100年企業レポート vol.14 茨城編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

1.茨城県の100年企業に関する分析

関東地方の北東に位置する茨城県は、総面積の65%となる3,976㎢が可住地面積となっており、他県と比べて平野部が多いという特徴がある。また、県内には利根川や鬼怒川など複数の河川が流れている。こうした土地や水に恵まれた環境により、農業が発展したのである。茨城県では多くの農作物を生産しているが、中でも蓮根やチンゲン菜、白菜などは収穫量日本一として知られている。

茨城県の100年企業数は、709社であり、全国16位である。

江戸時代になり、政治や経済の中心地が江戸に遷ったことにより、江戸に近い茨城県は交通の要所として発展するなど、地方都市として繁栄した。そして、昭和30年代になり工業化が進むと、工場誘致に力を入れたのである。現在、鹿島港を中心とした工業地帯には、プラスチック製品や金属製品などの製造工場が数多く立地している。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、茨城県の特性を分析した。

企業立地の優位性が、
労働人口と事業所数を押し上げる

茨城県は日立・鹿島の工業地域、つくばの科学技術研究施設といった経済基盤があり、働き世代(生産年齢人口数)や働き先(事業所数)は多い。積極的に企業誘致を行っており、平成30年工場立地動向調査によると、工場立地面積と県外企業の立地件数が全国1位であった。つくばエクスプレスや茨城空港、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)などの交通網の整備が進んだことも、立地増加の要因となった。また、首都圏へのアクセスが良い割には地価が安いことや優遇制度の充実も茨城県の立地優位性を押し上げていると言える。

2.茨城県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比44.8%であった。次いで『大正以降』の22.0%、『明治前期』の21.3%、『江戸時代』の11.4%の順である。
奈良時代に編さんされた「常陸国風土記」の中で、茨城県は「常世の国」と称されている。豊かな自然に恵まれ、人々の生活が安定していたと書かれているのである。肥料や農業機械などの農業関連や水産食料品といった水産業関連の業種が多いことから、昔から農林水産業が盛んであったことがうかがえる。

②創業年TOP5

茨城県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の須藤本家株式会社は、全国で14位となっている。

③市町村別は『水戸市』が最多

市町村別100年企業数では水戸市が101社で最多であった。
1位の水戸市は、『建築工事業』や『生菓子製造業』を含めた8業種がそれぞれ3社と最も多い。
2位のひたちなか市は、100年企業数39社であり、業種別に見ると『その他の水産食料品製造業』が6社と最も多く、次いで『乾物卸売業』が3社である。
3位の古河市は、100年企業数38社であり、業種別に見ると『呉服・服地小売業』が4社と最も多く、次いで『木造建築工事業』、『オフセット印刷業』、『ポンプ・同装置製造業』、『茶類卸売業』、『婦人服小売業』の5業種がそれぞれ2社である。

④産業は第2次産業が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が377社(構成比53.2%)と最も多かった。次いで、『製造業』169社(同23.8%)、『建設業』87社(同12.3%)の順である。
茨城県は建設業や製造業などの第2次産業の比率が高く、北関東3県では一番多い。平成29年の製造品出荷額等は全国7位であった。出荷が多かったのは、化学製品(神栖市)や非鉄金属・電気機械(日立市)などである。
農業が盛んな茨城県であるが、100年企業数は3件と少なかった。

⑤業種は『清酒製造業』が最多

業種別では、『清酒製造』が25社で最多であった。茨城県には久慈川水系、那珂川水系、筑波山水系、鬼怒川水系、利根川水系と豊かな5つの水系があり、その恵まれた環境ゆえに、古くから酒造りが盛んに行われてきた。『清酒製造』25社は関東地方では最多を誇る。
2位は『ガソリンスタンド』が22社であった。もともとガソリンスタンドだったわけではなく、時代と市場環境の変化に対応していったと考えられる。一人当たりの自動車保有台数が全国的にも高い茨城県の需要に合わせて業態変化していったのではないだろうか。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比49.5%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が28.3%、『5千万円以上~1億円未満』が3.5%の順である。
資本金トップは国立研究開発法人森林研究・整備機構(業種:理学研究所)が7,909億円。以下、国立大学法人筑波大学(業種:大学)が2,313億円、結城信用金庫(業種:信用金庫)が19億円の順であった。
上位10社のうち製造業が5社、卸売・小売業が2社である。

⑦従業員数は『10人未満』が6割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比46.2%と最も多かった。次いで、『10~49人』が25.5%、『5~9人』が21.7%の順である。10人未満で6割を超える。
茨城県の100年企業の多くは小規模企業であるが、国立大学法人筑波大学、国立研究開発法人森林研究・整備機構の2社は従業員1,000人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比48.2%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が39.3%、『10億円以上~100億円未満』が10.9%の順である。
売上高上位10社のうち卸売・小売業が4社、製造業が3社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は5社

茨城県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は21社であり、構成比では全国39位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は5社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは卸売・小売業が3社、製造業が2社であり、本業以外に貸事務所業を行っている企業は少ない。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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