世界とは異なる都市計画で東京の魅力は進化し続ける

鉄道・道路などの交通網整備とともに、さまざまなエリアで絶えず都市を再開発してきたことで、東京は大きな発展を遂げました。欧米先進国の大都市と比較したときに、その優位性が光るいっぽう、さらなる進化と成長を目指すためには課題もあります。都市政策の専門家である青山 佾氏のお話から、東京の都市としての魅力と課題に迫ります。

鉄道網の発展により世界でもまれな大都市圏に成長

東京はこれまで、国際金融都市を目指しロンドン、ニューヨークと競争してきました。地理的に見ても、ロンドンやニューヨークに太刀打ちできる日本の都市は、広大な関東平野に位置する東京しかありません。

その関東平野において東京大都市圏と呼ばれるのは東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県です。その周囲には直径100 kmの圏央道が走り、経済圏として人や物、情報が日常的に流れています。圏央道は現在、9割完成していますが、その沿道には大規模な物流拠点が300カ所もあり、東京圏への供給を支えています。

この50年、ニューヨークやロンドンは鉄道よりも道路の整備を優先してきた時代でした。それに対して東京は、広域都市間の高速道路や放射状の道路だけでなく、武蔵野線や環状方向の地下鉄など鉄道網も整備してきました。東京大都市圏は、他の都市とは異なる都市計画を行ってきた結果、ニューヨーク大都市圏、ロンドン大都市圏を上回るGDPを誇るようになりました。

歩行者の視点で進む東京の都市開発

もう一つ東京の都市計画の強みは、単なるビルの建て替えではなく面開発を行ってきたことです。現在は異なるデベロッパー同士が、互いにデッキや地下道、地下鉄でつながっていく時代に変化しています。

その典型が六本木の「アークヒルズ 仙石山森タワー」です。2012年に竣工した当時、「『サントリーホール』などが入るアークヒルズとは数百メートルも離れているのに」と、その名称を不思議に思う人も多かったことでしょう。今日では南北線の六本木一丁目駅や住友不動産のビルと一体化しており、それらを通じてアークヒルズに直結していることがわかります。歩行者動線で言うと、仙石山森タワーからアークヒルズの森タワーまで、泉ガーデンタワーなどほかのビルを経由して歩いて行けるのです。このように、異なるデベロッパーによる都市開発が今は面と面がつながっており、専門用語でいうところの「都市軸」を形成し始めています。

汐留の再開発も同様に、新橋駅から浜松町駅までデッキと地下道でつながっています。2020年に完成した竹芝の東京都立産業貿易センタービル浜松町館の3階レベルにはデッキがかかっていますが、浜松町駅北側の世界貿易センタービルの建て替え(2024年竣工予定)が終わったとき、駅をまたいでつなぐ計画になっているからです。

このように主要な場所を徒歩で行き来できる利便性は、世界には見られないものです。東京の都市計画はニューヨークやロンドンとは違い、車ではなく歩行者動線で進められており、その点で異業種異分野の人の交流がビジネスチャンスを生む時代に優位性を発揮しています。

東京に欠けている文化・スポーツ施設

都市政策的に見ると、東京の20世紀は新宿や渋谷、池袋、臨海都市を開発したように副都心開発の時代でした。現在は面開発同士が連続する時代に入り、都市構造論として、今の東京都の都市マスタープランは都心部の連携を重視する政策に変わっています。

例えば都心部が大丸有(大手町、丸の内、有楽町)だけではなく北の四谷までつながっています。四谷は新宿通りで新宿につながります。新宿を起点とし西に向かう青梅街道沿いには相当なボリュームを持って西新宿のあたりを中心に高層ビルが建っていますが、今はそれが中野坂上まで伸びています。現在、中野駅周辺の開発が進んでおり、東京の西側では都心部が中野まで広がっていることになります。南側では竹芝から大崎、品川に伸びて、品川がこれから大きく発展します。東側は臨海副都心を通じて、東陽町までオフィスビルが連なりました。現在、東陽町は朝、通勤で降りてくる人のほうが出る人より多くなっています。

このように都心部が互いに連携して広がる時代に変わってきました。これまで断絶していた副都心エリアが東京の都心エリアと一体化しつつあり、都心部が広がっているのです。

30年前に比べて都心の風景も変わりました。例えば、以前の丸の内仲通りは銀行の支店ばかりで、平日の午後3時になると人通りが完全に途絶えましたが、今は帝国ホテルから丸の内仲通りを大手町まで歩けば、その年のファッションの傾向がわかるくらいブランドショップが軒を連ねています。都心が高度成長時代に対応するためのデスクワークの場から交流の場に変わったこともあり、土日には郊外から人が来て買い物や食事を楽しむエリアに変貌したのです。

それは世界の都市に近づいてきたということです。これまで東京は機能面が優先され、ニューヨークやロンドン、パリに比べるとエンターテインメントやアミューズメント施設があまりに不足していました。東京で特にこれから増えるものはスタジアムなどのスポーツ施設でしょう。ギャラリーも足りませんし、ビッグサイトのような展示場も絶対数が不足しています。展示という形式でのビジネスモデルは世界で定着しているのに東京は地方都市に比べても展示場が圧倒的に少なく、今はどの業界も利用したくても予約が取れずに困っています。

リニア新幹線では町田、八王子、甲府に注目

これからの注目は臨海部です。臨海部では数十年かけて埋め立てた土地に倉庫や港湾施設ばかりではなく、プールやスタジアムなども多くつくってきました。都心部と臨海部を結ぶ臨海地下鉄も構想されており、新たなオフィス拠点としての可能性が広がっています。臨海地下鉄はTX(つくばエクスプレス)との直通運転など一体整備の計画もあります。10年以上先の話になりますが、今後のビル需要を考える場合、そのことも視野に入れたほうがいいでしょう。

もう一つ、大きなインパクトをもたらせるのがリニア中央新幹線です。リニアの品川駅の隣駅は相模原市の橋本駅付近に設置される神奈川県駅(仮称)。これまで1時間かかっていた品川と橋本の間は7分から10分になるといわれています。八王子や町田は橋本から既存のJR と私鉄で約10分ですから30分以内で品川と往来できることになります。さらに次の駅は現在のJR甲府駅近くに作られる山梨県駅(仮称)です。2時間の距離を20分で行けるようになりますから、当然、甲府の再開発が起こることでしょう。リニアに関しては、名古屋ももちろんですが、町田や八王子、甲府が近くなることに注目したいところです。

これらの都心部の連携で東京の都市構造は大きく変わります。東京はにぎわいが分散するのではなく、逆に求心力のある都市に変わっていくでしょう。アクセスしにくい地域に行ける利便性やデベロッパー同士の連携で深まるビル開発によって、東京はさらに魅力ある街に変わっていくと思われます。

お話を聞いた方

明治大学名誉教授、元東京都副知事青山 佾(あおやま やすし)

1943年生まれ。1967年東京都庁経済局に入る。中央市場・目黒区・政策室・衛生局・都立短大・都市計画局・生活文化局等を経て、高齢福祉部長、計画部長、政策報道室理事等を歴任。1999年から2003 年まで石原慎太郎知事のもとで東京都副知事( 危機管理、防災、都市構造、財政等を担当)。専門は自治体政策・都市政策・危機管理・日本史人物伝。著書多数。近著に『東京都知事列伝』(共同通信社)『世界の街角から東京を考える』(藤原書店)など。

関連記事