100年企業の約9割を占める 日本の「ファミリービジネス」とは
〜中小企業経営者のための注目の経営トピックス[第17回]

戦争や自然災害、バブル崩壊などの金融危機を乗り越えてきた日本の長寿企業の経営手法に、ヒントを求める海外企業は数知れません。そして、日本の100年企業のうち9割以上が「ファミリービジネス」である点も注目に値します。

メディアでも注目されている企業経営に関するトピックスを解説する本連載。今回は、ファミリービジネスならではの強みを分析するとともに、中小企業における同族経営の成否を分けるポイント、今後のファミリービジネスの在り方を考えます。

ファミリービジネスとは

ファミリービジネスとは特定の家族や家系が株式や経営を掌握している企業のことを指し、「同族経営」と同義語です。

終身雇用制度が瓦解した近年の日本では、個人のキャリアアップが重視されるようになっています。自己実現のための転職や起業、副業が一般化し、働き方が多様化する中、「血縁」という濃い人間関係を基盤とするファミリービジネスは、閉鎖的なイメージで捉えられ、敬遠されることもあります。

しかし実際には、日本企業の90%以上がファミリービジネスです。トヨタ自動車やパナソニック、サントリーなど錚々たる大企業も、ファミリービジネスで今日の地位を築きました。またアメリカにおいても、ファミリービジネスの形態を採る企業が80%以上を占めています。先進国においても、国の経済を支える存在なのです。

世界の注目を集める日本の長寿企業

日本企業の90%以上がファミリービジネスであることはすでに述べた通りですが、もう1つの特色は、日本が「長寿企業大国」であることです。

日経BPコンサルティング・周年事業ラボは2020年に「創業年数が100年以上、200年以上の企業数が最も多い国は日本」という調査結果を発表しました。国内の100年企業総数は3万3,076社で、2位のアメリカ(約2万社)、3位のスウェーデン(約1万4,000社)を大きく引き離しています。さらに200年企業となると、日本には1,340社が存続しており、これは世界全体の65%を占める割合です。

100年という長い歳月の間には、二度の世界大戦を含む複数の戦争がありました。また日本は地震をはじめとする大規模な自然災害や、バブル崩壊などの金融危機も経験しています。こうした苦境を乗り越え、なお経営を続ける日本の長寿企業には、世界からも熱い注目が集まっているのです。

ファミリービジネスのメリット・デメリット

それでは以下に、ファミリービジネスのメリット・デメリットを見ていきましょう。

【ファミリービジネスのメリット】

・時代の変化に即した変革を素早く実行できる
ファミリービジネスの経営者はサラリーマン経営者とは異なり、自身が多くの株式を保有しているため、経営の決定権があり、時代の変化に即した変革を素早く実行できます。

・長期的な視点に立って経営を行える
短期的な成果を望む株主に経営を左右されやすい上場企業や非ファミリー企業とは違い、資産を子の代、孫の代まで引き継ぐために、超長期的な戦略を採ることが可能です。

・計画的に後継者を育成できる
ファミリービジネスでは多くの場合、早くから後継者が決まっています。子を若いうちに後継者として要職に抜擢し、先代が育成・サポートできる点は大きなメリットと言えます。

【ファミリービジネスのデメリット】

・前時代的な経営に陥りやすい
経営陣のほとんどが一族で固められている場合、社外取締役や監査役など、客観的に経営の誤りを忠告してくれる人物が入り込む余地がなく、ビジネスが時代の流れに取り残されていても、それを修正し、適応することが困難になります。

・企業の私物化が発生しやすい
所有と経営が一体となっているケースが多いことから、「ワンマン経営者」が誕生しやすく、ひいては企業の私物化につながりやすいことはデメリットです。

・後継者争いが深刻化しやすい
次世代の経営者について現経営者が明確な指針を示しておかないと、後継者争いが深刻化し、企業の運営に悪影響を及ぼします。

上記のようにファミリービジネスは結束が固く、事業継続に対する同族の献身的な貢献が、持続的な成長を支えます。また専門技術の承継をムーズに進め、業界内に確固たる地位を築く企業も数多いようです。

しかし「経営」と「所有」が同族に集中するファミリービジネスは、同族以外のスタッフにとっては不満が募りやすい環境でもあります。また同族間の確執が周囲に波及し、経営そのものに悪影響が及んでしまう危険も否定できません。

ファミリービジネスにおける中小企業ならではの問題

日本企業の99%以上が中小企業であることから、中小企業ならではのリスクについても見ていきます。

大企業の場合、例え同族経営であっても「スタッフ間の格差」や「ガバナンスの欠如」といった問題に対しては多くの株主や社外取締役、監査役が目を光らせていますから、慎重な対策が講じられています。

一方、そうした機能を持たない同族経営の中小企業では、「創業者や経営陣の独断が窮地を招きやすい」「同族で固められたスタッフが入れ替わらず、事業が停滞する、風通しが悪くなる」などのリスクが、大企業に比べて大きくなります。

圧倒的に数の多い中小企業こそ、健全なファミリービジネスを展開するために意識を高めていかなくてはならないのです。

【中小企業向け】これからのファミリービジネスの在り方

「中小×ファミリービジネス」という特徴を併せ持つ企業は、国内に数多く存在しています。その中で100年企業として生き残るために、経営者は同族経営の在り方について、真剣に考えなくてはなりません。

ファミリービジネスを成功させていくためには、先述のメリットを最大限に発揮させ、デメリットを抑止する必要があります。以下、その具体的な方法を見ていきます。

外部の声に耳を傾ける

ファミリービジネスの中小企業には「経営者の在任期間が長い」という特徴があります。そして、このような体制下においては「経営者の意思や同族間の暗黙の了解で物事が進む」いう問題が発生しやすくなるものです。

これを避けるためには、経営者自らが従業員や外部の専門家の意見を聞く機会を設けるなど、経営陣以外の意見を取り入れて風通しを良くする仕組みを導入するとよいでしょう。経営者は独断に走ることがないよう、柔軟な姿勢を持つことが必要です。

公私混同を避ける

有名な同族経営企業が不祥事を起こすと、「閉鎖的で風通しが悪い環境」に原因を求めるようなネガティブな報道が相次いでなされます。経営者は「自社が何のために存在しているのか、社会の役に立っているのか」と真摯に向き合い、経営が内向きに偏っていないかを常に確認する必要があります。ときには現場スタッフと忌憚なく話し合い、よどみのない社風を作るために、尽力していきましょう。

同族内の信頼感を高める

中小企業庁が2016年に公表した「事業承継ガイドライン」によると、自分の代限りで廃業を予定している企業のうち12.8%が、廃業の理由として「子供に継ぐ意思がない」ことをあげています。

子供世代の「先行きの見えない中小企業の経営者にはなりたくない」という不安や不満を完全に払拭することは難しいかも知れません。しかし経営者は、「どのような思いで商品やサービスを生み出してきたのか」「どのような形で社会貢献してきたのか」など、企業の基本理念や経営者の醍醐味を、後継者候補へきちんと説明する努力を怠ってはなりません。

価値観が多様化する現代でも、仕事に対する誠実な姿勢は人の心を動かします。日々の多忙さに流され、ファミリービジネスの可能性を蔑ろにしてしまうのは、残念なことです。「同族間の信頼を高めるのは、もっとも重要な職務の1つ」と考えましょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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