主要5電源を日本で唯一保有、九電みらいエナジーが拓く「再エネ」の未来
〜九州から世界へ、脱炭素社会の実現を目指して〜

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世界中で脱炭素の動きが加速するいま、日本の環境・エネルギー政策も大きな転換点に立っています。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、脱炭素電源の最大限の導入、特に再生可能エネルギー(再エネ)を主力電源化するという政府の方針が打ち出される中、最前線で挑んでいるのが、九電みらいエナジー株式会社です。太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスの再エネ主要5電源を日本で唯一保有することを強みに、九州発の再エネ事業にどう取り組んでいるのか。会社の成り立ちや大切にしている理念、そしてこれからのビジョンについて、代表取締役社長執行役員の水町豊氏に聞きました。

日本のエネルギー政策の変遷と、九電みらいエナジーの誕生

私たちの生活や自然の生態系にさまざまな影響を及ぼしている、地球温暖化。その対策として、二酸化炭素排出の実質ゼロを目指す「脱炭素」の動きが世界中で加速しています。そこで注目されているのが、太陽光・風力・地熱といった自然の力を利用した、環境への負荷が少ない「再生可能エネルギー(再エネ)」です。

2011年3月の東日本大震災の影響で、安全性への懸念から国内の原子力発電は全基停止。日本のエネルギーの主役を、化石燃料を燃焼した蒸気で発電する火力発電が担うようになりました。その結果、火力発電の燃料である石炭やLNGの価格高騰による電気代の上昇、CO2排出量の増大などの悪影響も発生。国は再エネの普及に向け、2012年、太陽光や風力などの再エネで発電した電気を、電力会社が一定価格で、一定期間買い取ることを国が保証する「固定価格買取制度(FIT)」を創設。中でも、すぐに事業化しやすい太陽光発電に取り組もうとする事業者が全国的に急増しました。

九州は日照条件が良いという地理的要因もあり、FIT創設直後から九州電力に太陽光発電の申し込みが殺到。当時、九州電力の企画部門で再エネを担当していた水町氏も、対応に苦慮したと当時を振り返ります。

「電力会社は、安定した電力を供給するために、気温や天候などで時々刻々変化する電力需要と、供給力を常に一致させ、周波数を一定にすることが役割です。しかし、太陽光発電が大幅に増加すると、電力供給が不安定になることが懸念されました。この対応を検討するため、九州電力では接続申し込みを3カ月停止しました。いわゆる『九電ショック』として、全国的なニュースにもなりました」

しかし、こうした状況を経て改めて、さらなる再エネの開発、導入が必要だという判断のもと、2014年、九電グループの再エネ専業子会社として誕生したのが、九電みらいエナジーです。同社の設立にも水町氏が中心的に携わったそうです。

「当時から、再エネへの確かなニーズを感じていました。太陽光や風力など様々な再エネ電源に関係する調査・計画から建設・運営管理までの一貫した技術・ノウハウを活用した発電事業を実施するとともに、関連サービスもお客様に提供するため、グループ各社に分散していた再エネに関する機能・リソースを集約し、ワンストップで対応するための会社として設立しました」

その後、水町氏は、2019年に九州電力から九電みらいエナジーへと転じ、2020年より経営トップを務めることになります。

「九電グループは古くから、九州の豊かな自然を活用した再エネ事業に取り組んできました。1898年には、九州で最も古い水力発電として鹿児島県の小山田発電所が運転開始したことをはじめとして、最近ではこの3月2日に、当社が出資する日本最大の洋上風力発電所が営業運転を開始しました。また、日本初となる、潮の満ち引きを活用した潮流発電の実証に取り組むなど、先進的な事業を数多く手がけてきた実績があります。グループ内で100年以上前から受け継がれてきたフロンティアスピリットは、当社にとっても大きな強みになっています」

「再エネ3C」をもとに描く、未来のビジョン

同じ頃、地球温暖化に関する危機感は世界共通のものになっていきました。2015年のパリ協定での目標「産業革命以降の気温上昇を2℃未満に抑える」を引き金に、2018年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書では、「温暖化の影響は、産業革命以降の気温上昇が2℃では深刻。1.5℃未満に抑制すべき」「1.5℃に抑えるために、世界の温室効果ガスの排出量を2050年前後に実質ゼロにする必要がある」と公表。これを受け、日本でも2020年に「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを国の目標としました。

水町氏は、国内外の情勢を踏まえて2022年に、再エネの主力電源化を目指すうえでの大方針として「再エネ3C」を掲げました。再エネ事業の「Creation(拡大)」「Continuation(継続)」「Coordination(需要と供給の調和)」の3つの頭文字をとって名づけています。

再エネ設備の拡大(Creation)では、長年培った再エネ主要5電源の建設・運営ノウハウを活用し、地域との共生を図りながら設備容量の拡大を推進すること。次に、再エネ電源の長期安定的な活用(Continuation)では、FIT期限終了後のリプレース(建て替え)など再エネ電源を長期安定的に使える体制を構築すること。また、再エネは出力が天候に左右されやすいことから、需要と供給を調和させ(Coordination)、再エネの最大限の活用と、顧客ニーズに合わせた環境メニューやサービスを提供する取り組みを示しています。

再エネ3Cに込めた思いについて、水町氏はこう語ります。

「2050年にカーボンニュートラルが実現できても、その後にカーボンニュートラルでなくなってしまっては意味がありません。2050年はあくまでも通過点であり、その先もずっとカーボンニュートラルを維持しなければならないのです。それに向けて再エネ事業者として必要な哲学、方針として、再エネ3Cを策定しました」

九電グループは、カーボンニュートラルに向けた取り組みと成長を加速化するため、再エネ事業をグループのコア事業に定めるとともに、2014年の設立時には見送っていた、九州電力の地熱発電・水力発電事業を九電みらいエナジーに統合することを2023年に公表。

「設立当初の発電設備の規模は約10万kWでしたが、現在は約132万kW(建設中、計画含む)にまで拡大しています。地熱・水力事業の当社への統合完了後、発電所出力は約160万kW(自社開発分のみ)へ。設備規模は再エネ事業者として国内トップクラスの水準になります」

さらに特筆すべきは、統合後の新生・九電みらいエナジーの電源ポートフォリオです。地熱・水力・バイオマスという、再エネの中では安定したベースロード電源の構成比が8割を占めます。

こうした強みを生かして、九電みらいエナジーは、長期ビジョンと中期的な戦略を2年連続で打ち出しました。まずは2024年4月、地熱事業統合を記念したパーティの席上で2050年ビジョンを公表しました。2050年のありたい姿は「みらいを拓く、世界有数のグリーンエネルギー企業になる」。KGIは、企業の本業の収益力を表す国際基準EBITDA 1,500億円など3つを掲げています。

「このビジョンは、若手社員による組織横断のワーキンググループで検討してもらいました。『業界トップを目指したい』、『九州発で世界を舞台に活躍したい』といった若手社員の強い思いが、ありたい姿やKGIになっています。私自身、『ちょっと目標が高すぎやしないか』と思うところも正直ありますが、2050年の主役は今の若手社員です。頼もしく思っています」

もう1つ、2025年5月には、九電グループ全体の「2035年ビジョン」の事業別戦略の一環として、2035年再エネ事業戦略を公表しました。

「人件費、資機材の高騰などもあり、事業予見性が立てづらい厳しい経営環境を迎えています。FIT制度も終焉しつつあるため、この事業戦略では、投資効率と成長の両立をテーマに新たなビジネスモデルを描きました。データセンターや半導体産業などのお客様のニーズに対して、当社の、安定したベースロード電源の構成比が8割、というポートフォリオはマッチします。事業環境は厳しいですが、思考停止することなく、お客様の様々なニーズを的確につかみ、再エネのソリューションで対応することで高付加価値化を図るとともに、さらに利益を上げ、持続可能な社会づくりに貢献していきたいと考えています」

「ビジョン実現に向けて、大切にしたいもの」

直近2年のビジョン、戦略を実現するための活動の根源には、水町氏の「共創」というポリシーがあります。再エネは「自然の力」と「地域のみなさま」と「電気を使っていただくお客さま」と共に創っていくものである――。そして、この共創の出発点は「コミュニケーション」だと話します。

「発電所ができることに対して、不安や心配を抱く方は一定程度いらっしゃいます。地元の人たちから理解を得るためには、なぜわれわれがこの地域・土地を選び、何をしたいのかをしっかりお伝えし、丁寧に対話を重ねることが欠かせません。また、私たちは地域のみなさまと一緒にエネルギーを活用することで、地域の発展にもつなげたいと考えています。地域によって抱える課題は異なりますから、それをしっかり吸い上げながら、私たちにできることを見つけて共に取り組む。そうやって共創していくことを大切にしています」

また、丁寧なコミュニケーションは社内に対しても及びます。

「当社のこうした事業運営を支えるのは『人』。2050ビジョンで掲げる3つのKGIの1番目は『従業員エンゲージメント指数を国内最高位のAAAにする』。従業員が安心して、常にチャレンジングに事業を展開することができ、会社とともに成長していくことを目指します。毎年の事業計画策定後や、出張の折にはもう1泊するなど予定を延長して、発電所で働く皆さんとの対話の場を設けるようにしています。さらに私の発案で、半年前から週に2度、社長室を飛び出し、お菓子やお茶を持って、ミーティングスペースで自由に話す『ワイガヤ活動』を継続しています。役職関係なく、自由闊達に意見交換する場を作りたかったのです。従業員の皆さんがワクワクして会社にくるような状態なら、2050ビジョンが実現できるのではないか、と考えています」

九州は、全国の経済規模では「1割経済」といわれていますが、再エネの導入状況で見ると太陽光発電の約2割、風力の約1.5割、地熱の約4割が集まるなど、大きなポテンシャルを持った地域です。九電みらいエナジーはこの地域と共にこれからも共創し、日本、そして世界の明るい未来へと挑戦を続けていきます。

お話を聞いた方

水町 豊 氏(みずまち ゆたか)

九電みらいエナジー株式会社 代表取締役社長執行役員

1964年、福岡県生まれ。九州大学大学院修了後、1989年に九州電力株式会社へ入社。火力発電本部経営計画グループ長、同本部域外電源開発室長、エネルギーサービス事業統括本部火力発電本部部長などを経て2020年6月より現職。

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