経営者がいま読むべき6冊 「パーパス」編

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ミッション、ビジョンに加える新しい概念としてパーパス(社会での存在意義)に注目が集まっています。パーパスは製品やサービス、顧客や社会との関係に影響を与えるだけでなく、組織や人を変える力も持ちます。今回は、パーパスの本質がわかる6冊を取り上げました。

①『ケースでわかる 実践パーパス経営』

伊吹英子、古西幸登著 日経BP 2,240円(税込)

野村総合研究所研究員である両著者は、パーパスを「揺らぐことのない社会的な存在意義」と定義します。その存在意義は、「組織や個人が、なぜ、社会に存在しているか」という根源的なものであるとしたうえで、「パーパスと社是、ミッション、ビジョンは何が違うのか」「どんな手順で進めていけばいいのか」などの素朴な疑問に答えながら、パーパスの考え方をかみ砕いて説明し、先進企業の事例を用いて解説します。

パーパス経営で重要なことは、社会における存在意義を明確に言語化し、社内外のステークホルダーから共感・共鳴を呼び起こすことにあります。それができている「パーパスが存在する組織」は、たとえ経営や事業環境において大きな変化にさらされても、「ぶれない経営」を実現できることが経営に対する最大の効用であると語ります。

「パーパスの企業経営への活かし方には、組織の数だけ答えがある」と語る両著者は、ソニーグループやオムロンなどの大手企業から鎌倉投信や飯尾醸造などの中堅中小企業まで、国内企業を中心にパーパス経営の事例を取り上げます。

例えば、京都で機械加工を行う従業員約130名のHILLTOPでは、「理解と寛容を以て人を育てる」という経営理念(パーパス)が、日々の業務にどう活かされているかを紹介。同社は社内外に「人を育てること」が会社の最大の使命であることを明言し、仕事に対して人が為すべき知的なものか、ロボットがするべき単純なものかを考え、それまで「量産」に充てていた9割の資金を「試作」に振り替え、業態転換を図りました。同じものを量産する仕事は人が学ぶ幅が小さくなることがその理由です。また夜間は自動化を進めることで社員の夜勤を最小限にとどめ、プライベートの充実を目指しました。その結果、同社の「人を育てる」という考え方が共感を呼び、今では新卒のエントリーが多いときで3,000人を超えるようになり、数々の新事業が立ち上がるようになりました。

そのほか、ネスレ、イケア・ジャパン、西村証券、スターバックス コーヒー ジャパンなど14社のパーパス経営の中身が紹介され、タイトルどおり、パーパス経営がケースで理解できる内容になっています。

②『パーパス・マネジメント――社員の幸せを大切にする経営』

丹羽真理著 クロスメディア・パブリッシング 1,848円(税込)

米ギャラップ社の調査によると「熱意を持って仕事をしている」日本人はわずか6%と、海外諸国に比べて極めて低いという結果が出ています。著者はその理由を、日本人は働くことに幸せを感じていないからだと述べ、働く人が幸福度を上げるには、個人が明確なパーパスを持つことが必要だと語ります。

そのうえで、社員の幸福度向上をミッションとする新しい経営職CHO(Chief Happiness Officer)の設置を提唱します。CHOの具体的な仕事内容をはじめ、幸福度の高い社員ほど生産性が高く、想像力に富んでおり、イノベーションを起こす原動力として会社や業績に大きく貢献することや、幸福度が上がれば、会社の業績が上がるだけでなく、レジリエンス(心の回復力)も高まるとの研究結果も紹介。パーパスの共有を起点にした「社員の幸せを大切にする経営」が会社の業績に直結することを強調します。

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③『THE HEART OF BUSINESS(ハート・オブ・ビジネス)――「人とパーパス」を本気で大切にする新時代のリーダーシップ』

ユベール・ジョリー、キャロライン・ランバート著 樋口武志訳 英治出版 2,420円(税込)

著者は世界一の家電量販店である米国ベストバイの元CEO。CEOに就任した2012年当時、同社はアマゾンの攻勢を受け、業績・株価は低迷、社内の士気も低下し、先行きを危ぶまれる状況でした。著者は再建に取り組む過程で「パーパス」と「人との深いつながり」がビジネスの核心であることに気づきます。

企業にとって最も重要なことは「人」「ビジネス」「財務」の3つであること。そして「人」が優れ、従業員の育成や充実度が高いと「ビジネス」において製品やサービスの評価につながり、収益を上げることで「財務」においても優れた企業となると著者は確信します。原点は人にあるということです。

著者は「ノーブル・パーパス(大いなる存在意義)」を会社経営の要に据え、従業員参加型の意思決定プロセスを設計し、個人の夢と会社のパーパスを結び付けようとしました。社員が会社のパーパスに全精力を注げる環境を作り出せたことが、「ヒューマン・マジック(人間の持つ魔法のような潜在能力)」を解き放ち、企業の再建につながったと振り返ります。日本語版にあたっては元ソニーCEOの平井一夫氏が序文を執筆。「人」を大切にすることの本質やインパクトについて、説きます。

④『パーパス×サステナブル経営 不確実な時代の羅針盤 (日経MOOK)』

マーサージャパン、マーシュジャパン監修 日本経済新聞出版 1,980円(税込)

本書はパーパス経営、サステナブル経営の具体的な戦略として、いま日本企業が取り組もうとしているジョブ型雇用とリスクマネジメントに焦点を絞って解説しています。

かつて日本企業の多くが成果主義の導入に失敗したのは、責任と権限のバランスが悪かったからでした。同じ過ちを繰り返さないよう、ジョブ型雇用の導入に当たってはリスクを補う存在としてパーパスを持つべきだと語ります。ジョブ型雇用とパーパスは両輪の関係にあり、融合することでより強い組織を生み出すことが可能となり、サステナブル経営に欠かせないものであるとします。

不確実性が高まる時代には企業のリスクは質と量の両面で増加します。リスクマネジメントへの知見が深い執筆陣は、新型コロナウイルス感染症拡大や円高のように、過去に経験したことがない大きな危機が日本企業に迫るなか、リスクと正面から対峙するためには、パーパスが共有できているかどうかが重要な判断基準になると教えます。

⑤『パーパス経営 30年先の視点から現在を捉える』

名和高司著 東洋経済新報社 3,080円(税込)

本書ではパーパスを、日本企業で昔から語り継がれてきた「志(こころざし)」と読み替え、それを重視した経営を「志本経営」と呼びます。従来の資本主義経済では、企業経営の軸はMission(使命)、Vision(構想)、Value(価値観)の「MVV」で表現されていました。著者が提唱する「志本経営」は、それをPurpose(志)、Dream(夢)、Belief(信念)の「PDB」に置き換え、志に基づく顧客資産、人的資産、組織資産など、人の思いを中心とする目に見えない資産を経営の柱にするべきだと語ります。

また、志本経営はサステナビリティ、デジタル、グローバルズの3つのメガトレンドの中で花が開くとして、それらを新SDGsと呼びます。現行のSDGsがゴールを2030年に置くのに対し、新SDGsは2050年を目指すことで日本企業は再び世界に向けて輝くことができると教えます。成長を続けるための経営の思想と、具体的なマネジメントの方法を30年先の視点から解き明かしていきます。

⑥『近江商人の哲学「たねや」に学ぶ商いの基本』

山本昌仁著 講談社現代新書 946円(税込)

パーパスを説明するとき、よく使われるのが、売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」と、まず相手が喜ぶことを考える「先義後利」に象徴される近江商人の商売道です。滋賀県近江八幡市に本社を置く「たねやグループ」は、縮小する和菓子業界の中にありながら「現代の近江商人」として成長を続けています。

150年前から近江八幡で菓子を作り続けてきた同社の経営理念(パーパス)は「地元への貢献」です。生まれ育った地域や社会に貢献すること、環境を保護すること、持続可能な発展のあり方を考えることの大切さが、「数字はあとからついてくる」を経営哲学とする、同グループCEOである著者の言葉で語られます。

それを体現したのが同社の旗艦店である「ラ コリーナ近江八幡」です。広大な敷地に、あえてほかの近代的な収益施設は設けず、昔ながらののどかな田園風景を再現。年間300万人近くが訪れる近江八幡の最大の観光名所となって地元への貢献を果たしています。地方の中小企業であってもパーパスが必要なこと、そしてパーパスに忠実な経営が人々の共感・共鳴につながることが教えられます。

経営者がいま読むべき6冊 「マネジメント」編

[編集] 一般社団法人100年企業戦略研究所
[企画・制作協力]東洋経済新報社ブランドスタジオ

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