100年企業レポート vol.25 熊本編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

熊本県の100年企業に関する分析

街並み_熊本

2016年に震災、2020年7月に記録的な豪雨に見舞われた熊本県。県内各地の観光施設が甚大な被害を受けたが、徐々に観光地として魅力を取り戻しつつある。県内には、日本三大名城のひとつとされる熊本城を中心とした市街地エリアのほかに、世界有数のカルデラとも数えられ、その活火山から生み出された雄大な自然・景観が魅力の阿蘇山など、歴史的建造物と大自然が多数点在する。

熊本県の100年企業数は、438社であり、全国28位である。

阿蘇山の火山活動によって多くの恩恵を受けている。阿蘇山の噴火によって形成された地層は水が浸透しやすく、地下に大量の地下水を貯水しているため多くの湧水スポットが存在する。ミネラル成分がバランスよく含まれており水量の豊富さだけでなく、水質や味の良さにも定評がある。また、阿蘇山周辺をはじめ熊本県内には多くの温泉が湧いており、さまざまな効能を体験できることから多くの観光客を集めている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、熊本県の特性を分析した。

熊本市の再開発による地価上昇が見込まれる一方
都心部と郊外の二極化が予想される

熊本県は、世界最大級のカルデラを持つ阿蘇山や美しい島々からなる天草諸島がある自然豊かな地域である。人口減少が進んでおり、働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)は九州地方では上位であるものの、平均を下回る状況である。そこで熊本県では産業振興策として企業誘致を積極的に行い、現在では半導体関連企業の一大集積地となった。さらに、政令指定都市である熊本市では再開発が進んでおり、今後地域活性化による地価上昇などが見込まれる一方で、都心部と郊外の二極化が進むことが予想される。

2.熊本県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比46.4%であった。次いで『大正以降』の22.9%、『明治前期』の21.7%、『江戸時代』の8.7%の順である。
江戸時代に「古町」と呼ばれる町人町が熊本城の城下町として発展し、明治時代になると職人や商人たちにより職や食文化が受け継がれ、商業・経済の中心地となっていった。数々の商店、卸問屋、製造業、銀行、デパートなどが立ち並び、物流の拠点として発展した。

②創業年TOP5

愛知県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の園田屋は、全国で82位となっている。

③市町村別は『熊本市』が最多

市町村別100年企業数では熊本市が163社で最多であった。
1位の熊本市は、『貸事務所業』が7社で最も多く、次いで『一般病院』が5社である。
2位の八代市は、100年企業数35社であり、業種別に見ると『食肉卸売業』が6社で最も多く、次いで、『畳卸売業』、『肥料・飼料卸売業』の2業種がそれぞれ2社である。
3位の天草市は、100年企業数28社であり、業種別に見ると『船舶製造・修理業』が2社で最も多く、それ以外の業種は各1社であり、さまざまな業種が存在している。

④産業は『農業』が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が209社(構成比47.7%)と最も多かった。次いで、『製造業』103社(同23.5%)、『サービス業』56社(同12.8%)の順である。
熊本県は農業が盛んであり、恵まれた自然環境と地域の特性を活かした農産物が生産されている。平成29年の農業産出額は、全国で6位であり、品目はトマトやい草などが全国トップの生産量である。ちなみに熊本では辛子レンコンが有名だが、レンコンの生産量は全国6位であった。(農林水産省「作物統計」より)
100年企業で見ると、農業6社は全国8位である。

⑤業種は『蒸留酒・混成酒製造』が最多

業種別では、『蒸留酒・混成酒製造』が19社で最多であった。人吉市または球磨郡で造られている米焼酎「球磨焼酎(くまじょうちゅう)」がほとんどである。戦国時代に中国や東南アジアなどの大陸から伝わった蒸留技術がお米と融合することで生まれた球磨焼酎は、以来400年以上受け継がれている。これらを背景にスコッチウィスキーやボルドーワインと同じように、世界貿易機関(WTO)から産地呼称を認められ、そのブランドが確立されている。
2位は『旅館・ホテル』が15社であった。阿蘇や玉名市といった古くから続く温泉地が多いため、『旅館・ホテル』が多い。

⑥資本金は『1千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円未満』が構成比40.8%と最も多かった。次いで、『1千万円以上~5千万円未満』が39.4%、『5千万円以上~1億円未満』が3.1%の順である。
資本金トップは富田薬品株式会社(業種:医薬品卸売業)が24億円。以下、株式会社岩永組(業種:建築工事業)が3億円、浜田醤油株式会社(業種:しょう油・食用アミノ酸製造業)が2.4億円の順であった。
上位10社のうち製造業と建設業がそれぞれ3社である。

⑦従業員数は『10人未満』が5割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比33.6%と最も多かった。次いで、『10~49人』が30.2%、『5~9人』が25.1%の順である。10人未満で5割を超える。
熊本県の100年企業の多くは小規模企業であるが、富田薬品株式会社は従業員500人を超え、医療法人田中会、一般社団法人天草郡市医師会、医療法人起生会の3社は従業員300人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比45.4%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が41.5%、『10億円以上~100億円未満』が11.8%の順である。
売上高上位10社のうち卸売・小売業が6社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は4社

熊本県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は23社であり、構成比では全国22位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は4社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは卸売・小売業とサービス業がそれぞれ2社であり、本業以外に貸事務所業を行っている企業は少ない。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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