世界で活躍できる子供に育てるために親ができること

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※本記事は「ダイヤモンドオンライン」に2024年1月18日に掲載された記事の転載です。

日本経済復活およびビジネスパーソン個人の成長の秘訣を示した『CFO思考』が、スタートアップ業界やJTCと呼ばれる大企業のビジネスパーソンを中心に話題となっている。5刷3万3000部(電子書籍込み)を突破し、メディアにも続々取り上げられている話題の本だ。
本書の発刊を記念して、著者の徳成旨亮氏と、多摩大学大学院教授の堀内勉氏の対談が実現。「世界で活躍できる子に育てるために親ができること」「ビジネスパーソンの教養」「企業倒産の意味」といったテーマについて、6回にわたってお届けする。(撮影/疋田千里、構成/山本奈緒子、取材/上村晃大)

育児をするうえで
お金並に大切なものとは

――若い人は一度は外の世界を見るべきとのことですが、日本人が海外に出るにあたって、どういうルートで出るのが一番望ましいのでしょうか。たとえばすでに働いているという場合、「ここで心機一転海外へ」となると、なかなかルートが限られてくると思うのですが。

堀内勉(以下、堀内) 大企業だったら、海外勤務をさせてくれるところはありますよね。もちろん希望が通るかどうかはわかりませんが。

徳成旨亮(以下、徳成) 今は通りますよ。行きたいという人が少ないですから。一時はすごい減っていて、最近はまた少し増えてはきているんですけど、相変わらず少ないことには変わりない。

堀内 だから大企業で働いているなら、「とにかく行かせろ」と言い続けるのはひとつの方法ですし、叶わないなら会社をいったん辞めて行ってもいいんじゃないでしょうか? だって今は、大卒20代の離職率って3割ぐらいなんでしょ?

徳成 そうですね、みずから辞める若者は多いですね。

堀内 そうしたら、辞めて別の日本企業に転職するかわりに、海外の企業に行くという手もあると思います。もちろん英語がそこまでできない場合、周りはみんな外国人のような外資系企業にいきなり行くのはしんどいけど、海外の日本企業に就職するとかならできるでしょう。

質問の意図と外れてしまうかもしれませんが、私はやはり10代のうちに海外に行く必要があると思っています。それこそユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン(UWC ISAK JAPAN)代表理事の小林りん氏のように、自分の意思で海外の高校に行くとか。

彼女はもともとは日本の有名進学校にいたのですが、日本の大学受験制度を見て、これではダメだと思い立ってUWCというグローバルな教育の団体に応募して、UWCのカナダ校・ピアソンカレッジに転校したのですが、そのような日本人は非常に珍しいと思います。

ですから、自分自身の意思で海外に行くことも大事ですが、親世代が自覚的に子どもをサポートしてあげることも大切だと思っています。もちろんそうなると経済力があるというのがひとつの前提にはなってしまいますが。

アメリカやスイスのボーディングスクールなどは、奨学金の制度はあるにせよ、年間の授業料が1000万円くらいかかってしまうので、本当に裕福でなければ厳しいですが、北欧とかカナダならそこまで授業料が高くはないし。あと最近は、アジアに留学する人も増えています。

とにかく何らかの形で海外に出してあげるというのが必要だと思っています。文部科学省が官民協働でやっている「トビタテ! 留学」とか、留学費用を支援してくれる制度があって、あれはかなりの人数を支援していますよね。

親ガチャというと、親がすごくお金持ちだったり社会的地位があったり、というイメージが強いですが、子どもの生き方について適時適切なサポートをしてあげる親かどうかも親ガチャな側面があるのかなと感じています。

いくらお金があっても、とにかく受験勉強をさせていい大学に行かせて、それでいわゆるJTC(伝統的な日本の大企業)に就職したら嬉しいというような価値観の親だと、けっこう厳しいなという思いもあって。相変わらず昭和の価値観を押し付けるような親のもとで育ってしまうと……。

徳成 難しいですよね。今でも幼い子どもを持つ親世代の人たちを見ていると、やっぱり昔ながらの価値観なんですよね。だから塾漬けだったり、偏差値信奉だったり。うーん、この若い優秀な子たちにこの教育で、日本はどうなるんだろう、と不安に思ってしまう。みんなとは言わないけど、そのうちの何%かだけでも海外で勉強させてあげたいなと、思ってしまいます。

堀内 受験勉強のゲームのルールというのはローカルルールなので、外では通用しないですからね。そう考えると、使ったエネルギーが全然報われない。

日本では教育の時点で二極化が進んでいる

徳成 それよりも英語ができるようにしてあげたほうが絶対にいい。海外留学も含め、若いうちに外と触れ合うほうがいい。だから僕、余談ですけど、10数年前、民主党政権にも自民党が政権復帰後も政府に「教育資金贈与信託」を作るよう働きかけたんです。

これは、祖父母が孫へ教育資金を提供しやすくするための信託。日本国に残すのは教育だと僕はずっと思っているので、そこへの税制優遇をしましょうよ、と。そうすれば子育て世代の負担が軽くなって消費が拡大し、経済も回りますしね。

問題は、どういう教育を次世代を担う子どもたちに与えていくべきか。「正解はひとつ」であり「正解をひたすら覚える」という従来型の日本の教育を与えるのは、それは違うんじゃないの? と僕なんかは思っているわけです。

堀内 私の少し下の世代の友人たちは、ほぼ子どもをインターナショナルスクールに行かせているか、もしくは海外の学校に行かせていますね。だからなのか、日本は今こんなに子どもが減っているのに、インターナショナルスクールは開校ラッシュなんですよ。私の家の近所にもインターナショナルプリスクールがありますが、そこも大人気ですごい倍率です。

一方、日本の学校は「潰れる潰れる」って大騒ぎしているのに、何なんだろうこれは、と思います。教育も資本主義的な競争になっていて、勝ち負けがハッキリ出てきているというか……。

徳成 均質性というのは日本社会の良さでもありましたけど、今や教育から二極化が始まっているのかもしれないですね。とはいえ、日本の平穏性とか安定性みたいなものは、この均質な社会によって保たれているわけでもありますから、そこは二律背反ですね。それに、個々人レベルで考えても、どっちの教育を授けるべきか難しいところもありますよね。

――前回の記事で話題になったUWC ISAK JAPAN(2014年に開校した長野県軽井沢にある全寮制の私立インターナショナルスクール)の入学案内を調べたことがあるのですが、お金も高いし(※)、倍率もすごい。どこをどう転んだら通えるんだろう、と思いました。

※UWCはその建学の精神から、7割の子供たちに奨学金を出しており、実際の授業料はそれほど高くない

堀内 UWC ISAKは世界中から生徒が集まってきますからね。高校3学年の全生徒数約200人のうち、日本人は40人ほどしかいません。公用語が英語ですし、お金があったとしても、そもそも英語がかなりできないと入れない。

UWC ISAKでは中学生を対象としたサマースクールを実施していますが、そこで子どもが英語をけっこう喋れるかとか、友達となじんでいるかとか、そこからセレクションが始まっていると聞きます。あとは親が入れることに一生懸命でも、本人がそれほど積極的でないと入れない、とか。

――クリアしなければいけない壁が多すぎて、どう逆立ちしても苦しいなと思いました。でも、そういうところに入る日本人が増えていかないと、世界でルールメイクする側に行けないということですよね。

堀内 そうですが、ただインターナショナルスクールに行けばいいという話では決してなくて。やはり自覚的に行かないと。そうでないと、英語はまあまあ喋れるけれどネイティブではない、しかも日本語が怪しくて漢字はあまり書けません、というような人になってしまうと、それはそれで大変ですから。

徳成 だから、どちらが幸せなのかわからないのは確かです。お金をかけてもらって、そうやってインターナショナルスクールとか海外の学校とか行ったとしても、堀内さんが今おっしゃったように中途半端になって、世界どころか日本でも使えないヤツ、となってしまうリスクはかなりある。

親にお金があるからそれなりの生活はできるかもしれないけど、それで幸せな人生なの? という話になってきますよね。

だからおじいちゃんおばあちゃんが教育資金を出してあげてインターナショナルスクールに行かせたとしても、あるいは親が「普通の生活をさせたい」と日本の学校に行かせたとしても、結局は自分で切り開くしかないんですよね。だけど、外の世界を見せてあげるのは大事かな、と。

僕は娘が小学生のときに、タイでアユタヤからバンコクまでのクルーズ船、それも白人ばかりのツアーに連れて行ったんですよ。そのチャオプラヤ川では娘と同じぐらいの歳の子たちが、川の水で髪の毛を洗っている。それを子連れの白人の観光客がワインを飲みながら見ている。アジア人は僕たち親子だけ。

そういう光景を見てどう感じるか、そしてそういった体験を自分の人生にどう生かすかは彼女が決めることなので。親はただ機会とヒントを与えるだけで、その先はどうにもできない。

堀内 ただ、環境を変えないことには人間は変わらない、というのもまた確かで。「人間が変わる方法は3つしかない。1つは時間配分を変える、2番目は住む場所を変える、3番目は付き合う人を変える。この3つの方法でしか人間は変わらない」というのは、コンサルタントの大前研一氏の有名な言葉です。一番無駄なのは「決意を新たにすること」だとも言っています。新年の誓いみたいなものは最も意味がない、と。

これは要するに、環境を変えろということ。環境が変わると人間は変わるので、子どものうちに親が環境をセットアップしてあげないといけない。そこからどうするかは本人次第ですが、その前に子どもが自分で環境を変えるのは、よほどの子どもでない限り無理ですから。

徳成 以前に対談させてもらった、起業家・投資家として活躍されている朝倉祐介さんは、中学生のときに、騎手になりたいから高校には行かず競馬学校に行く、と決断した。そういう子どもはなかなかいないですからね。

堀内 1000人に1人ぐらい……。

徳成 だからそのあたりは親が環境を作ってあげないと。もちろん普通に日本の学校に行くのでもいいんですよ。でもその中で、海外の人と触れられる場に何らか行かせてみるとか、サマースクールに通わせるとか、機会を与えてあげればいい。極端な話、アニマルスピリッツを育てるには、子育て論から議論する必要があると思います。

お話を聞いた方

徳成 旨亮 氏

株式会社ニコン取締役専務執行役員CFO

慶應義塾大学卒業。ペンシルベニア大学経営大学院(ウォートン・スクール)Advanced Management Program for Overseas Bankers修了。 三菱UFJフィナンシャル・グループCFO(最高財務責任者)、米国ユニオン・バンク取締役を経て現職。日本IR協議会元理事。米国『インスティテューショナル・インベスター』誌の投資家投票でベストCFO(日本の銀行部門)に2020年まで4年連続選出される(2016年から2019年の活動に対して)。本業の傍ら執筆活動を行い、ペンネーム「北村慶」名義での著書は累計発行部数約17万部。朝日新聞コラム「経済気象台」および日本経済新聞コラム「十字路」への定期寄稿など、金融・経済リテラシーの啓蒙活動にも取り組んできている。『CFO思考』は本名での初の著作。

堀内 勉

一般社団法人100年企業戦略研究所 所長/多摩大学大学院経営情報学研究科教授、多摩大学サステナビリティ経営研究所所長

多摩大学大学院経営情報学研究科教授、多摩大学サステナビリティ経営研究所所長。東京大学法学部卒業、ハーバード大学法律大学院修士課程修了、Institute for Strategic Leadership(ISL)修了、東京大学 Executive Management Program(EMP)修了。日本興業銀行、ゴールドマンサックス証券、森ビル・インベストメントマネジメント社長、森ビル取締役専務執行役員CFO、アクアイグニス取締役会長などを歴任。 現在、アジアソサエティ・ジャパンセンター理事・アート委員会共同委員長、川村文化芸術振興財団理事、田村学園理事・評議員、麻布学園評議員、社会変革推進財団評議員、READYFOR財団評議員、立命館大学稲盛経営哲学研究センター「人の資本主義」研究プロジェクト・ステアリングコミッティー委員、上智大学「知のエグゼクティブサロン」プログラムコーディネーター、日本CFO協会主任研究委員 他。 主たる研究テーマはソーシャルファイナンス、企業のサステナビリティ、資本主義。趣味は料理、ワイン、アート鑑賞、工芸品収集と読書。読書のジャンルは経済から哲学・思想、歴史、科学、芸術、料理まで多岐にわたり、プロの書評家でもある。著書に、『コーポレートファイナンス実践講座』(中央経済社)、『ファイナンスの哲学』(ダイヤモンド社)、『資本主義はどこに向かうのか』(日本評論社)、『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』(日経BP)
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※本記事は「ダイヤモンドオンライン」に2024年1月18日に掲載された記事の転載です。
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