寄付で受けられる「税制上の優遇処置」とは?
~中小企業経営者のための「寄付」入門[第2回]

企業の経営活動のひとつに「社会貢献活動」があります。しかし直接利益に結び付きにくいため、特に中小企業においては、後回しにされがちです。一方で、近年、少子高齢化や貧困・虐待など子どもの問題、地方の衰退……と、山積する社会問題に対して何ができるのか、企業としての姿勢が問われるようになってきました。

本連載では、社会貢献活動のなかで一番身近な「寄付」について解説していきます。今回は寄付によって受けられる税制上の優遇措置について焦点をあてていきます。

NPO法人等への寄付で受けられる「税制上の優遇措置」

通常、法人格を持つと一定の納税の義務が課せられます。しかしNPO法人等の公益事業を行う法人の法人税は原則非課税となり、法人税法に規定された収益事業を行う場合にのみ、その収益事業からの所得に対して一般企業と同じ税率で法人税が課税されます。

法人税法上の収益事業とは、法人税法施行令第5条に定められた34業種の事業で、継続して事業場を設けて営まれるものをいいます。NPO法人等の公益法人が個人や法人から寄付を受け取ったり、相続財産からの遺贈を受けたりしても、原則として課税されることはありません。

一方で、NPO法人等の民間非営利団体に一定の条件の元で寄付をした場合には、税制上の優遇を受けられる「寄付税制」という制度があります。税制上の優遇措置は、下記のように個人と法人で異なります。

■個人が寄付した場合、一定限度内で寄付金額に応じた所得控除もしくは税額控除が得られる。
■企業が寄付した場合、一定限度内で寄付金額に応じた損金算入(経費処理)が認められる。

個人が寄付を行った場合は「寄付金控除」を受けられる

まず個人が寄付を行った場合の優遇処置についてみていきます。個人が国や地方公共団体、特定公益増進法人、認定NPO法人等に寄付をした場合に、寄付金控除を受けることができます。寄付金控除額は、「寄付をした金額-2,000円」です。ただし、総所得金額等の40%が限度です。

寄付金控除は、所得控除か税額控除、いずれか有利な方法を選択することができます。ただし、税額控除を選択することができるのは、認定NPO法人、一定の証明を受けた特定公益増進法人に寄付した場合に限られます。

所得控除は、医療費控除や配偶者控除のように、所得金額から控除されるものです。所得税は、課税所得金額に税率をかけて計算するので、所得控除方式の寄付金控除は、高額所得者であるほど効果が高くなります。

税額控除では、税率に関係なく所得税額から直接控除されるため、所得控除と比較して、ほとんどの人は寄付に対して減税額が大きくなります。

法人で寄付を行ったら、いくらまで「損金算入」できるのか?

次に、法人で寄付を行った場合の優遇処置についてみていきます。寄付金は一般的に見返りを求めない行為とされているため、企業や団体等の法人においては、原則として全額損金不算入、つまり経費としては認められない性格を有しています。しかし、企業の社会的な責任や事業に関連あるものとして必要な寄付もあるため、一定の限度額までは損金算入(=経費として処理すること)が認められています。

法人税法における「寄付金」は、寄付金や見舞金等、名目の如何を問わず、会社が金銭やその他の資産、経済的な利益を贈与、または無償供与することと定められており、下記の5つの種類に分けられます。ただし役員もしくは従業員が相手方になっている場合は、寄付金としてではなく、給与として取り扱われる場合もあるので注意が必要です。

(1)国・地方公共団体に対する寄付金
直接的に国や各都道府県、市区町村へと寄付を行うものです。公立高校や公立図書館等への寄付もこれに当たります。災害が起きた際には、日本赤十字社や中央共同募金会(赤い羽)、自治体、報道機関等が受け付ける義援金もこれに該当する場合があります。

(2)財務大臣が指定した指定寄付金
公益を目的として事業を行う法人や団体への寄付金の中でも、「広く一般に募集されること」「教育や科学の振興・躍進、社会福祉への貢献、文化の向上等公益を増進させるための支出でかつ緊急を要するものに活用されることが確実であること」という2つの要件を満たすと認められるものとして、財務大臣が指定するものです。赤い羽根の共同募金はこれに該当する一例です。

(3)特定公益増進法人への寄付金で、その法人の主たる目的である業務に関連するもの
公共法人や公益法人等の中でも、教育や科学の振興をはじめ、文化向上、社会福祉への貢献等、公益を著しく増進させるものとして定められた法人への寄付金で、そのなかでも、その法人の主な目的における業務に関するものを指します。独立行政法人、日本赤十字社、公益社団・財団法人等の事業費や経常経費に充てられる寄付金等がこれに該当します。

(4)認定特定非営利活動法人等に対する寄付金で、特定非営利活動に係る事業に関連するもの
認定NPO法人または特例認定NPO法人に対する寄付金で、特定非営利活動に係る事業(特定非営利活動促進に定められた20種類の分野に該当する活動で、その法人の定款に定められたもの)に関連する事業費や経常経費に充てられる寄付金等がこれに該当します。

(5)一般の寄付金
一般の寄付金は、上記(1)〜(4)以外の寄付金となります。株式会社や任意団体、NPO法人に対する寄付金や、神社で催されるお祭りの寄進費用、債権放棄や金銭の無利息による貸し付け利息、資産の時価よりも低い価額で譲渡する低額譲渡等が一般の寄付金に該当します。

国や地方公共団体への寄付金と指定寄付金は、その全額が損金になるため、特に難しい計算は必要ありません。しかしそれ以外の寄付金は、損金算入限度額を計算する必要があります。

前述した5つの寄付金の種類のうち、(5)の一般の寄付金に該当する支出をした場合には「一般損金算入限度額」が経費として計上できる上限となり、(3)(4)に該当する公益法人等に対して寄付をした場合には、さらに別枠で「特別損金算入限度額」を経費として計上できる限度額に追加することができます。

支出した寄付金がこの限度額より少ない場合は、支出した寄付金の額が損金に算入できる金額となります。

[損金算入限度額の計算式]
■一般損金算入限度額 =(資本金等の額 × 0.25% + 所得金額 × 2.5%)×1/4
■特別損金算入限度額 =(資本金等の額 × 0.375% + 所得金額 × 6.25%)×1/2

※所得の金額は、支出した寄付金の額を損金に算入しないものとして計算します。

具体的に寄付金の損金算入額を計算する際は、下記の手順で計算することになります。

①会社の財務状況から資本金基準額と所得基準額を求める
②資本金基準額と所得基準額から損金算入限度額を求める
③寄付した金額のうちいくらまでを損金算入できるのか判定する

寄付金を支出する時点で、その年の所得金額を把握できるとは考えにくいので、算入限度額を意識して、その年の寄付金額を決めることはないと思います。しかし、寄付先がNPO法人か認定NPO法人かで、あるいは一般社団・財団法人か公益社団・財団法人かで、経費に入れられる金額が変わることは知っておくといいでしょう。

著者

ファンドレイジングアドバイザー宮本 聡

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科卒業。1972年静岡県(西伊豆)生まれ。
鉄道会社、地域金融機関、不動産仲介会社、外資系金融経済情報会社、中間支援NPO、マンションディベロッパー、クラウドファンディング運営会社など、様々な業種での勤務経験を持つ営業コンサルタント/ファンドレイジングアドバイザー。主に中小企業やNPO/NGOの経営や営業の支援を行うコンサルタントとして活動する傍ら、海外不動産の販売やファイナンシャルプランナーとして事業承継や資産活用の助言も行う。
<保有資格>経営管理修士(MBA)、認定ファンドレイザー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、一種証券外務員、等々。