リーダーに必要な「5つの要素」とは?理想のリーダーになるためのコツを紹介

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記事公開日:2020/02/04 最終更新日:2023/02/27
リーダーの役割は、リーダーシップを発揮して組織を指揮し、チームの目標を達成することです。成果をあげるチームをつくることともいえます。リーダーに必要な「5つの要素」をスキルと行動に分解して解説し、理想のリーダーになるためのコツを紹介します。
組織とは
まず、リーダーが率いることになる「組織」とはなにかを整理してみましょう。
アメリカの経営学者チェスター・バーナードは、組織を「意識的で、計画的で、目的を持つ人々相互間の協働」であり、「二人以上の人々の意識的に調整された活動や諸力のシステム」であると定義しています。
簡潔にいうと、組織とは、ある目的を達成するために活動する集団を指します。そして、一定の秩序をもって組織の活動の方向性を統一することを組織化といいます。企業においては、人、経営資源、責任など、さまざまな構成要素が組織化の対象になります。
組織の成立要件
組織の成立に必要な要件として、前出の経営学者チェスター・バーナードによる「バーナードの組織の3要件」が広く知られています。3要件とは「共通の目的」「貢献意欲」「コミュニケーション」であり、ひとつでも欠けると組織が成立しないとしています。
組織の成立要件①:「共通の目的」
組織とは目的を達成するために活動する集団であり、共通目的はその組織の存在意義そのものです。以前は組織、特に企業活動の目的を指す用語として「ビジョン」や「ミッション」が使用されていました。近年は「パーパス」という言葉が用いられることが多くなっています。日本では「経営理念」「社是」「社訓」に表されていることもあります。共通目的は、明文化されることによって共感を生みだし、新しい仲間をひきよせる指標にもなります。
組織の成立要件②:「貢献意欲」
貢献意欲は、共通目標を達成しようとする意志のことです。モチベーションやエンゲージメントともいいます。
組織の成立要件③:「コミュニケーション」
コミュニケーションはメンバー間の意思疎通の手段であり、共通目的と貢献意欲をつなぐ役割を果たします。
リーダーの役割とは
リーダーの役割は、リーダーシップを発揮して組織を指揮し、チームの目標を達成することです。成果をあげるチームをつくることともいえます。そのなかでも重要な要素として、「共通目的の浸透」と「チーム・マネジメント」があげられます。
リーダーの役割①:共通目的の浸透
リーダーの主要な役割のひとつに「共通目的の浸透」があります。
近年は企業をとりまく環境の変化の不確実性が高まり、変化のスピードも速くなっています。このような環境下では、組織に所属するメンバー一人ひとりが組織の共通目的に即した信念や価値観をもって課題に対峙し、自律的に行動することが求められます。
そのため、企業や組織が何のために存在するのか、社会にどのように貢献していくのかという共通目的を浸透させ、メンバーが共通の信念・価値観・行動規範を持てるようにすることが、リーダーの重要な役割です。
組織に共通の信念・価値観・行動規範の集合体は、「組織文化」と呼ばれます。ここで組織文化についても触れておきましょう。
組織文化とは
組織文化とは、メンバー間で共有されている価値観や行動様式・習慣を指し、企業全体に共通であれば企業文化ともいいます。類似の言葉に組織風土がありますが、風土はメンバー間に自然に生まれるのに対し、文化は経営理念や行動指針といった形で明文化し、意識的に作りだす点に違いがあります。
組織文化の重要性
部署間のコンフリクト(対立、軋轢)なく情報や人が協力する組織体制、共通の倫理観など、質の高い組織文化を醸成することができれば、スムーズに課題解決できる効率的な組織となるだけでなく、集団凝集性(※)を高め大きな成果を生む土台にもなります。またそうした組織文化が企業のブランド力になり、優秀な人材の獲得や投資家へのアピールに直結することがあります。
※集団凝集性:その集団(組織)のまとまりの強さやメンバーの帰属意識の高さを意味する言葉。集団凝集性が高ければ、組織の一体感や結束力、貢献度が高まる。
企業文化の構築を最重要課題に設定している企業として有名なのは、動画配信サービスを提供するNetflixです。インターネットでのDVDの販売やレンタルから始まったNetflixは、時代の変化に対応して動画配信サービスへと舵をきり、いまや世界中で顧客のニーズにあったコンテンツを次々に創り上げています。Netflixは能力主義と率直さを企業文化として根付かせることで、社内規則など制約を極力なくし、自由で創造的なアイデアが生まれる環境を作り出しています。
リーダーの役割②:チーム・マネジメント
リーダーの主要な役割のふたつめは、「チーム・マネジメント」です。
チームとは個人の集まりであり集団の一形態ですが、チームと集団の違いは、チームは各メンバーがそれぞれの個の責任とチームの責任の両方を担うことにあります。チームでは、メンバーがチーム全体の活動にも責任を持ちます。
リーダーは、メンバー個人だけでなくチームを育成する役割を担います。
チームのメンバーは、多様なスキルや能力を持っています。チームが成果をあげるためには、業務に関する専門知識、課題解決力、人間関係を構築する能力が必要ですが、メンバー全員がすべての能力を備えているわけではありません。リーダーは、多様なメンバーを組み合わせ、メンバー同士が能力を相互に補完できるようにしたり、必要なスキルを開発・習得できる機会をつくったりして、チーム力を高めていきます。メンバー個人だけでなく、チームを育成することにより、成果を最大化するのです。
このように、リーダーは組織の共通目的をチームに浸透させ、その達成のためにチームがどのように貢献できるのかを常に共有し続け、チームの凝集性を高める役割を担います。またメンバーの組み合わせや能力開発などのマネジメントを行い、チームを発展させます。チーム・マネジメント次第で、メンバーの相互作用により、個々の能力の総和を上回るプラスの成果を生み出すことも可能です。
リーダーの最大の役割は、高い成果をあげるチームをつくることといえるでしょう。
リーダーに必要な「5つの要素」とは(スキルと行動)
ここまで、組織やチーム、そのなかでのリーダーの役割についてふれました。ここからは、リーダーに必要な5つ要素を、スキルととるべき行動に分解してみていきます。
必要なスキル①:モチベーション管理力
「あなたは何のために働くのか」と問われたら、どのように答えるでしょうか。モノが充足したいま、働く理由は生活資金を得るためだけではありません。金銭による報酬だけでなく、社会的評価や自己実現を求める人もいるでしょう。働くにあたっての動機(モチベーション)は複数あり、何を重視するかも人それぞれです。
一方、仕事に対する貢献度はモチベーションの高さに左右されます。リーダーはメンバーがどのような動機で働いているのかを理解し、それにあったモチベーション管理をすることが大切です。
取るべき行動① 役割と必要性を明示する
仕事に対する意欲は、メンバー一人ひとりが自分の役割と必要性を認識することから生まれます。
チームのプロジェクトの目的、現在の状況や段階、ゴールはどこにあるのかを示し、予算やマンパワーなどがどれほど必要なのかを具体化して、チーム内で共有しましょう。それぞれのポイントで誰がどのような役割をするのか共通認識をもち、チーム全員が「必要とされている」と認識できるようにします。
取るべき行動② 動機付け
モチベーションを高めるためには、インセンティブが必要です。成果をあげ目標を達成した際に、組織から何が与えられるのかを示しましょう。
代表的なインセンティブは、金銭的報酬、社会的評価、自己実現の場です。金銭的な報酬は定量的に示すことができます。社会的評価は、名誉・地位・権限などですが、尊敬する上位者や気心の知れた仲間からの賞賛も有効です。小さなことでも、言葉にして褒めるようにしましょう。自己実現の場は、目指す自分像に近づくための環境を指します。希望にあった業務や裁量、自己研鑽の機会などが得られることを伝えましょう。また、満足感・納得感を得られるよう、評価基準を事前に明確にしておくことも重要なポイントです。
必要なスキル②:実行力
リーダーの実行力とは、いちプレーヤーとして自らの業務を遂行する力ではなく、メンバーの挑戦や行動を引き出す力のことです。チームの一体感を保ちながら複数のメンバーをまとめ、挑戦や行動を促すには様々な工夫が必要です。
取るべき行動① 論理的に判断する
仕事を進める中で、チーム内にコンフリクトが生じることがあります。予算やマンパワーの制約がある中では、「あれも、これも」選ぶことはできず、優先順位をつけて選ぶことになります。
リーダーはどれがチームの成果を最大化するのか、論理的に冷静に判断しなければなりません。避けるべきは、「前回はこのメンバーの案を採用したから、次は別のメンバーを優先してバランスをとろう」などと、空気を読んだり感情に配慮したりして判断することです。時には冷徹にみえるほどのリーダーの論理的な判断力が、チームを成功に導きます。
論理的判断力を鍛えるには、自分がチームリーダーや経営者であればどう判断するかの訓練を繰り返すことが有効です。リーダーになる前から自分が責任者であるという意識をもって仕事に向き合い、メンバーにも論理的な判断力を身に付けるよう促しましょう。
取るべき行動② 創造的・挑戦的であるために学習する
成長しようとしないリーダーに、「成長しろ、挑戦しろ」と言われてチームのメンバーはついてくるでしょうか。自己の成長のために研鑽を怠らないことも、優れたリーダーの条件です。そのためには、自分の長所と短所を理解し、長所をさらに活かす方法と、短所を補う方法を考えることが大切です。
また、リーダーが創造的・挑戦的であれば、チームの人間も創造的なアイデアを出しやすくなります。逆にリーダーが保守的だと、せっかくメンバーが新しいアイデアや能力を持っていても、それが活かされない場合があります。まずリーダーが、失敗を恐れない姿勢を持つことによって、他の人間もその姿勢を持つことができるのです。
必要なスキル③:コミュニケーション力
コミュニケーション力というと、「話す力」「伝える力」を想像される方が多いでしょう。実際、ビジネスの場面でも初対面の人と打ち解ける力やプレゼンテーション力などが重視されてきました。
しかし社会の価値観が多様化するなかで、同質的なモノやサービスを大量に提供するのではなく、個人の嗜好に合わせた新たな価値を生み出す力が重視されるようになっています。
取るべき行動① 「聴く力」 を身につける
価値観の多様化に対応するには組織の多様性が必要であり、多様性を育むには自分と異なる意見でも否定せずに掬い上げる、リーダーの「聴く力」が必要です。
ベストセラーになった書籍『LISTEN』の監訳者である篠田真貴子氏は、リーダーの「聴く力」の効果として、
好奇心をもって聴き、自らと価値観が異なるメンバーの意見を否定せず受け入れることで、リーダー自身の情報が増えて知見が広がること、聴いてもらったメンバーは自らの意見を言葉にすることで課題解決能力が向上するという研究結果があることをあげています。
また「最後まで聴いてもらった」という事実は、メンバーの中にリーダーに対する信頼を生みます。信頼関係があれば厳しい指摘をしても関係性が悪くならず、チームづくりをしやすくなるのです。
自分の価値観に照らして「正しいか」「合っているか」ジャッジをしながら聞いたり、途中で遮ったりすることなく、まずは、「聴く」ことに徹してみましょう。
取るべき行動② コミュニケーション手段を使い分ける
「なぜこのプロジェクトを行うのか」、「それによって何がもたらされるのか」。共通目的を浸透させ業務を遂行するには、その意義をチーム全員に伝えるコミュニケーション力が必要です。ポイントは、全員に同時に伝える場合と個別に伝える場合とで、コミュニケーション手段を使い分けることです。
ミーティングなどで全員に内容や目標を伝える際には、できるだけシンプルで分かりやすい言葉を使うこと、簡潔にまとめることを心がけましょう。誰にでも分かる言葉を選択し、そしてリーダーの熱意を伝えることが大切です。
その上で、個別のコミュニケーションでは、細かく「なぜこの仕事を任せるのか」を伝えましょう。ここでは感情的な熱意よりも、論理的に「●●さんのこの能力を活かして■■の役割を果たす必要がある」、「この役割によって、●●さんの成長につながる」などの具体的な部分を強調して伝えましょう。
必要なスキル④:誠実さ
個々の人間には性格の違いがあり、全員と合わせることは難しいものです。しかし、リーダーはそれを切り離して全員の仕事に対し誠実でなくてはなりません。具体的には、チームの和を重んじる、成果は自分のものではなく全員のものだと認識する、おごらない、客観性を持つ、特定のメンバーに肩入れしない、といった中立性です。
取るべき行動① ポジショニングを確立する
チームの人間に「ついていこう」と思わせるには、リーダーのポジショニングがブレないことが大切です。リーダーが常にブレずにいることが、チーム全体の協調性向上にもつながります。
取るべき行動② 率先垂範の姿勢を見せる
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」という、山本五十六の言葉には、指揮官先頭の考え方の基本が詰まっているといえるでしょう。率先垂範は「手本を見せる」ことであり、リーダーの言葉と行動が一致していることの証明でもあります。
リーダーの率先垂範があってこそ、次のプロセス「説明し、実際にやらせてみる」というプロセスにつながるのです。
必要なスキル⑤:人材育成力
人材育成力とは、メンバーの価値観や思考傾向などを理解し、マインドやスキルの獲得をサポートしたり、キャリアの方向性について相談にのったりしたりしながらメンバーを育成する力のことで、チーム力向上のための必須のスキルであるといえます。
取るべき行動① メンバーの主体性を促す
チーム力を向上させ成果を最大化するには、メンバーそれぞれがリーダーの指示を受けて動くのではなく、主体的に考え行動できるようになる必要があります。育成の過程で、リーダーがすぐに答えを出すのではなく、メンバーのペースに合わせ、口出しせずに見守ることも大切です。相談されたらヒントや気づきを与えて、自らの考えをまとめるように促しましょう。
メンバー育成は、短期のチーム成果と同じ時間軸では計れません。メンバーのキャリアプランやライフプランにも配慮し、長期的な計画に基づいて成長を支援しましょう。
取るべき行動② 寛容な態度で接する
育成過程にメンバーの失敗はつきもので、時には叱る必要もあります。しかし、「リーダーが普段の自分の仕事や人間性を認めてくれている」という信頼がなくては、厳しい叱責や指摘は受け入れがたいものとなってしまいます。
日ごろから寛容な態度で接することが、リーダーに欠かせない要素だといえるでしょう。褒めて長所を伸ばしていくことは人を育てる上で非常に大切です。結果がどうあれ、そのメンバーの長所を見つけて褒め、メンバーの努力を認めることも必要です。
理想のリーダー像とは?
リーダーやリーダーシップに関する考察は、古くは著名なマキャベリの『君主論』があります。また、1900年代から現在までに実施された研究事例で広く知られているものがあります。そのうちのPM理論とアイオワ研究についてみていきます。理想のリーダー像は、チームやリーダー自身の成熟度によって異なりますが、それぞれがどのような段階にあるのかを分析し、美点を伸ばし、足りないところを学び補っていくために、研究事例は大いに役立つでしょう。
PM理論にみるリーダー像
PM理論は、社会学者の三隅二不二氏により提唱されたリーダーシップの類型に関する理論です。PM理論では、課題を解決する能力(Performance :P)と集団をまとめる能力(Maintenance :M)2軸によりリーダー像を4つに分類し、強みや弱みを明らかにします。

課題を解決する能力も集団をまとめる能力も低いpm型では、リーダーを務めるのは困難でしょう。またどちらかの能力だけが高いPm型やpM型の場合は、短期の目標達成や、和気あいあいとしたチームづくりができたとしても、メンバー間の相互作用を生み出し、中長期的に成果をあげ続けるチーム力を生み出すことは難しいでしょう。
ビジネスにおいては、課題解決力も集団維持力も優れた「PM型」が理想のリーダー像だといえます。
アイオワ研究にみるリーダー像
アイオワ研究は、アメリカの心理学者クルト・レヴィンの率いるチームが、アイオワ大学で行なった研究で、その結果から3つのリーダーシップ類型に分けられました。

専制型は、リーダーが意思決定するだけでなく、ルールや手順まで決めるスタイルです。トップダウンで指示するため効率的であり、メンバーが未熟な場合でも短期的には高い成果をあげる可能性があります。しかし、ンバーに裁量がないことから、メンバーの成長を阻害し、不満が溜まる原因にもなります。
放任型は、メンバーが裁量を持ち、リーダーが関与しないスタイルです。個々のメンバーが高度な知識や技術を有するチームは高い成果が出る可能性があります。しかし、チームとしてのまとまりがなく、相乗効果を期待できないため、チームとして中長期的に成果を上げ続けることが困難となります。
民主型は、メンバーの自主性やディスカッションを重視するため、短期的には専制型や放任型と比べて効率が低くなります。しかし、長期的にはメンバー個々とチーム、両方の成長を期待でき、生産性が向上して高い成果を上げられるようになります。
アイオワ研究では、民主型が理想のリーダー像とされています。
なお、理想とされるリーダー像は時代によって変遷し、多様性を尊重する現在は、「サーバント(支援)型」のリーダーシップも注目されています。様々なリーダーシップを知り、チームと自身にとって最適なリーダー像を目指すことが必要だといえるでしょう。
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まとめ
上意下達が当たり前であった時代には、リーダーの統率力が重視され、先頭に立って引っ張るタイプのリーダーが優秀だとみなされる傾向にありました。しかし価値観が多様化したいま、理想的なリーダーのあり方は組織の目的によって異なります。
一方、どのようなリーダーになりたいのかを具体的にイメージし、リーダー自身が常に成長と自己研鑽を意識することは変わらず大切なことです。
大企業から中小企業まで、企業規模や業種を問わず幅広く経営コンサルティング活動を行なう小宮一慶氏は、リーダーの心得として、「ケンタッキー・フライド・チキン」の創業者カーネル・サンダースの言葉をあげています。
できることはすべてやれ、やるなら最善を尽くせ
65歳になってからビジネスを始めたサンダースは、フライドチキンのレシピを1000店舗以上に持ち込んで断られ続けましたが、この言葉のとおり、実現できるまであらゆる行動をし続け、成功したのです。
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リーダーに必要な5つの要素を参考に、自身にとっての理想のリーダー像、自身にあったリーダーのあり方について考えてみてください。

著者
株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所
1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。