経営者にいまおすすめの本6冊  「事業承継」編

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目次

経営者が次世代へと事業を引き継ぐ「事業承継」は、企業の存続や成長を左右する重要な課題です。近年は中小企業経営者の高齢化が進み、後継者が見つからないことが原因で廃業に至るケースも少なくありません。そのような不測の事態を避けるためには、計画的な準備が不可欠です。今回は、事業承継への向き合い方を学べる6冊を厳選して紹介します。

事業承継は「早めのスタート」がカギ

『中小企業の「事業承継」はじめに読む本』

藤間秋男著 すばる舎 1,815円

事業承継の全体像をつかみたい経営者に向けて、押さえるべき71のテーマを平易な文章と図で解説した入門書です。著者の藤間秋男氏は、約40年にわたり事業承継をサポートしてきたコンサルタントであり、自身も経営者として事業承継を経験した当事者でもあります。

チャプター1では事業承継の意義を説明します。事業承継には、①後継者を探す ②後継者を育てる ③一緒にやる ④バトンタッチする、という4つの、それなりに時間もかかるステップが必要です。しかし2018年のデータによると、日本の中小企業経営者の最多年齢は69歳であり、一方で日本人男性の健康寿命は約70歳。こうした実態に対し、事業承継は健康なうちにできるだけ早く着手する必要がある、と著者は警告します。

チャプター2は事業を引き継ぐための準備を取り上げ、チャプター3では親族内・親族外承継を含む後継者選びについて解説します。さらに後継者選定後のポイントとして、チャプター4で引き継ぎに関する注意点を、チャプター5では事業承継においてもっとも重要な「経営理念を引き継ぐこと」について説明します。

多くの100年企業には、明確な経営理念が大切に受け継がれています。もし理念が明文化されていない場合は、事業承継のタイミングで言語化し社内に浸透させるべきだと著者は説き、そのための方法も紹介します。

事業承継は「引き継いで終わり」ではなく、その後のフォローも欠かせません。そこでチャプター6では承継後のアフターフォローのコツを解説します。

チャプター7では、老舗和菓子店「株式会社虎屋」、日本酒や地ビールの蔵元「石川酒造株式会社」、のど薬で知られる「株式会社龍角散」など、日本を代表する老舗企業の成功事例を紹介します。

本書の締めくくりであるチャプター8には、これから事業承継に向き合う経営者と後継者に向けた10個のヒントを掲載。「これからは成長よりも継続を目指す」「会社の欠陥は裏返せば宝になる」「社長の考え方次第で会社の業績が変わる」など、100年企業をつくるための有益なアドバイスが並びます。

事業承継は「何のため?」という確認から始める

『親族内・親族外承継からM&Aまで 中小企業の事業承継大全』

鈴木智博著 日本実業出版社 1,980円

「何のための事業承継なのか」という根本的な問いを出発点に、中小企業の事業承継において必要な実務知識を網羅的に解説した1冊です。著者の鈴木智博氏は、親族内外承継支援とM&A支援を行うコンサルタントで、自身も倒産寸前の会社を2社引き継ぎ、再生させた経験があります。

第1章では「事業承継を考える前に」という観点から、事業承継とはそもそも何か、どのタイミングで検討すべきかを説明します。さらに、一般的な事業承継の流れ、分散している株式の集約方法、後継者に求められる経営者としてのスキルについても触れます。

第2章では、事業承継の中でも事例が多い「親族内承継」を取り上げます。バトンタッチ後のパフォーマンスを高めるための後継者教育や、事業承継計画の策定、相続対策についても深掘りします。

第3章では、近年事例が増えている「親族外承継」を円滑に進めるためのポイントを紹介します。親族外承継は、血縁関係によらない役員・社員を登用する「内部昇格」と、社外から経験豊富な人材を後継者として迎える「外部招聘」があり、それぞれのメリットやプロセスなどをわかりやすく説明します。

第4章では「第三者承継」をテーマに、事業承継型M&Aを解説します。この最大の目的は廃業回避と雇用維持であり、「希望の相手が見つかるかどうか」が成否に直結します。事業承継型M&Aには、①株式譲渡、②事業譲渡、③会社分割+株式譲渡の3パターンがあります。これらのメリットとデメリットを整理したうえで、交渉から実行までの手法を詳説します。また、あくまで参考として、廃業に至った場合の流れや注意点についても触れます。

各章には実例や解説コラムも添えられ、当事者の心情をくむリアルな事業承継の流れがイメージしやすい構成になっています。

最後に、著者は「日々、現場の仕事で忙しい中小企業の経営者にとって、事業承継は第一歩を踏み出すこと自体が案外と高いハードルなのでは」と前置きしたうえで、事業承継の本質は「会社の未来を考えること」であると述べます。ゆえに、事業承継を契機として、会社の成長につなげてほしいと締めくくります。

事業承継こそが社長の最大のプロジェクト

『社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます』

島田直行著 プレジデント社 1,760円 

中小企業経営者を長年サポートしてきた弁護士の島田直行氏が、経営者と後継者に向けて、事業承継に挑む際の心構えを説いた1冊です。

島田氏は、事業承継こそがオーナー社長にとっての最大の事業であるとし、企業の繁栄と衰退の分岐点は「いかに真摯に事業承継に向き合うことができるか」に尽きると断言します。

本書の特徴は、事業承継で実際に起こりうるケースを、当事者(経営者・承継候補者など)の心理にまで踏み込んで深く考察している点にあります。

例えば、ある老舗メーカーでは、社長の座をなかなか明け渡さない現社長と、後継者で専務の長男が経営方針をめぐって対立し、最終的に長男が退社して絶縁状態に陥りました。事業承継とは、単に事業を維持するだけではなく、家族の平穏を守ることでもある、と著者は強調します。

後継者は「会社を譲ってもらえる恵まれた者」と見られがちですが、現実には事業が順調とも限らず、多くの困難や重圧を抱えるかもしれない立場でもあります。そこで本書は、後継者選びの注意点や、後継者が経営しやすい環境づくりのプロセス、自社株の譲渡方法、事業承継を前提にしたM&Aなど、事業承継後も会社が成長していくための具体的な対策を紹介します。

加えて、社長退任後に直面しうる「介護・認知症問題」や「老後の生活資金の確保」といった現実的な課題にも触れています。「生涯現役」と豪語する人物であっても認知症などの病にかかる可能性はあり、先代が自社株の大半を保有したまま判断能力を失う事態も想定されます。元気なうちに高齢者施設への入所の検討や介護者への経済的配慮などを設計しておくことも、事業承継のタイミングで備えるべき重要な要素です。

さらに本書では、「事業と家族を守るための仕組みづくり」としての相続対策を提案します。相続で親族間の対立が生まれる背景を感情的な側面から解説したうえで、会社と個人の資産を戦略的に切り分ける方法や、遺言の作成についても言及します。

著者は事業承継を「経営者のロマンを形にした1本の映画のようなもの」と表現し、本書はその“シナリオの書き方”を示すものであると述べます。そして、映画のクライマックスをいかに演出するかは読者に委ねられているのだ、と語りかけます。

『銀行の提案を鵜呑みにしない 事業承継の疑問』

川原大典著 幻冬舎 1,760円

20年以上にわたって相続・事業承継と節税を支援してきた著者が、銀行から提案されることの多い事業承継プランの落とし穴を解説。ホールディングス設立、不動産活用、保険を使った相続税対策など、典型的な提案のメリット・デメリットを具体的な数字を交えて多角的に分析し、最適な選択をするための正しい知識を示す。

『16訂版/図解&イラスト 中小企業の事業承継』

牧口晴一、 齋藤孝一著 清文社 3,850円

事業承継は、民法・会社法・税法など複数の法律が複雑に絡み合う総合的な問題である。本書では、事業承継の引き受け先として「親族」「従業員」「M&A」「一般社団法人」を挙げ、相続、贈与、譲渡、信託といった承継方法を具体的な実例とともに立体的に解説。最新の法改正やトレンドも踏まえており、中小企業の事業承継を総合的に学べる1冊。

『親族内・従業員への事業承継を考えたときに読む本』

篠田賢一著 セルバ出版 2,200円

事業承継の成否を分けるのは、社長の思いが明確に言語化されているかどうかに尽きる。約20年間、中小企業の支援に携わってきた著者が、社長の思いを言葉にするためのワークや、事業承継の「いつ」「何を」「誰がするか」という具体的なプロセスについて、実務のチェックリストや実例を用いて解説する。

[編集]一般社団法人100年企業戦略研究所
[企画・制作協力]東洋経済新報社ブランドスタジオ

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