銀行からの融資を受けるため、国や自治体からの補助金を受けるため、投資家からの資金調達を受けるために作成することが多いです。

しかし事業計画書の用途に制限はありません。新入社員に会社の魅力を伝える、新規提携先に自社のリソースや事業展開案を示す、M&Aで買収候補企業に自社の価値を訴求するなど、事業展開上、様々な利害関係者に自社の魅力を知ってもらうことが目的であるといえます。

別の言い方をすると、事業計画書は誰かを説得させるために作成するものであり、見る人の気持ちを揺れ動かすほどの説得力がなければいけません。

説得力のある事業計画書のポイントは?

説得力のある計画書とは、その計画を見た人がワクワクするもの、安心するもの、信頼できるものなど、目的によって様々です。そのためにどのような計画書を作るべきか、ポイントを解説していきます。

専門用語を多用せずに、ビジュアル的でシンプル、かつわかりやすい内容であること

銀行や投資家、役所などに計画書を提出するとき、事業計画書を見る人が業界に精通しているとは限りません。業界に疎い人にとって、専門用語を多用している計画書は理解しづらいものです。文字だけの資料よりも、図を活用してビジュアルにこだわりましょう。

見にくい資料はそれだけでストレスで、読み手の決断を阻害する可能性があります。シンプルでわかりやすい内容の計画書を目指しましょう。

客観的な数字や根拠に基づいて、実現可能性が高い計画であること

事業計画は、独りよがりな内容になりがちです。いかに素晴らしい内容であっても、実現の可能性が低いと判断されれば意味がありません。

では、どのような事業計画書であれば実現可能性が高いと感じるのか。それは客観的な事実や数字に基づいた内容であることです。たとえば「ターゲットである多数の企業にアプローチができる」という内容よりも「ターゲットである不動産業界にメールマガジンを配信しているA社との提携が決まっており、10万社の配信先に対して毎週アプローチが可能である。このメールマガジンの開封率は40%と非常に高い開封率をほこり、クリック率を2%と考えても800社にアプローチが可能である。さらに……」と説明が続くと説得力が増し、実現可能性が高いと感じてもらえるでしょう。

市場から見てニーズがあり、競合他社の状況等から見て差別化が明確であること

その事業が本当に市場から見てニーズがあるのか、また同じようなことをやっている競合他社はないのか、という点は非常に重要です。市場のニーズは客観的な資料に基づいて説明が必要です。経済紙やインターネット、シンクタンク等の市場調査の情報を引用して、ニーズを明確にすると良いでしょう。

また、どれだけニーズがある事業であっても競合他社がすでにたくさんある場合や、大手が参入しやすい事業の場合には、リソースが限られる中小企業は太刀打ちができません。そのため、どのような差別化ができるか、という視点は最も重要です。差別化の戦略でブルーオーシャンを目指しましょう。

自社の強み、社長の知識・経験・人脈・熱意から一貫性がある事業か

なぜその事業を行おうと思ったのか。これは社長の経験に基づくことが多いでしょう。どのような経験・背景があり、その事業をすることに至ったのか。これが事業の強みになります。

また、ひとつの事業の成功は並大抵の努力では実現困難です。事業成功のための原動力はどこから来るのか、どのような価値観で事業を行うのか、という根源も重要です。これが経営理念にも繋がり、事業への熱い想いがこもった魅力的な計画書になります。
一貫性がある、説得力のある計画書を作りましょう。

事業計画書の主な構成は?

最後に事業計画書の主な構成を整理していきます。

①会社概要

まずは自己紹介からです。社長の経歴や会社説明から入り、どのような経緯があり、どのような事業を行っているか、概要をまとめていきましょう。

また、この部分に事業のコンセプトを入れるようにします。なぜその事業を行うのか、その事業により何を実現したいのか、社会に対してどのような価値を提供するのか、経営理念にあたる自社事業にかける想いを記しましょう。過去のエピソードも交えて事業コンセプトを説明できると、一貫性のある計画書になります。

②事業の内容・特徴・ターゲット

続いて事業内容を詳細に記していきます。たとえば「Aという商品を作って売っている」とするのではなく、「弊社では、Aという商品を製造しているが、この商品は〇〇という特徴があり、〇〇のような人たちが購入することで、〇〇のような使い方ができ、〇〇に価値を提供できる」というように記載をします。

事業は顧客がいなければ成立しません。誰に(ターゲットは?)、何を(商品・サービスの特徴は?)、どのように(使い方は?)、提供することでどんな価値が生まれるのか、ということを明確にしていきましょう。

③競合企業との比較、差別化

どれだけ魅力的な事業であっても、多くの企業が同じような事業を行っている場合には、事業の成功は難しくなります。そこでブルーオーシャンを目指し、競合企業との比較、差別化を図ります。

たとえば美容院は多数ありますが、ターゲットとコンセプトを変えることで事業はまったく異なるものになります。「南国バリをイメージした家具を取りそろえ、お香を焚いて空間を演出、ココナッツの香りがするオイルで顔をマッサージしてリラックスしてもらう」など、サービスのなかに特徴を盛り込むことで差別化ができます。

ただし、これは市場の状況によるところが大きいので、小さい市場でコンセプトを絞り過ぎてしまうと、自らターゲットを減らしてしまうことになるので注意しましょう。

④社会の需要・市場分析

状況に合わせた社会のニーズや市場分析を入れることで説得力のある計画書ができあがります。これからであれば、コロナの影響には言及すると良いでしょう。「コロナの影響で、〇〇というニーズが生まれている」とプラスに転じることができればベターです。

また、市場の情報はインターネットである程度得ることができます。出典元を明らかにしたうえで引用したグラフなどを載せるようにしましょう。その際には、ミクロとマクロ両方の視点で市場を分析するようにします。

⑤事業体制・生産方法・仕入先など

会社としてどのような体制で事業を実現できるのかを説明します。内部体制に限らず外部体制も含めて整理しましょう。関係者が多ければ、ビジネス俯瞰図でビジュアル的に表現するといいでしょう。生産方法や仕入先等、どのように商品の調達をするのか、なぜそれが実現可能なのかを説明することで説得力のある計画書に仕上がります。

⑥販売方法・販売戦略

ここは非常に重要です。どのように販売し、どれだけ販売するのか、詳細に説明します。「地域の〇〇に販売する」だけでは説得力がありません。「お店のオープンと同時に周辺〇〇世帯にポスティングをして、朝は駅前でチラシも配ります。オープン記念ということで初月の利用料は大幅割引をし、通常料金の5割で提供しまずは来店いただき、良さを知ってもらいます。さらにスタンプカードを作り、リピートして来店いただくための仕組みを作ります」というように戦略を事細かに説明していきます。そのうえでどれだけ顧客を獲得できるか、どの程度がリピートに繋がるか、数字を用いた仮説で売上計画を立てていきましょう。

⑦事業スケジュール・損益計画

今後3~5年間の事業展開をまとめていきましょう。Twitterやユーチューブ等のSNSを活用して店舗や商品を紹介し来店を促す、3年目には10万フォロワー突破、2店舗目をオープンする、5年目にはグッドデザイン賞を目指すなど、 具体性のある計画書は魅力的に映ります。

また将来のアクションプランに連動する形で損益計画を描いていくと魅力的な計画書に仕上がっていきます。

 

事業計画の作り方に唯一の正解はありません。事業の内容やコンセプトによってその形は異なり、あえて少し型を崩した計画書も魅力的です。特に個人投資家から資金調達をしている場合、事業というより社長個人に投資をしているというケースも多く、自分らしさを出した計画書に仕上げることが重要になってきます。

共通するのは、事業計画書を作る目的は「誰かを説得すること」ということです。独りよがりにならず、「どうすれば相手に響くか」という視点で計画書を作り上げましょう。

著者

アンパサンド税理士法人/アンパサンド株式会社 税理士山田 典正
山田 典正

大学を卒業後に税理士試験に専念した後、平成20年1月に都内大手税理士法人に就職。 個人や中小同族会社の税務相談や経営周り全般の相談から大手上場企業の税務相談まで幅広い分野で活躍。事業承継、組織再編、連結納税、国際税務、事業再生と多岐に渡るコンサルティング実績がある。また、相続申告業務についても多数の実績を有する。
平成27年1月 山田典正税理士事務所として独立。独立後も、補助金支援において創業補助金採択、ものづくり補助金採択の実績を有し、生産性向上設備投資促進税制の申請支援、資金調達支援、事業承継支援、上場企業の税務顧問等、多数の実績を有する。
平成30年1月、社名をアンパサンド税理士事務所に変更。令和元年10月、アンパサンド税理士事務所より組織変更。