老舗からイノベーション企業に変革したスズキハイテック
~「誰もしていないこと」こそ挑戦と捉える開発主導の成長モデル~

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自動車、スマートフォン、家電――私たちの身の回りのさまざまな製品に使われている「めっき」。山形県山形市に本社を構えるスズキハイテック株式会社は、高難度・高品質なめっき加工技術を世界へと提供し、技術開発によって新たな価値を生み出し続けています。そんな同社も、かつては大企業から送られてくる図面指示に従う「下請け型」でした。2015年に5代目社長として就任した鈴木一徳氏が「開発主導型」の企業へと大胆な転換を果たし、現在は5期連続で増収増益を続けるイノベーション企業へと生まれ変わっています。そんな同社の歩みと変革について鈴木社長に伺いました。

日本の経済成長とともにめっき加工の領域を拡大

スズキハイテック株式会社は、山形市内で1914年に創業されためっき加工会社です。創業者は現社長・鈴木一徳氏の曾祖父にあたり、リヤカーや自転車部品などへのめっき加工から始まり、戦後は復興需要やその後の高度経済成長の流れの中でミシンや音響・通信部品、自動車部品へと展開していきました。さらに、1980年代以降は4代目社長の下、半導体製品へのめっき加工を本格化。同社の成長を後押ししました。

現在は電動車の重要部品や半導体製品のめっき製造などを手がけ、高難度・高品質なめっき加工を主力としながらも、MEMS(微小機械電気システム)の微細加工技術や、バイオミメティクス(生物模倣技術)に関連した研究開発にも注力しています。

「めっきがないと世の中は回りません」と話す鈴木氏。めっきは、今やスマートフォンやパソコン、電化製品、アクセサリー、車など、身の回りのさまざまなものに使われており、私たちの生活に欠かせない存在となっています。

「待ち」から「攻め」へ。下請けモデルからの脱却

2000年に鈴木氏が入社した頃の同社は、大企業から図面が届き、そのとおりにめっきを施して納品するという中間委託加工を行う、いわゆる「下請け型」のビジネスモデルでした。一時は約25億円まで売り上げを伸ばしましたが、2008年のリーマンショックを境に状況は一変します。2011年には東日本大震災も発生。取引先だった国内の大手家電メーカーや電機メーカーが次々と事業を撤退・縮小し、従来のビジネスモデルが成り立たなくなっていきました。鈴木氏が社長に就任した2015年には、売り上げはピーク時の約3分の2にあたる16億円まで落ち込んでいたといいます。

先代である鈴木氏の父は、堅実な無借金経営を貫いてきました。しかし、このまま「待ち」の姿勢を続けていれば、事業がさらに縮小していくことは明白でした。当時のことを鈴木氏はこう振り返ります。

「借り入れがなかったので、私の代で企業を縮小する選択肢もありました。でも縮小してしまったら、創業からの長い歴史と、ここまでつないできた思いがダメになってしまう。また、私が父から受け継いだからには、私も次の世代にバトンを渡していかなければならない。だから、安直に逃げる道を探すのではなく、改めて社業であるめっきに真剣に向き合おうと思いました」

こうして鈴木氏は、「待ち」ではなく、自分たちから顧客へ新技術を提案する「開発主導型」への転換を決断。その覚悟の下、積極的な新規事業開発とそのための設備投資を行い、スズキハイテックは新たな歴史を刻み始めることになります。

研究開発の変革を支えた、外国籍人材の採用

開発主導型への転換を掲げた鈴木氏が最初に直面したのは、「人」の課題でした。長年にわたって下請け加工を続けてきた同社には、熟練のマイスターと呼べる人材がそろっていた一方、新しいテクノロジーを生み出すための研究人材がいませんでした。しかし、地方の中小企業が研究者を採用するのは容易ではありません。そこで着目したのが、日本で学ぶ外国籍人材です。山形大学の外国人留学生を研究職として採用。彼らのロジカルな思考を、日本人の熟練工が持つ技術や勘・経験と融合させながら、10個のテーマを立ち上げて研究開発を始めました。そこで最初に狙いを定めたのが、自動車のマーケットです。

「日本の市場で最も安定した高いニーズがあるのは、やはり自動車です。また、自動車で一度採用されれば、安全性などの観点からなかなか他社に乗り換えられにくい。ただし、既存の技術では価格競争に陥ってしまうだけ。だから、他社がまねできなくて、応用範囲が広いもの。そして、どうせ挑戦するなら世界初、世界最高のものを作ろうと考えました」

EV(電気自動車)やHV(ハイブリッド車)といった電動車に向けて、車体の性能を高められるようなめっき技術を模索。自動車メーカー、大学、公的研究機関などとも連携してオープンイノベーション型の研究開発を進めていきました。

そうして生まれたのが、「放熱性」「防錆性」「(半導体の)はんだ接合性」の3つの機能を同時にかつ最高水準で実現するめっき技術でした。その技術は、「現時点で、当社のめっき技術と同じことができる企業は存在しないと思います」と胸を張るほどです。

2018年以降の設備投資によって量産体制を構築。モデルチェンジのたびに採用車種も増え、今後もさらなる増産が見込まれています。

自社工場のDX(デジタル・トランスフォーメーション)も推進。生産ラインだけではなく、検査工程も自動化することで競争力を高めています。全数検査の結果と製造プロセスをすべて紐付けるトレーサビリティシステムと、特殊なめっきを保証するための検査装置を独自に開発し、「100%の品質保証」も構築しました。

年を追うごとに設備投資の効果が業績にも表れ、全社売り上げも右肩上がりで成長を続けています。受注増を受けて工場も増築中で、2025年8月末には新工場が竣工し、2026年夏竣工を目標にさらに工場を建設中です。

フナムシやチョウ。新たな視点が開く技術の可能性

車分野での技術開発と並行して、将来的に新たな事業の柱になりそうな“シーズ(商品化につながる技術の種)”の創出にも取り組んでいます。めっきというコア・コンピタンスをベースにしながら、社会課題の解決にも資する挑戦です。

その1つがMEMSです。大手ヘルスケア企業が抱えている課題を聞いたことをきっかけに、産官学連携で、ぜんそく患者向けのネブライザー(吸入器)などの医療器具に使える金属メッシュを開発しました。3ミクロンという世界最小クラスのミストを噴出することで従来品が気管支までだったのに対し、肺まで届くように改良。さらに、穴の数を増やすことで、1回の治療にかかる時間も削減できるようになりました。このマイクロミスト技術を応用して、他分野への提案も行っているところです。

続いて、生物が持つ身体構造や機能を応用するバイオミメティクスの研究にも着手しました。大学の先生からの「フナムシの脚の、海水をエラまで運ぶ仕組みを生かせないか」という提案をきっかけに、表面加工技術を開発。瞬時に液体を拡散させる機能を、豪雨・積雪環境での自動運転車のセンサー誤作動防止や視認性の向上などに活用できると見込んでいます。

同じくバイオミメティクスの領域で、南米を中心に生息するモルフォチョウの羽をヒントに、物を青く「見せる」技術も開発中です。モルフォチョウの羽は実際には茶色ですが、その鱗粉が持つ波長によって人の目には鮮やかな青色に映ります。このメカニズムを製品に応用できれば、顔料による発色ではないため永久に色あせることがなく、環境負荷も大幅に低減できるという発想です。青は再現できるようになっており、現在は光の3原色の残りの赤と緑にも取り組んでいます。

こうして次々と研究開発をしてきた同社。もともと10個あったテーマのうち量産化に成功したのは4個、研究開発中なのが2個だといいますが、挑戦を続けることに対して、鈴木氏はこう話します。

「誰もやっていないこと、社会に貢献できること、会社も社員も成長すること、社会のニーズにマッチした成長市場に挑むことを、私は『挑戦』と呼んでいます。企業規模や財務状況などに対して適正規模での挑戦であることは大前提ですが、挑戦によって生まれた失敗も財産であり、そこでの学びはいずれ付加価値になります」

国籍を超えて育む、全社一丸のマインドセット

研究職をはじめ、外国籍人材を積極的に採用している同社。現在は263名の社員のうち109名が外国籍で、バングラデシュ、ネパール、インドネシアなど6か国から多様な仲間が集まっています。

外国籍の社員が山形の生活になじめるよう、また国籍を問わず従業員の連携が深まるよう、全社員を対象にした年3回のパーティーや定期的な旅行のほか、花見や芋煮会といった季節ごとのイベントを継続して開催しています。忘年会は9割以上の社員が参加し、家族も参加するなど大盛況のイベントだといいます。

そんな同社の社内文化の根底を表すのが、創業110周年の2024年に策定した「YES!! ハイテック!!」というスローガンです。

「社員一丸とならなければ、会社が目指す道を進んでいくことはできません。研究、開発、製造、販売という一連の流れの中で、必ずどこかで困難にぶつかります。そのとき、一人ではできなくても、組織ならクリアできる。一人ぼっちにさせず、同じマインドを持った組織であるために、日本人、外国人問わず全員で共有できる『YES!!』が合言葉になっています」

山形から発信するレボリューション

鈴木氏が社長に就任してからの変革の結果、スズキハイテックは5年連続で大幅な増収増益を達成しています。2024年度の売り上げは約47億円、25年度は52億円程度を見込んでおり、2029年度には92億円、2035年度には150億円を目標に掲げています。

こうして成長を続けるためには、「研究開発も投資も、どちらも絶対に止めてはならない」と鈴木氏は話します。

「中小企業でありがちなのが、研究開発したものを商品化するための量産にフォーカスして投資し、研究開発が止まってしまうことです。研究開発が停滞すれば、企業の成長も止まってしまいます。ですから、研究開発の精度を上げながらも、未来を見据えて次なるテーマを見つけて挑戦し続けることが何よりも大切です」

「山形から、めっきでレボリューション」――この経営理念には、新しい時代の新しい技術を、この山形で開発し、世界に発信していくという思いが込められています。

山形の地で112年間商いを続けてきた歴史への敬意と、受け継がれてきた思いを背負って。開発主導型企業へ変革を遂げたスズキハイテックの挑戦は、これからも続きます。

お話を聞いた方

鈴木 一徳 氏(すずき かずのり)

スズキハイテック株式会社 代表取締役社長

1970年山形市生まれ。東京理科大学工学部工業化学科を卒業し、めっき業界、半導体業界での勤務を経て、2000年7月に入社。取締役技術部長、常務、副社長を務め、2015年8月から現職。自社の技術と未来を見据え、山形から新たな価値の創出に挑み続けている。

[編集]一般社団法人100年企業戦略研究所
[企画・制作協力]東洋経済新報社ブランドスタジオ

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