100年企業レポート vol.48 沖縄編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

沖縄県の100年企業に関する分析

沖縄の街並み

戦中戦後ともに怒涛の時代を生きてきた沖縄は今も多くの問題をかかえているが、窮地の中を耐え抜いた沖縄県民は明るく楽天的で、ゆったりとした性格の方が多いといわれている。また同じ始祖をもつ父系の血縁集団を「門中」といい、一族間の結びつき・連帯意識はとても強い。有名なのは一族団結の象徴として建てられる共同墓の「門中墓」。その中でも、糸満市にある「幸地腹・赤比儀腹両門中墓」は県内最大級の規模を持ち、観光地にもなっている。

沖縄県の100年企業数は、21社であり、全国47位である。

「琉球王国」と呼ばれ、海洋国家であった沖縄は南方の気質が残る土地柄であり、アジア各国と日本の双方の影響を受け、歴史と独自の文化を築いてきた。王国であった沖縄には多くの城(沖縄の方言で「グスク」)や遺跡が残されている。首里城をはじめ「琉球王国のグスクおよび関連遺産群」として世界遺産登録されたスポットが全部で9カ所あり、琉球王国時代の城跡や斎場御嶽など、沖縄の古代ロマンを感じることができる。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、沖縄県の特性を分析した。

『100年企業輩出率』は全国で最も低いが
外国人観光客の増加により『商業地平均価格』が上昇

沖縄県は日本でも有数のリゾート地であり、異国情緒溢れる観光施設や重要遺産には多くの観光客が訪れている。しかし、第二次世界大戦の甚大な被害により、多くの企業が失われたため『100年企業輩出率』は全国で最も低い。『生産年齢人口数』は平均を下回るが、人口は増加傾向にあり、人口増加率(平成29年10月1日現在)は全国第2位、唯一自然増加をしている県である。また、外国人観光客が増加したため、『商業地平均価格』は近年上昇を続けている。

2.沖縄県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』と『大正以降』の構成比30.0%であった。次いで『江戸時代』と『明治前期』の20.0%の順である。
琉球王朝時代に限られた地域でのみ製造を許されていた泡盛は、40の焼酎職により造られていた。江戸時代には幕府への献上品に使われるなど貴重なお酒であった。明治時代、免許制により民間でも泡盛が造られるようになると、酒屋の数は増えた。後に太平洋戦争などの影響で消滅の危機もあったが、見事に復活し、現在も受け継がれている。

②創業年TOP5

沖縄県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の新里酒造株式会社は、全国で1966位となっている。

③市町村別は『那覇市』が最多

市町村別100年企業数では那覇市が10社で最多であった。
1位の那覇市では、『蒸留酒・混成酒製造業』が4社と最も多く、あとは異なる業種が各1社ずつという状況である。
2位の沖縄市は、100年企業数2社であり、業種別に見ると『蒸留酒・混成酒製造業』と『木材・竹材卸売業』の2業種がそれぞれ1社ずつである。
その他の市町村は、各1社ずつであり100年企業数は少ない状況である。

④産業は第3次産業が盛ん

産業別では、『製造業』が15社(構成比71.4%)と最も多かった。次いで、『卸売・小売業,飲食店』4社(同19.0%)、『サービス業』2社(同9.5%)の順である。
沖縄県の100年企業は泡盛製造が半分を占めているため、100年企業においては製造業の割合が高い。しかし産業全体を見ると、観光業をはじめとする第3次産業の割合が高い。地域の特色を生かした産業振興に力を入れており、海外の観光客増大に向けた誘客活動の推進なども行っている。

⑤業種は『蒸留酒・混成酒製造』が最多

業種別では『蒸留酒・混成酒製造』が10社で最多であった。沖縄のお酒といえば泡盛が有名であるが、その歴史は古い。琉球王朝時代、鳥堀・赤田・崎山の首里三箇と呼ばれる3地域のみ泡盛の製造を許されていた。王府から任命された「焼酎職」は、醸造の失敗や横流しが発覚すると醸造機具の没収や島流しを受け、また焼酎職以外が泡盛密造すると死罪になる場合もあった。このような非常に厳しい管理体制で行われていた。やがて、江戸幕府への献上品や、薬用酒としても重宝されるようになったのである。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比45.0%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が25.0%、『5千万円以上~1億円未満』が10.0%の順である。
資本金トップは株式会社琉球新報社(業種:新聞業)が1.9億円。以下、瑞穂酒造株式会社(業種:蒸留酒・混成酒製造業)が7千万円、株式会社金城キク商会(業種:セメント卸売業)が6.1千万円の順であった。
上位10社のうち製造業が6社である。

⑦従業員数は『10人未満』が6割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比45.0%と最も多かった。次いで、『10~49人』が25.0%、『5~9人』が20.0%の順である。10人未満で6割を超える。
沖縄県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社琉球新報社は従業員200人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比65.0%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が20.0%、『10億円以上~100億円未満』が15.0%の順である。
売上高上位10社のうち製造業が8社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は0社

沖縄県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は0社であり、構成比では全国47位となっている。
貸事務所業を行っている企業はない。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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