100年企業レポート vol.12 山形編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

1.山形県の100年企業に関する分析

東北地方の日本海側に位置する山形県は美しい自然に恵まれた地域である。蔵王や鳥海などの名峰に囲まれ、古くから山岳信仰の聖地とされていた。そして県の中央には「母なる川」と呼ばれる最上川が流れ、その流域には多くの県民が住んでいる。

山形県の100年企業数は、766社であり、全国15位である。

江戸時代の俳聖・松尾芭蕉もそうした山形の自然に魅せられたのであろう。「奥の細道」の全行程156日の3分の1にあたる43日間を山形県で過ごしたとされている。そしてこの地で詠んだ山寺の蝉の句や最上川の句はあまりにも有名である。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、山形県の特性を分析した。

事業承継への関心が高く、
100年企業輩出率は全国トップ

美しい自然に恵まれた山形県は、『100年企業輩出率』が全国1位である。歴史ある温泉地が多いほか、稲作が盛んで米を原料とした地場産業が発展し、定着したためである。創業からの事業にひたむきに取り組む山形県の経営者は、事業承継への関心も高く、事業承継を望む経営者の割合が全国1位というデータもある。
しかし、高齢化による労働人口減少が問題となっており、そのため県内の製造業の促進に力を入れている。テクノロジーなどの新規分野について企業や大学が共同で行うなど、官民が一体となって問題に取り組んでいる。

2.山形県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比39.2%であった。次いで『大正以降』の22.3%、『明治前期』の19.7%、『江戸時代』の17.7%の順である。
山形県には蔵王温泉や白布温泉など歴史ある温泉地が多く、その温泉地ごとに老舗旅館が存在しているため業種別では『旅館・ホテル』が多い。また日本有数の米どころであり、古くから続く『清酒製造業』も多い。砂糖が庶民に使われ始めた江戸時代に、『生菓子製造業』も地域に密着して営まれていた。

②創業年TOP5

山形県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の伊藤鉄工株式会社は、全国で18位となっている。

③市町村別は『山形市』が最多

市町村別100年企業数では山形市が201社で最多であった。
1位の山形市では、『酒小売業』が9社と最も多く、次いで『旅館・ホテル』が8社、『貸事務所業』が7社の順である。
2位の米沢市は、100年企業数93社であり、業種別に見ると『旅館・ホテル』が9社と最も多く、次いで『絹・人絹織物業』が7社、『清酒製造業』、『酒小売業』、『貸家業』の3業種がそれぞれ3社である。
3位の鶴岡市は、100年企業数76社であり、業種別に見ると『旅館・ホテル』が8社と最も多く、次いで『清酒製造業』、『酒小売業』、『写真業』の3業種がそれぞれ3社である。

④産業は『農業』が全国2位

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が355社(構成比46.3%)と最も多かった。次いで、『製造業』183社(同23.9%)、『サービス業』96社(同12.5%)の順である。
果樹王国として有名な山形県では、全国一の収穫量を誇るサクランボのほかにも多くの果物を栽培している。ちなみに、山形県で果物の栽培が始まったのは明治初期だといわれている。台風などによる自然災害も少なく、豊かな自然に恵まれた山形県は、農作物の栽培に適しており、北海道に次いで全国で2番目に『農業』が多い。

⑤業種は『旅館・ホテル』が全国1位

業種別では、『旅館・ホテル』が59社で最多であった。山形県は100年以上続く『旅館・ホテル』の件数が全国1位である。
2位は『清酒製造』が12社であった。庄内平野や多くの山々があり、酒米や水に恵まれていたため、古くから続いている歴史のある酒蔵も多い。
また、「山形鋳物」として有名な地場産業となった鋳物産業だが、100年以上続く『銑鉄鋳物製造』は6社であり、その数は少ない。しかし伝統的な鋳物産業で培われた技術は、現在の山形の経済を支える機械工業などのものづくりに活かされているのである。

⑥資本金は地方銀行3行が上位独占

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比51.3%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が25.0%、『5千万円以上~1億円未満』が5.0%の順である。
資本金トップは株式会社きらやか銀行(業種:普通銀行)が227億円。以下、株式会社山形銀行(業種:普通銀行)が120億円、株式会社荘内銀行(業種:普通銀行)が85億円の順であった。
上位3社を地方銀行3行が独占した。

⑦従業員数は『10人未満』が6割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比41.4%と最も多かった。次いで、『10~49人』が28.3%、『5~9人』が24.4%の順である。10人未満で6割を超える。
山形県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社荘内銀行、医療法人篠田好生会の2社が従業員500人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比58.2%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が34.3%、『10億円以上~100億円未満』が6.6%の順である。
売上高上位10社のうち、金融業が3社と最も多く、次いで製造業、建設業が各2社であった。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は7社

山形県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は24社であり、構成比では全国38位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は7社存在しており、上場企業は0社で
あった。
貸事務所業との組み合わせは、産業別で見ると卸売・小売業が3社で最も多い。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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