100年企業レポート vol.19 青森編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

1.青森県の100年企業に関する分析

本州の最北端に位置する青森県。県の中央に位置する奥羽山脈が東西を分断しているため、東西で気候は大きく異なる。例えば冬になると、日本海側では湿った空気が奥羽山脈にぶつかり雪を降らせる一方、太平洋側は乾燥して雪が降らないのである。このような東西の違いは、気候だけでなく農産物や方言、文化にも及ぶため、地域ごとに多様な文化が築かれている。

青森県の100年企業数は、332社であり、全国41位である。

青森県の特産品といえば、りんごを思い浮かべる方も多いことだろう。青森県のりんご栽培は全国一の栽培面積を誇り、収穫量も全国の57%を占めている。まさに日本一のりんご王国なのである。そのほかにも様々な農産物が作られており、長芋やにんにく、ごぼうは全国1位の生産量を誇る。米の生産や畜産業、漁業など自然豊かな環境を生かした第1次産業が盛んである。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、青森県の特性を分析した。

県外への転出者が多く、
働き世代や働き先を含む6指標全て平均を下回る

本州最北端に位置する青森県は、47都道府県の中で8番目に広く、豊かな自然環境が広がっている。りんごが有名な日本有数の農業産出県であり、食料自給率は全国トップクラスであるが、指標を見ると6指標全て平均を下回っている。青森県では県外への転出者が多いため、若年層の県内定着を促進するために雇用の創出や拡大、移住者の受入れも積極的に行っている。また主力である農業や漁業などの第1次産業だけでなく、エネルギー産業を始めとする新たな分野へ進出し、働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)の改善を図っている。

2.青森県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比55.3%であった。次いで『明治前期』の25.6%、『江戸時代』、『大正以降』の9.6%の順である。
青森県には、津軽藩の時代から続く蔵元が多く、北国ならではの酒造りの技術が現在も受け継がれている。また羽州街道の宿場町や青森港が商港として栄えたことにより、多くの物資や人が行き交うようになった。そのため日用品を中心とした小売業が盛んである。

②創業年TOP5

青森県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の株式会社旅館柳の湯は、全国で499位となっている。

③市町村別は『青森市』が最多

市町村別100年企業数では青森市が65社で最多であった。
1位の青森市では、『一般製材業』、『米穀類小売業』、『貸事務所業』の3業種がそれぞれ3社で最も多い。
2位の弘前市は、100年企業数50社であり、業種別に見ると『他に分類されないその他の小売業』が5社と最も多く、次いで『清酒製造業』が4社、『めん類製造業』、『米穀類小売業』、『燃料小売業』の3業種がそれぞれ2社の順である。
3位の八戸市は、100年企業数46社であり、業種別に見ると『酒小売業』が3社と最も多く、次いで『鉄骨工事業』、『その他の水産食料品製造業』、『貸事務所業』の3業種がそれぞれ2社である。

④産業は『卸売・小売業、飲食店』が最多

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が193社(構成比58.1%)と最も多かった。次いで、『製造業』60社(同18.1%)、『サービス業』41社(同12.3%)の順である。
江戸時代に城下町として栄えた八戸市は、戦後には工業地帯の中心地として整備され、火力発電所や非鉄金属工業などの工場が進出した。また近年は、環境・エネルギー関連産業や農工ベストミックス関連産業など県の特性を活かした産業の構築にも積極的に取り組んでいる。
ちなみに、りんごが有名な青森県であるが、農業は5件とあまり多くなかった。

⑤業種は『酒小売』が最多

業種別では、『酒小売』が13社で最多であり、『清酒製造』も4位に入っている。酒造りで最も重要な米、酵母、水の3拍子がそろっている環境で生み出された青森の日本酒は、全国的にも高い評価を受けている。また、古くから受け継がれてきた伝統の製法・伝統の技術により、さまざまな蔵元が独自の味を作り出しているのも特徴である。
2位は『菓子製造小売』が12社であった。青森県には古くからの郷土菓子が存在するが、地域の特産物を材料に用いた菓子というわけではない。餅菓子は、土産品として携帯性や保存性に優れていたため、弁当の代用にみなされていた。軍人の間食用として納品されたものもあったとされている。また、炎暑で腐敗や味が劣化しないよう梅干菓子は工夫を施された。このように青森の郷土菓子には歴史や風土が大きく関わっているのである。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比46.5%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が20.8%、『5千万円以上~1億円未満』が4.9%の順である。
資本金トップは株式会社青森銀行(業種:普通銀行)が195億円。以下、株式会社東奥日報社(業種:新聞業)が1.8億円の順であった。
上位10社のうち建設業と製造業が各3社で最も多かった。

⑦従業員数は『10人未満』が6割

従業員別では、『4人以下』が構成比41.3%と最も多かった。次いで、『10~49人』が29.2%、『5~9人』が18.8%の順である。10人未満で6割を超える。
青森県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社青森銀行は従業員1,000人を超え、丸大堀内株式会社は従業員500人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が5割超え

売上高別では、『1億円未満』が構成比52.1%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が35.1%、『10億円以上~100億円未満』が11.1%の順である。
売上高上位10社のうち、卸売・小売業が5社と最も多く、次いで製造業が2社であった。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は10社

青森県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は18社であり、構成比では全国21位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は10社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは、産業別で見ると卸売・小売業が8社であり、ほとんどが卸売・小売業という状況である。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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