100年企業レポート vol.24 岡山編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

岡山県の100年企業に関する分析

岡山街並み

「晴れの国」という愛称で呼ばれる岡山県は、日照時間と瀬戸内海の温暖な気候、豊かな大地に恵まれフルーツ大国として名高い。白桃やマスカット、ピオーネなどが生産され、品質の高さから国内外問わず評価されている。また、繊維、農業機械、耐火物などの地場産業が盛んである。この地場産業は、中国地方の他県と比べバラエティに富んでいることも特徴といえる。

岡山県の100年企業数は、659社であり、全国19位である。

岡山県には、江戸時代に天領として栄えた町並みを残す「倉敷美観地区」や、日本三大庭園のひとつである「岡山後楽園」など落ち着いた歴史スポットが多いのも特徴のひとつ。慶長2(1597)年に築城した岡山城は、全国的にも珍しい不等辺五角形の天守台をしており、関ヶ原合戦以前の古式を伝える天守として知られている。黒い下見板の姿から別名「烏城」と呼ばれており、月見櫓、西の丸西手櫓は重要文化財に指定されている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、岡山県の特性を分析した。

経済のサービス化の進展や人口の高齢化を背景に、
有効求人倍率は国内でも比較的高め

岡山県は、古くから瀬戸内海航路や陸上交通が発達し、都と九州や大陸などを結ぶ重要な拠点であった。現在では中国・四国地方の交通の要衝として発展している。『生産年齢人口数』や『事業所数』は中国地方では広島に次ぐ2位であるものの平均をやや下回る。しかしながら『有効求人倍率』は全国と比較して高いという特徴がある。これは産業の中核を担う製造業だけでなく、経済のサービス化の進展や人口の高齢化を背景に、小売業・飲食業・運輸業の発展や、医療・福祉分野の拡大といった非製造業のウェイトが高まっていることが要因であると考えられる。

2.岡山県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比42.9%であった。次いで『大正以降』の29.0%、『明治前期』の18.5%、『江戸時代』の9.4%の順である。
岡山土産の定番ともいえる『きびだんご』は、江戸時代初頭に吉備津神社に供えられていた黍団子が起源とされている。その後さらに改良され、江戸時代後期には備前を代表する銘菓として岡山藩のお墨付きを得る。明治時代になると、駅で売られるなどして岡山銘菓として有名になっていった。明治天皇に献上し、大変喜ばれたというエピソードもある。

②創業年TOP5

岡山県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の有限会社藤戸饅頭本舗は、全国で16位となっている。

③市町村別は『岡山市』が最多

市町村別100年企業数では岡山市が198社で最多であった。
1位の岡山市は、『生菓子製造業』が9社で最も多く、次いで『木材・竹材卸売業』が7社である。
2位の倉敷市は、100年企業数122社であり、業種別に見ると『清酒製造業』が6社で最も多く、次いで、『事務作業・衛生・スポーツ・学校服』や『畳製造業』を含めた4業種がそれぞれ4社である。
3位の津山市は、100年企業数34社であり、業種別に見ると『土木工事業』が3社で最も多く、次いで『酒類卸売業』、『紙卸売業』の2業種がそれぞれ2社である。

④産業は『製造業』が主要産業

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が324社(構成比49.2%)と最も多かった。次いで、『製造業』179社(同27.2%)、『サービス業』51社(同7.7%)の順である。
岡山県は製造業が主要産業であり、倉敷市の水島地区を中心に広がる臨海工業地帯には、石油、化学、鉄鋼など幅広い分野の高度な技術力を有する大企業が集積している。一方で、繊維産業や酒造業などの古くから続く地場産業の中には、全国トップシェアを誇るものや世界に進出しているものもある。
このように岡山県では、伝統的な地場産業から最先端の技術を持つ重工業まで多種多様な産業が発展している。

⑤業種は『清酒製造』が最多

業種別では、『清酒製造』が27社で最多であった。温暖な気候と豊富な水に恵まれた岡山県は、米や果物などの農産物が豊富であるため、日本酒だけでなく、焼酎、ワイン、ビールなど様々な酒類が生産されている。2014年には、地元の産物の魅力を発信し、地域産業の盛り上げと、郷土への愛着心と誇りの醸成を図るために「おかやまの酒による乾杯を推進する条例」が制定された。
2位は『婦人・子供服小売』であった。4位に『呉服・服地小売』が入っており、岡山県は繊維産業が盛んであった。江戸時代の綿花栽培に始まり、足袋、学生服、ジーンズというように時代に合わせて製造する品目を変え発展してきたのである。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比55.0%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が21.7%、『5千万円以上~1億円未満』が5.5%の順である。
資本金トップは国立大学法人岡山大学(業種:大学)が698億円。以下、株式会社中国銀行(業種:普通銀行)が151億円、株式会社林原(業種:ぶどう糖・水あめ・異性化糖製造業)が75億円の順であった。
上位10社のうち金融業が3社、製造業と建設業がそれぞれ2社である。

⑦従業員数は『10人未満』が5割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比37.7%と最も多かった。次いで、『10~49人』が27.6%、『5~9人』が20.3%の順である。10人未満で5割を超える。
岡山県の100年企業の多くは小規模企業であるが、国立大学法人岡山大学は従業員3,000人を超え、株式会社中国銀行、菅公学生服株式会社の2社は従業員1,000人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比46.3%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が35.8%、『10億円以上~100億円未満』が14.2%の順である。
売上高上位10社のうち卸売・小売業が4社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は7社

岡山県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は46社であり、構成比では全国10位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は7社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは、卸売・小売業と製造業がそれぞれ3社である。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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