次世代幹部候補を育成する、基本の4ステップ
~中小企業経営者のための幹部候補の育て方[第2回]

近年、後継者不在により、廃業する企業が増えています。このような事態を防ぐためにも、早い段階で会社の次世代を担う人材を育てることは中小企業経営者の責務だといえるでしょう。

本連載では、中小企業の幹部候補をどのように育成していくのか、基本的な考え方やノウハウなどを紹介していきます。今回は中小企業で幹部候補を育てるための基本フォーマットを中心にご紹介します。

育てたいけど育たない…中小企業が抱える課題

中小企業の経営者が高齢化し、第一線を退くタイミングが訪れた場合、選択肢は「会社をたたむか、後継者に引き継がせるか」のふたつにひとつです。経営者が会社の存続を希望する場合は、あらかじめ適任者を選出しておく必要があります。しかし日々の業務に忙殺されていると「つい後回しになってしまう」というケースが多いようです。「まだまだ現役」という経営者のプライドが、鈍化に拍車をかけてしまうこともあるでしょう。

ある民間のリサーチ会社が2019年に行った調査によると、対象企業約27万5,000社の約65.2%にあたる約18万社が「後継者が不在である」と回答しました。なおこの割合は、2016年の66.1%から3年間連続で低下傾向にあります。多くの企業が地道に問題へ取り組んだ結果、改善の兆しが表れているのかもしれません。しかし大企業に比べ、中小企業は後継者育成が難渋するケースが多いようです。

よくある理由としては、以下があげられます。

・親族が後継者になることを希望しない

・経営者が一代で築き上げた企業の場合、前例がなく育成体制が整っていない

・後継者が学ぶべき内容(リーダーシップ、経営知識、マネジメントなど)が多岐に渡るため、費用/時間両面での負担が厳しい

このように、中小企業を取り巻く後継者不足問題は深刻です。しかし「廃業は避けたい」という意志があるのなら、経営者が現役のうちに、状況の改善へ取り組まなくてはなりません。

どのように次世代幹部候補は育てていけばいいのか?

では実際に後継者を育成するには、どのような手順を踏んでいくべきなのでしょうか。その過程には長期的かつ計画的な教育が必要です。道筋は企業や業種により異なる点もありますが、以下でひとつの雛形を紹介します。

1.ゴールの設定と、条件の明確化

育成に必要なのは、社内全体の理解と協力です。幹部候補として選出された人材は「トレーニングの間、実務を離れる」などの特別扱いを受けることもあります。「後継者を必要としている」という経営者の意思をあらかじめ伝えておくことで、社内の混乱を防ぎましょう。

また具体的な育成計画に携わる当事者や周囲のスタッフに対しては、経営者自身が求めている「後継者の条件」を提示し、目指すゴールを明確にしておきます。

2.候補者の選抜
経営者のポジションを継ぐ人材を決定するには、最終的な絞り込みが必要です。そのためにまず複数の有能な人材を選出し、幹部候補として育成していく段階を設けることとなります。

日々の業務の中で、何か光る資質を持つ人材が候補にあがるわけですが、本人が将来に対して意欲を見せるかどうかも大切なポイントです。また「現在は十分に発揮されていないが、高いポテンシャルを秘めている」という視点も忘れないようにしたいものです。いずれにせよ育成には多くの時間や費用を費やすことになりますので、選出はしっかりと行わなくてはなりません。

3.トレーニングの実施
社内の理解を促し人材を選出したら、実際のトレーニングへ移ることになりますが、トレーニングは社内で行うか/社外で行うか、講師は社内で選出するか/社外から招くか、座学で行うか/体験型で行うか、など事前に取り決めておくことがあります。

内容次第で成果には大きな差が生じますので、その設計は慎重に行わなくてはなりません。社内での経験値が不足している場合は、社外へ積極的に助力を求める必要があります。先行投資として、その予算を確保しておかなければなりません。

4.継続的なモニタリングと改善
幹部候補育成に初めて取り組む場合は、1~3の複雑なプロセスを経ていく必要があります。いったん軌道に乗せたらひと安心、と言いたいところですが、本来の意義を達成するためにはモニタリングも継続する必要があります。

経営者が事前に決定したゴールに近づいているのか成果を測るモニタリングはもちろん、当事者たちがきちんとモチベーションを継続できているのかも適宜確認を。もし問題点が確認された場合は、改善策を検討して軌道修正を図らなくてはなりません。

次世代幹部候補育成を効果的に進めるためのポイント

ここまで確認してきたように、幹部候補の育成には多くの労力を費やすことになります。時間もリソースも限られている中小企業が、育成を効果的に進めて実際の成果へと繋げるためには、以下のポイントに留意すると良いでしょう。

■継続的な実施を心掛ける
集中的なトレーニングは有益ですが、単発では思うような効果が得られません。せっかく知識を学んでも、当事者が実際に幹部へ就任する際に「内容をすっかり忘れてしまった」という事態を招くようでは、意味がないからです。頻度の設定は企業の内情により異なると思いますが、継続的な実施が望ましいといえるでしょう。

また幹部候補には「実務上での経験値を高める」ことを目的とした処遇も必要です。「配置移動や出向を命じる」、「新規事業の立ち上げに携わらせる」など重要なプロジェクトを任せることで、幹部に必要な実力を身に着けさせていきましょう。

■人材によって内容を変えることも大切
幹部候補として選出する人材に、年代的なバリエーションを持たせておくことも一案です。すでに管理職として活躍している人材はもちろん有力ですが、一般社員の中に有望な人材が存在している場合は、積極的な抜擢を。早期の英才教育が将来的な財産となることは十分に考えられますし、優秀な人材の社外流出を防ぐためにも有効です。

幹部候補のバリエーションが豊かになった場合は、トレーニングの内容を対象者のレベルにより変化させる必要があります。一般社員の場合、まず管理職に必要な能力についてトレーニングを授けると、リーダーへの自覚が高まっていくでしょう。またすでに管理職のポストにある人材の場合は、組織全体の運営に必要な能力についてのトレーニングをしていくことで、より高い目標達成を目指せるようになります。

 

次世代の幹部候補を育成し、その中から後継者にふさわしい人物を選出していくことは、中小企業の成長と、事業の継続のために必要。その育成にはそれなりの時間と費用をかけなくてはなりません。

新型コロナウィルスの流行に加え、菅政権が中小企業再編を仄めかすなど、厳しい状況の続く御時世ではありますが、自社の長期的な存続を目指す経営者は、ぜひ幹部候補の育成に積極的に取り組んでください。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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