100年企業レポート vol.40 神奈川編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

神奈川県の100年企業に関する分析

神奈川の街並み

東京都に次いで首都圏の中核を担っている神奈川県。港町で知られる「横浜」や幕府を開いた地である「鎌倉」などの歴史ある観光地のほか、北部には多数の登山スポット、南部には日本百景に選ばれている「江ノ島」、夏にはビーチで賑わう「湘南」など、山や海にも囲まれ自然豊かで理想的な環境である上、都内からのアクセスがよいため居住地としても人気が高い。また、工業も非常に盛んで平成30年の製造品出荷額は愛知県に次ぐ全国第2位という実績も持つ。

神奈川県の100年企業数は、902社であり、全国11位である。

日本は高齢者人口が世界最高で、その中でも神奈川県は高度経済成長期に転入した世代の高齢化などにより、特に高齢化のスピードが速い県とされているため、医療や介護等の現在の社会システムを今後も維持していけるかが課題となっている。 神奈川県では今、「未病の改善」と「最先端医療・最新技術の追求」の2つを柱とする「ヘルスケア・ニューフロンティア」というユニークな政策が進み、誰もが健康で長生きできる社会を目指している。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、神奈川県の特性を分析した。

生産年齢人口は全国2位
アクセスがよく人気が高いため、商業地平均価格も高い

神奈川県は江戸時代の終わりに横浜が開港して以来、貿易会社や海運会社、倉庫会社などが多く拠点を構え、東京に次ぐ関東の主要都市として発展してきた。生産年齢人口は全国2位であり、事業所数も三大都市圏に次いで第4位である。
都心へのアクセスがよくビジネスエリアや商業地として人気が高いため、商業地平均価格も高くなっている。エリアによっては住宅地の地価も高く、高所得世帯も多いことから『相続税課税割合』が高くなっている。

2.神奈川県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比43.1%であった。次いで『大正以降』の28.7%、『明治前期』の21.5%、『江戸時代』の6.6%の順である。
人気の観光地である箱根温泉の始まりは奈良時代とされている。江戸時代に庶民に温泉が広まると、多くの湯治客が箱根に訪れるようになった。その頃に多くの宿屋ができたのである。また、小田原の蒲鉾が有名な『水産練製品』は、魚の保存利用として誕生したのがきっかけで、交通が不便で新鮮な魚の供給が困難であった箱根にも運ばれたのである。

②創業年TOP5

神奈川県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の株式会社鮑屋は、全国で95位となっている。

③市町村別は『横浜市』が最多

市町村別100年企業数では横浜市が372社で最多であった。
1位の横浜市では、『貸事務所業』が13社と最も多く、次いで『酒小売業』が11社である。
2位の小田原市は、100年企業数84社であり、業種別に見ると『水産練製品製造業』、『野菜漬物製造業』の2業種がそれぞれ5社と最も多く、次いで『他に分類されないその他の卸売業』が4社である。
3位の川崎市は、100年企業数80社であり、業種別に見ると『生菓子製造業』、『酒小売業』の2業種がそれぞれ4社と最も多く、次いで『建築工事業』、『金物卸売業』の2業種がそれぞれ3社である。

④産業は『不動産業』と『サービス業』が全国5位

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が414社(構成比45.9%)と最も多かった。次いで、『製造業』146社(同16.2%)、『建設業』140社(同15.5%)の順である。
不動産業とサービス業が全国5位である。横浜市や川崎市に広がる京浜工業地帯に代表される製造業や、湘南・鎌倉地域や箱根・湯河原を中心とする観光業が盛んであり、性質の異なる産業が混在しているのも神奈川県の特徴である。

⑤業種は『貸事務所業』が最多

業種別では、『貸事務所業』が36社で最多であった。本業が好調時に不動産を取得し、その後本業が縮小したケースがほとんどである。『貸事務所業』は東京をはじめとする大都市で多い傾向がある。
2位は『木造建築工事業』、3位は『土木工事業』と建設業が続く。明治時代の横浜の開港以降、市街化の進展にともない鉄道、電信、電気が整備された。外国人が居住する外国人居留地、日本人商人が店を構える日本人町がつくられ、市街地として整備されたのである。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比48.6%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が24.9%、『5千万円以上~1億円未満』が7.2%の順である。
資本金トップは日産自動車株式会社(業種:自動車製造業)が6,058億円。以下、国立大学法人横浜国立大学(業種:大学)が974億円、相鉄ホールディングス株式会社(業種:純粋持株会社)が100億円の順であった。
上位10社のうち製造業が6社である。

⑦従業員数は『10人未満』が5割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比36.4%と最も多かった。次いで、『10~49人』が24.0%、『5~9人』が20.9%の順である。10人未満で5割を超える。
神奈川県の100年企業の多くは小規模企業であるが、従業員20,000人を超える日産自動車株式会社を含め、従業員1,000人を超える企業は11社である。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比39.8%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が37.5%、『10億円以上~100億円未満』が16.8%の順である。
売上高上位10社のうち製造業が7社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は29社

神奈川県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は88社であり、構成比では全国2位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は29社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせで多いのは、『酒類卸売業』が4社と最も多く、次いで『家具小売業』・『酒小売業』・『他に分類されないその他の卸売業』・『日本料理店』がそれぞれ2社の順である。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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