創立100年以上のアメリカ老舗企業から学ぶ長寿の秘訣
〜中小企業経営者のための注目の経営トピックス[第22回]

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目次

アメリカは建国からまだ245年と、歴史の浅い国です。しかし老舗企業の数でいえば、日本に次いで世界第2位にランクインします。

メディアでも注目されている企業経営に関するトピックスを解説する本連載。今回は、アメリカ老舗企業の実態や参考にしたい経営のポイントを紹介します。

アメリカの歴史と老舗企業の実態

アメリカは強大な先進国として、世界に対して大きな影響力をもっています。

国内でさまざまな問題が紛糾し、中国の台頭という脅威に晒されているものの、現在において主要先進国の中ではほぼ唯一、人口の増加が続いています。

建国は1776年であり、イギリスからの移民によって開拓されてからまだ、300年も経過していません。欧州諸国や日本、そして3,000年以上の歴史を持つ中国などと比較すると、独自の伝統や文化遺産が少ないのは事実です。

しかしアメリカは、持ち前の開拓精神で急激な経済成長を遂げてきました。また映画や音楽といったエンターテインメントの発信力は非常に高く、現代のユースカルチャーを牽引してきた国と言っても、過言ではありません。

そんなアメリカには、100年以上の歴史を持つ老舗企業が数多く存在しています。日経BPコンサルティング・周年事業ラボが2020年に発表した調査 によると、アメリカは創業100年以上の企業数が世界で2番目に多い国であり、その数は約1万9,500社に上ります。

100年以上の歴史を持つ米国老舗企業の中にはファイザーやジョンソン・エンド・ジョンソン、そしてコカ・コーラやティファニー といった、日本でも知名度の高い企業が含まれています。

アメリカにおける老舗企業の共通点

アメリカの老舗企業の中には、1880年代から1910年代に創業した企業が多く含まれています。この時期は「第2次産業革命」にあたり、鉄鋼などの重工業、そして石油資源を利用した化学工業の技術革新が活発化しました。

この時期に創業した企業の多くは、引き続き戦後の「第3次産業革命」を牽引する存在となり、 経営を存続させていったのです。しかし近年は様々な業界で買収や吸収合併が進み、老舗企業の多くが姿を消しました。IT革命に代表される環境の変化に対応し、世界的な事業展開や経営の多角化、そして組織力の強化などを図ってきた企業が、創業100年以上の老舗企業となっているのです。

なおアメリカには日本同様、同族経営(ファミリービジネス)の企業が多く存在しています。日本は「90%以上の企業が同族経営」という高い数値を示していますが、アメリカも優良企業の35%以上が、同族経営となっているようです。

アメリカの老舗企業の事例

ではここで、アメリカの老舗企業の事例をいくつか紹介していきましょう。

デュポン(化学メーカー)

フランス系アメリカ人のエルテール・イレネー・デュポンによって、1802年に設立されました。現在は世界で4番目に大きな化学メーカーとして、確固たる地位を築いています。

2度の世界大戦中は 兵器などを供給して大きな利益を得ましたが、戦後はNASAのアポロ計画に寄与するなど、社会貢献度を高めていきます。また経営の多角化を進め、農業科学や産業用バイオサイエンスなどの分野へ進出していきました。

2015年には、やはり100年以上の歴史を持つ化学メーカー「ダウ・ケミカル・カンパニー」と対等合併し、新たなスタートを切っています。なお同社は栃木県宇都宮市に日本法人のデュポン株式会社を開設しています。

アメリカン・エキスプレス(金融)

トラベラーズ・チェックとクレジットカードの発行元として世界的な知名度を誇りますが、もともとは運送業者として1850年に創業しました。約30年後に金融業へ進出すると、 世界規模の展開を始めました。1917年には横浜に日本事務所も開設しています。

そして戦後は、クレジットカード事業にも参入し、1980年代には資産管理業務などに手を広げ、事業を多角化した時期もありました。しかし同社は2008年、リーマンショックの影響を強く受け、公的資金の注入を受けています。

その返済のため、現在は事業縮小を余儀なくされました。しかし同社のブランド力は依然として高く、またテロや自然災害などの有事が発生した際、柔軟な対応を見せる企業としても定評があります。

メイシーズ(百貨店)

米国内で著名な百貨店で、1851年創業の老舗です。マサチューセッツ州でスタートし、順調に店舗を拡大して人気を博しました。1900年代は他州のデパートを買収するなど、店舗を拡大し続けます。2000年代に入っても勢いは衰えず、全米デパート・チェーンの中でも最大の店舗数を誇っていました。

しかしいくら老舗企業でも、社会の変化にうまく対応できなければ衰退を避けられません。メイシーズも、2008年のリーマンショックを受け株価が下落しました。2010年代にはEコマースに押され、大規模なリストラと100店近い店舗の閉店を余儀なくされています。

今後同社がどのような道程を辿るのか、注目して損はないでしょう。

日本とアメリカの老舗企業の違いはどんなところ?

先述の事例を見ても分かる通り、老舗企業が辿ってきた道程は、決して平坦ではありません。これは国に関わらず言えることで、複数の戦争や自然災害 などの危機を乗り越えてきた企業だけが、長い命脈を保ち続けています。

ではアメリカと日本の老舗企業の間には、どのような違いがあるのでしょうか。2013年に明治学院大学経済学部国際経営学科の神田良氏らが発表した論文『長期存続企業経営の日米比較(アンケート調査から発見された共通性と相違性)』によると、アメリカの老舗企業には日本の老舗企業に比べ、以下のような項目を重視する傾向が見られたようです。

  1. 顧客との関係づくり
  2. ブランドのイメージ戦略
  3. 人材確保や従業員定着を図るための工夫
  4. 後継者育成体制の整備
  5. 異業種・異世代との人脈形成、地域活動への参加

対して日本の老舗企業は、どちらかというと自社商品の強みを磨くことを最優先事項とし、商品知識の社内共有の徹底を目指すと同時に、後継者には「現場での実務経験や技術習得を強く求める傾向」があることが分かりました。

日本とアメリカの間には、国の歴史や国民の精神風土に大きな違いがあります。しかし、アメリカの老舗企業が重視している上記の項目内には、近年重視されるようになったCSRやCSVの基本となる理念が多く含まれているようにも見受けられます。

100年企業を目指す日本の中小企業経営者は国内の老舗企業はもちろん、アメリカの老舗企業の在り方から経営のヒントを模索していくと良いかも知れません。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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