2026年、中小企業が知っておくべき税の環境と経営戦略

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税制の変化が激しく、先行きが読めない時代。中小企業の経営者はどのように税金と向き合い、会社を成長させていけばよいのでしょうか。『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の著者で、芸能文化税理士法人会長の山田真哉氏に、2026年の税環境と、これからの時代に求められる経営の考え方について聞きました。(聞き手:元国税ライター小林義崇)

デジタル化とAI税務調査の時代が到来

――2026年、中小企業を取り巻く税の環境はどのように変化していくとお考えでしょうか。

今年特に大きいのは、デジタル化の流れですね。中でも注目すべきは、国税総合管理システム「KSK」が更新され、いわゆる「KSK2」*が始まることです。これからは、データ分析やシステム高度化により、調査対象の選定や確認がより精緻になるとみられます。グレーゾーンの会社や不正を行ってきた会社にとっては、どこからバレるかわからない時代になるでしょう。

実際に税務調査が行われた場合、昔のように帳簿を一つひとつ見ていくスタイルではなく、「これを出せないならダメ」とピンポイントで指摘される形に変わっていきます。例えば消費税で言えば、インボイスがなければ即座に仕入税額控除が認められないなど、調査のやり方そのものが変化していくと思います。

――年収の壁の見直しも話題になっていますね。

配偶者控除・配偶者特別控除など、いわゆる「年収の壁」の見直しにより、パート・アルバイトを多く雇っている会社では、給与水準やシフト調整への影響が出ています。税金的にはOKでも社会保険に引っかかるケースもあるため、賃金をどこまで上げて、どこまでシフトを入れるかという問題がこれまで以上にシビアになります。

もう一つ、自民党が衆院選の選挙公約に掲げた「飲食料品の消費税2年間ゼロ」という施策も意外と大きな要素です。これが実現すると、飲食料品を扱う会社にとっては、これまで10%か8%で済んでいた経理処理が複雑になります。うっかり経理処理を間違えると、8%分、場合によっては10%分を損することにもなりかねません。

節税よりキャッシュが大事な時代に

――物価上昇や為替変動など、経営環境が不透明な中、税金に対する考え方を変える必要はあるのでしょうか。

インフレが進むにつれて、節税よりもキャッシュが大事な時代になってきています。というのも、インフレになるとビジネスにかかるコストの予測がつかなくなるんです。建物の建築費も、1億円でできると思ったら1億2,000万円かかるなんてことが普通にある。

そうなると、節税のために何かするよりも、むしろキャッシュを重視したほうがいい。場合によっては、経費を抑えて、税金を払ってでもキャッシュを残すという選択肢が重要になります。

そしてキャッシュを残したら、ちゃんと運用することです。これまで運用といえばNISAなど個人の話が中心でしたが、金利が上がってきた今、企業もキャッシュがあるなら証券口座をつくって、国債や社債、あるいはS&P500やオルカンなどのインデックスファンドでもいいので、ある程度運用しないともったいないですよね。実は私の事務所も先月、初めて証券口座をつくりました。仮に1億円の余裕資金があるとして、2%で運用できれば200万円です。これは賃上げの予算としてもありがたい金額ですよね。

――融資の使い方も変わってきそうですね。

金利が上昇していますから、これまでのように大きな借り入れを前提に投資して回収するプランは、ハードルが高くなっています。できる限り融資を受けずに稼ぐ仕組みや業態を考えていくことが、経営者の仕事になってきているといえるでしょう。その意味でも、キャッシュを貯めておくことが重要です。

M&A税制の活用とビジネスモデルの転換

――新しい税制の活用方法はあるのでしょうか。

中小企業であれば、計画に基づいてM&Aを実施した際に活用できる「事業再編投資損失準備金」は検討するだけの価値があります。M&Aのために積み立てた段階で損金になり、5年後から益金算入されるという仕組みです。キャッシュに余裕があるときにM&A準備金を積み立てながら税負担を抑えて、M&Aの準備を進める時間を買う、ということができます。

今、日本の中小企業には、インフレと経営者の高齢化という2つの荒波が確実に迫って来ています。高齢の経営者が会社を売ろうとしている話はたくさんありますから、そこでチャンスがあれば買ってみるのもいいでしょう。そのためにもキャッシュは持っておいたほうがいいですね。小規模な会社の中には、1,000万円、2,000万円で売られている例も多くありますから。

――逆に、避けたほうがよい税制活用もあるのでしょうか。

基本的に交際費で無駄遣いするのはよくないですね。社長の個人的なもの、船の購入やホテルの会員権なども、SNS時代の今はリスクになりかねません。従業員がSNSで発信する可能性もあります。

それから保険ですね。節税のための保険はもうやめたほうがいい。返戻率も低いですし、節税効果も限定的です。純粋に怪我や病気のための保険、企業のリスク管理としての保険は非常にいいと思いますが、節税目的の保険商品は古い節税になってしまいました。

成長につながる投資が先にあって、結果的に税金がどうかという順序で考えるべきです。とにかくキャッシュを貯めることが、会社の成長につながります。

情報リテラシーを高めることの重要性

――情報があふれる中、何が正しいか判断するコツはありますか。

残念ながら、「これは信頼できる」という情報はないと思ったほうがいいです。自分もやっている身ですが、特にYouTubeの情報は注意が必要です。再生数を稼ぐために偏った情報になりがちで、私は「デマよりも悪質」と言っています。真実を半分しか言わないことが多いんです。

例えば「年金を60歳で繰り上げ受給して投資に回せばいい」という情報。確かに一面では正しいのですが、年金は保険なんですよね。長生きリスクに備えるという保険部分を無視してまでやるべきことでしょうか。繰り上げ受給をすると月々の年金の受給額が少なくなりますし、障害年金がもらえなくなるリスクもあります。

大切なのは、幅広く情報を集めること。AIに聞くにしても、「デメリットはないですか」「反対意見はないですか」と問いかけて、自分で情報の精度を高めていく必要があります。

――経営者自身のリテラシーが問われるわけですね。

そうですね。一つの情報だけを鵜呑みにせず、多角的に検討することが大切です。今はAIのおかげで情報収集の手段が増えました。以前よりもかなり正確な回答を得られるようになってきたので、銀行や保険会社の担当者が言うことも、資料をもらってAIに読み込ませて「どう思う?」と聞けばいい。そういう意味では、いい時代になったと思います。

――最後に、中小企業の経営者の方々へメッセージをお願いします。

AIとデジタルとインフレ、この3つが少しでも関わっている業界なら、確実に変化が起きます。それはピンチであると同時にチャンスです。5年前と今が全然違うように、5年後も変わっているはず。どこまで新しい手を打てるかが、経営者としての資質に関わる問題ですよね。

税金は、最終的に残ったもののうち、およそ30%を納めるという話です。金額としては大きいですが、経営としては最後に考えるべきことかもしれません。節税にこだわって足元をすくわれるより、まずはビジネスを考える。キャッシュを残し、新しいことに挑戦していく。そういう姿勢が、これからの時代を生き抜く鍵になると思います。

*次世代国税総合管理システムの略。国税庁が2026年9月に導入予定の基幹システムで、全国の国税局と税務署をネットワークでつなぎ、AIとデータベース統合により税務調査を高度化する。

お話を聞いた方

山田 真哉 氏(やまだ しんや)

芸能文化税理士法人 会長 公認会計士・税理士・作家・YouTuber

1976年兵庫県神戸市生まれ。大阪大学文学部卒業後、東進ハイスクール勤務を経て、公認会計士試験に合格。中央青山監査法人/プライスウォーターハウス・クーパースを経て、独立。会計学をわかりやすく説いた著書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)は累計発行部数165万部を超える大ベストセラー。YouTubeチャンネル「オタク会計士ch 【山田真哉】少しだけお金で得する」は登録者数110万人を超える。株式会社ブシロード社外監査役、内閣官房行政改革推進会議歳出改革WG構成員、経済番組やドラマの監修等も務めている。

聞き手

小林 義崇 氏(こばやし よしたか)

フリーライター

1981年、福岡県生まれ。西南学院大学商学部卒業。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。2017年7月、東京国税局を辞職し、フリーライターに転身。『富裕層が大事にしている「お金の基本」』(講談社)『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)『超改訂版 すみません、金利ってなんですか?』(サンマーク出版)など累計部数30万部超。

[編集]一般社団法人100年企業戦略研究所
[企画・制作協力]東洋経済新報社ブランドスタジオ

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