100年企業レポート vol.23 徳島編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

徳島県の100年企業に関する分析

徳島街並み

四国の東側に位置する徳島県は、山と海の雄大な自然が広がり、春の花々や新緑、紅葉など四季折々の豊かな表情を楽しむことができる。県南北に位置する山間部では、多種多様な滝も楽しめ、なかには日本の滝百選にも選ばれた風情ある景観が点在する。代表的な観光地といえば、「鳴門海峡」の渦潮だ。瀬戸内海と紀伊水道の干満差により、激しい潮流が発生することによりみられる現象である。渦の大きさは、世界最大規模といわれ、毎年国内外問わず多くの観光客が訪れている。

徳島県の100年企業数は、309社であり、全国42位である。

一方で徳島県は人口減少が激化し、県外からの移住支援に力をいれている。「VS東京」をコンセプトに、東京にない魅力をPRし、地域創生や地域活性化を目指している。そんな地方創生の成功例が、「地方創生の聖地」といわれている徳島県の神山町だ。高速インターネット回線と自然豊かな環境に魅せられ、働き方の模索や本社機能分散を求めたIT企業が相次いでサテライトオフィスを開き、移住者が増加した。また徳島県の多くの自治体では、移住サポートだけではなく子育て環境の整備や取り組みが導入されており、暮らしの面で充実な施策を打ち出している。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、徳島県の特性を分析した。

『生産年齢人口数』や『事業所数』が少ないものの
住みやすさに重点を置いた施策が豊富

400年の歴史がある「阿波踊り」が有名な徳島県では、藍染めや木工業などの歴史ある地場産業も脈々と受け継がれており、『100年企業輩出率』が高い。『生産年齢人口数』や『事業所数』が少ないが、子育て環境の整備や女性のキャリアプランを描ける街づくりに特化した取り組みや、住みやすさを改善する対策を打ち出している。
また、徳島県は地価や物価が安く暮らしやすい地域であることから、貯蓄額が高いというデータがある。『相続税課税割合』がやや高くなっているのは、このようなことも要因であると考えられるのではないだろうか。

2.徳島県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比46.1%であった。次いで『大正以降』の21.6%、『明治前期』の21.2%、『江戸時代』の8.6%の順である。
徳島県の酒造りは江戸時代から続いている。山地が多く吉野川などの豊富な水源が多い酒造りに恵まれた環境であり、個性豊かな蔵元が多い。また、江戸時代から続く藍作は、徳島県の経済を支える主要な産業として発展した。そのため呉服・服地小売業が多い。その他には、砂糖や塩、煙草も主要な産業であった。

②創業年TOP5

徳島県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の馬居化成工業株式会社は、全国で126位となっている。

③市町村別は『徳島市』が最多

市町村別100年企業数では徳島市が119社で最多であった。
1位の徳島市では、『土木工事業』、『他に分類されないその他の卸売業』、『貸事務所業』の3業種がそれぞれ10社と最も多い。
2位の鳴門市は、100年企業数32社であり、業種別に見ると『生鮮魚介卸売業』が3社と最も多く、次いで『海藻加工業』、『蒸留酒・混成酒製造業』、『食卓用・ちゅう房用陶磁器製造業』、『呉服・服地小売業』の4業種がそれぞれ2社である。
3位の阿南市は、100年企業数26社であり、業種別に見ると『建具製造業』が3社と最も多く、次いで『一般製材業』が2社である。

④産業は第2次産業が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が153社(構成比49.5%)と最も多かった。次いで、『製造業』76社(同24.6%)、『建設業』33社(同10.7%)の順である。
徳島県は第2次産業が盛んであり、製造業が占める割合が高い。製造品出荷額を見ると、化学、電子部品、電気、食料、紙などが上位である。世界一のLED製造会社をはじめとする多くの企業が工場を構えており、徳島県の製造業を牽引しているのである。また、独自の技術力で高い世界シェアや国内シェアを有する企業が多いことも、徳島県の特徴であると言える。
しかし最近では、サービス業や医療・福祉などの就業率が上がっており、第3次産業へのシフトが進んでいる。

⑤業種は『婦人・子供服小売』が最多

業種別では、『婦人・子供服小売』が11社で最多であった。上位には『呉服・服地小売』も入っており、これらは江戸時代から続く藍産業に由来すると考えられる。
2位は『土木工事業』が9社であった。徳島県は塩が主要産業であり、多くの塩田があった。そのため塩田の整備事業や、吉野川などの治水事業が明治時代から行われていた。こうした自然豊かな徳島県の都市基盤の整備のため、同率5位にも入っている『一般土木建築工事業』などの工事業が多いのである。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比50.2%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が28.9%、『5千万円以上~1億円未満』が5.7%の順である。
資本金トップは株式会社阿波銀行(業種:普通銀行)が234億円。以下、株式会社徳島銀行(業種:普通銀行)が110億円、阿波製紙株式会社(業種:塗工紙製造業)が13億円の順であった。
上位10社のうち製造業が6社である。

⑦従業員数は『4人以下』が最多

従業員別では、『4人以下』が構成比41.4%と最も多かった。次いで、『10~49人』が28.1%、『5~9人』が19.0%の順である。10人未満で約6割を占める。
徳島県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社阿波銀行は従業員1,000人を超え、株式会社徳島銀行、学校法人村崎学園の2社は従業員500人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比49.8%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が33.8%、『10億円以上~100億円未満』が12.5%の順である。
売上高上位10社のうち製造業が4社、金融業が2社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は3社

徳島県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は15社であり、構成比では全国25位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は3社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは3社とも卸売・小売業であるが、本業以外で貸事務所業を行っている企業は少ない。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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