100年企業レポート vol.13 宮城編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

1.宮城県の100年企業に関する分析

東北地方の東南部に位置する宮城県。太平洋側の三陸海岸やリアス式海岸ではサンマやカツオ、牡蠣といった海の幸に恵まれている。また、夏は涼しく、冬は温暖で雪が少ない気候は、野菜の栽培に適しており、せりやネギなどのご当地野菜を生み出している。そのほかにも、仙台牛をはじめとした牛肉、純米酒や仙台味噌など米文化の伝統が根強く、宮城県はさまざまな食材の宝庫と言える。

宮城県の100年企業数は、521社であり、全国26位である。

また、仙台といえば戦国大名の伊達政宗を思い浮かべる人も多いだろう。独眼竜とも呼ばれる片目の伊達政宗は、東北地方(奥羽)の南半分を支配するまでに上り詰めた名将である。また、伊達政宗が建てた「青葉城」とも呼ばれる天守閣のない仙台城は、国内でも屈指の難攻不落の名城として知られていた。200年以上も城を守り抜いた石垣は今も残り、多くの人が訪れる観光地となっている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、宮城県の特性を分析した。

東北トップの指標で、東北地方の経済を牽引する

宮城県は東北地方で最も人口の多い県である。働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)は全国平均をわずかに下回るものの、東北地方ではトップである。仙台への一極集中の傾向も見られるが、『商業地平均価格』も上がっており、地方中枢都市として東北の経済を支えている。また、女性の雇用環境の整備など雇用創出への取り組みに力を入れており、雇用環境も良好である。『相続税課税割合』は、地価が高い仙台などに限定されているため、そんなに高くない。しかし震災からの復興により、上昇率が高い地域もあるので注意が必要である。

2.宮城県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比43.0%であった。次いで『明治前期』の24.3%、『大正以降』の19.5%、『江戸時代』の12.7%の順である。
「日本三御湯」と称され、日本中から湯治客を集めた秋保温泉など温泉地のある宮城県では古くから続く旅館が多い。また、どの時代にも貸事務所業が上位に入っているが、もともと貸事務所業だったわけではなく、創業時の本業から業態変化し、事業継続をしてきたためである。時代の変化に柔軟に対応してきた企業が多いことがうかがえる。

②創業年TOP5

宮城県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の株式会社ホテル佐勘は、全国でも10位となっている。

③市町村別は『仙台市』が最多

市町村別100年企業数では仙台市が222社で最多であった。
1位の仙台市では、『貸事務所業』が17社と最も多く、次いで『旅館・ホテル』が7社、『他に分類されないその他の製造業』、『大学』の2業種がそれぞれ5社である。
2位の石巻市は、100年企業数60社であり、業種別に見ると『金物卸売業』が3社と最も多く、次いで製造業や小売業の10業種がそれぞれ2社であり、石巻市の100年企業の業種は様々である。
3位の大崎市は、100年企業数46社であり、業種別に見ると『旅館・ホテル』が4社と最も多く、次いで『味噌製造業』、『清酒製造業』、『婦人服小売業』の3業種がそれぞれ3社である。

④産業は第1次産業が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が264社(構成比50.7%)と最も多かった。次いで、『製造業』114社(同21.9%)、『サービス業』61社(同11.7%)の順である。
近隣県からも買い物客が訪れる仙台は、東北最大の商業都市であるため、『卸売・小売業、飲食店』が多く存在している。
また、宮城県は第1次産業が盛んである。「ひとめぼれ」や「ササニシキ」などの米どころであり、農業は全国6位である。県土の約6割を森林が占めているため、林業も盛んで全国2位である。そしてマグロやカツオなどの多種多様な魚が漁獲されるため、漁業も全国3位である。

⑤業種は『貸事務所業』が最多

業種別では、『貸事務所業』が17社で最多であった。『貸事務所業』が多いのは大都市の傾向であり、東北地方唯一の政令指定都市である仙台には、高層ビルが立ち並んでいる。地価も上がっているため不動産業が増えていると考えられる。
2位は『清酒製造』が15社であった。酒をこよなく愛した伊達政宗による仙台藩の御用酒屋の発展が、宮城県の酒造りのルーツと言われている。その他には旅館や和菓子といった古くから続く業種も上位である。
ちなみに宮城県では笹かまぼこが有名であるが、『水産練製品製造業』は6社であり、TOP10には入らなかった。

⑥資本金は『製造業』が上位

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比55.0%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が20.7%、『5千万円以上~1億円未満』が6.3%の順である。
資本金トップは国立大学法人東北大学(業種:大学)が1,921億円。以下、株式会社七十七銀行(業種:普通銀行)が246億円、株式会社じもとホールディングス(業種:純粋持株会社)が170億円の順であった。トップは大学や銀行であったが、上位10社を見ると製造業が4社と一番多い。

⑦従業員数は『10人未満』が6割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比40.5%と最も多かった。次いで、『10~49人』が26.8%、『5~9人』が22.3%の順である。10人未満で6割を超える。
宮城県の100年企業の多くは小規模企業であるが、国立大学法人東北大学、株式会社七十七銀行の2社が従業員2,000人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比51.4%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が32.1%、『10億円以上~100億円未満』が13.4%である。
売上高上位10社のうち、卸売・小売業が3社と最も多く、次いで大学が2社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は22社

宮城県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は49社であり、構成比では全国3位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は22社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせで多いのは、『生鮮魚介卸売業』・『他に分類されないその他の卸売業』・『ガソリンスタンド』の3業種がそれぞれ2社である。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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