100年企業レポート vol.20 群馬編
目次
はじめに
日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。
1.群馬県の100年企業に関する分析
日本列島の中央部、内陸に位置する群馬県。流域面積日本一を誇る利根川は、みなかみ町の大水上山を水源として関東地方を北から東へ流れており、その流域は1都5県に渡る。そのような豊富な水が流れる群馬県では、多くのダムや用水路が作られており、近年では、その水力を主力とした水力発電や小水力発電の取り組みが進んでいる。県内には多くの発電所が作られ、国内有数の発電規模を誇っている。
群馬県の100年企業数は、577社であり、全国22位である。
また群馬県は、草津や伊香保、水上、四万をはじめとする有数の温泉地として知られている。その源泉数は453にも渡り、群馬県の温泉地は毎分4,000リットルもの温泉が湧くと言われている。泉質や種類も豊富であり、「自然湧出量日本一(草津温泉)」や「日本三大美人の湯(川中温泉)」、「天下一の露天風呂(宝川温泉)」など多くの人に知られる観光地として栄えている。
本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、群馬県の特性を分析した。
群馬を牽引する製造業が、
高齢化による労働人口減少を緩やかにしている
群馬県は、東京にアクセスしやすい立地や高速道路や新幹線の発達により、生産や物流の拠点として発展している。また、県民所得は比較的高く、物価が安いため暮らしやすい県といえる。高齢化による労働人口の減少が進んでいるものの、働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)は、自動車や電気・電子関連の製造業が牽引している。また、工場で働く外国人が多いため、外国人居住者も多くなっている。
このように群馬県ではものづくり産業が盛んであり、県の経済を支えている。
2.群馬県の100年企業データ
①創業年は『明治後期』が最多
創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比42.3%であった。次いで『明治前期』の25.4%、『大正以降』の19.1%、『江戸時代』の11.8%の順である。
日本三名泉のひとつである草津温泉は、江戸時代には一般庶民から文化人、武士まで多くの人々が訪れたとされている。その他にも多くの温泉地があるため、群馬県には『旅館・ホテル』が多い。また草津温泉に向かう旅人や地元の人のために酒造りが行われたことにより、酒造りが盛んになった。
②創業年TOP5
群馬県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の小保方鋼機株式会社は、全国で24位となっている。
③市町村別は『前橋市』が最多
市町村別100年企業数では前橋市が130社で最多であった。
1位の前橋市では、『建築工事業』が7社と最も多く、次いで『旅館・ホテル』が4社、『内装工事業』、『他に分類されないその他の卸売業』、『呉服・服地小売業』、『婦人服小売業』、『他に分類されないその他の小売業』の5業種がそれぞれ3社の順である。
2位の高崎市は、100年企業数127社であり、業種別に見ると『その他の産業機械器具卸売業』、『燃料小売業』、『貸事務所業』の3業種がそれぞれ4社と最も多い。
3位の桐生市は、100年企業数63社であり、業種別に見ると『一般土木建築工事業』が4社と最も多く、次いで『建築工事業』、『綿・スフ織物業』、『酒小売業』の3業種がそれぞれ3社である。
④産業は『製造業』が盛ん
産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が298社(構成比51.6%)と最も多かった。次いで、『製造業』93社(同16.1%)、『建設業』83社(同14.4%)の順である。
群馬県では、繊維・食品・木工など地域資源を生かしたさまざまな地場産業が県内各地に根付いている。そして現在は、かつて繁栄した絹産業や航空機産業の技術を基礎として、自動車産業や重化学工業が発展し、群馬県の経済を支えている。さらに次世代の産業として「ロボット産業」、「医療産業」などにも力を入れているのである。
各方面へアクセスが良い群馬県は、物流拠点施設や工場、産業施設の立地に有利なエリアとして注目されている。
⑤業種は『旅館・ホテル』が最多
業種別では、『旅館・ホテル』が25社で最多であった。群馬県には自噴湧出量日本一の草津温泉や、情緒あふれる石段の湯の町である伊香保温泉など、宿泊施設のある温泉地が多い。歴史を持つ古湯もあることから、古くから続いている『旅館・ホテル』が多いのである。
その他上位には、『一般土木建築工事業』や『木造建築工事業』などの建設業も多い。関東地方と信越地方をつなぐ交通の要衝であった群馬県では、道路や橋梁、ダム、砂防堰堤、流路工、トンネルなどの整備が進んだためと考えられる。
かつては養蚕業が発展し、世界遺産の富岡製糸工場などで製糸業、繊維業が栄えていた。しかし時代の変化とともに衰退し、現在はわずかとなっている。
⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多
資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比46.0%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が32.8%、『5千万円以上~1億円未満』が5.4%の順である。
資本金トップは株式会社東和銀行(業種:普通銀行)が386億円。以下、学校法人昌賢学園(業種:大学)が77億円、株式会社セキチュー(業種:大学)が29億円の順であった。
上位10社のうち金融業が3社、製造業が2社であった。
⑦従業員数は『10人未満』が6割超え
従業員別では、『4人以下』が構成比41.3%と最も多かった。次いで、『10~49人』が29.2%、『5~9人』が18.8%の順である。10人未満で6割を超える。
群馬県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社東和銀行は従業員1,000人を超え、澤藤電機株式会社と株式会社原田は従業員500人を超える。
⑧売上高は『1億円未満』が5割超え
売上高別では、『1億円未満』が構成比51.7%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が34.2%、『10億円以上~100億円未満』が13.0%の順である。
売上高上位10社のうち、卸売・小売業と製造業が各3社で最も多かった。
⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は7社
群馬県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は25社であり、構成比では全国33位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は7社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは、産業別で見ると卸売・小売業が3社で最も多い。
データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。
※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。
※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。
※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。
※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
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著者
株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所
1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。