100年企業レポート vol.26 愛知編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

愛知県の100年企業に関する分析

街並み_愛知

愛知県は、中部地方の県では最も人口が多く、県庁所在地の名古屋は中部地方で最大の人口を擁している。トヨタ自動車を筆頭に自動車関連企業が多く存在することでも有名である。愛知県は、古くは「尾張」「三河」と呼ばれ、戦国時代には、織田信長や豊臣秀吉、徳川家康ら多くの武将がこの地域で活躍した。徳川家康が築城した名古屋城や、豊臣秀吉を祀った豊国神社、「桶狭間の戦い」の舞台とされる桶狭間古戦場など、武将ゆかりの地が数多く残されており、武将たちの生きた証を随所に感じることができることから、年間を通して多くの観光客が足を運んでいる。

愛知県の100年企業数は、1,758社であり、全国3位である。

また、愛知県の特徴として欠かせないのが「食」文化。いまでも醤油やみりん・味噌など多く醸造されており、発酵・醸造文化が盛んな地として名高い。地域独特の八丁味噌や溜まり醤油が、味噌カツや味噌煮込みうどん、ひつまぶしといった‟名古屋めし“を支えている。この‟名古屋めし“は全国区のグルメとして注目を集めている。2018年に名古屋市が行った観光客・宿泊客動向調査では、食事費消費額が堂々のトップを誇り、観光資源のひとつとなっている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、愛知県の特性を分析した。

陸海空と交通網が充実。今後リニア開業予定で
ビジネスエリアとしてさらに期待される

日本の中心に位置する愛知県は、古くから交通の要衝であった。現在は陸海空に交通網が整備されており、日本だけでなく世界との懸け橋となっている。事業所数や生産年齢人口は全国トップクラスであり、商業地価も上昇している。今後リニアの開業予定もあるため、ビジネスエリアとしてさらに需要が高まることが期待されている。
また、愛知県は相続税課税割合が東京都に次いで全国2位である。地価の上昇が所有する不動産の評価額に影響するためである。さらに高額所得者が全国2位と多く、貯蓄率も高いことも理由として挙げられる。

2.愛知県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比42.4%であった。次いで『大正以降』の30.3%、『明治前期』の17.4%、『江戸時代』の9.4%の順である。
江戸時代には、城下町として名古屋が大都市として発展し、衣類などの生活用品や食品や酒、和菓子などの贈答品の産業が盛んとなった。明治になると、鉄道開通や電力送電、名古屋港開港などのインフラ整備に伴う建設業も増えていき、さらに近代都市へと発展した。

②創業年TOP5

愛知県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の株式会社糀屋三左衛門は、全国で31位となっている。

③市町村別は『名古屋市』が最多

市町村別100年企業数では名古屋市が726社で最多であった。名古屋市をさらに区別で見ると、中区(204社)、西区(79社)、東区(64社)の順である。
1位の名古屋市では、『他に分類されないその他の卸売業』が26社と最も多く、次いで『貸事務所業』が27社である。
2位の豊橋市は、100年企業数116社であり、業種別に見ると『建築工事業』が6社と最も多く、次いで『土木工事業』、『その他の水産食料品製造業』、『他に分類されないその他の卸売業』の3業種がそれぞれ4社である。
3位の一宮市は、100年企業数91社であり、業種別に見ると『毛織物業』と『貸事務所業』の2業種がそれぞれ6社と最も多く、次いで『綿・スフ織物業』が5社である。

④産業は3産業で全国3位

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が779社(構成比44.3%)と最も多かった。次いで、『製造業』500社(同28.4%)、『建設業』184社(同10.5%)の順である。
愛知県は『建設業』、『製造業』、『卸売・小売業、飲食店』の3産業が東京都、大阪府に次いで全国3位である。その中でも『製造業』が愛知県の主要な産業として発展している。最も有名な産業は自動車産業で、県内には自動車関連の企業が数多く集積し、愛知県だけでなく、日本の自動車業界の発展を牽引していると言える。
こうした愛知県の製造業の歴史は、安土桃山時代に織田信長が全国から集めた職人たちが、さまざまな技術を伝えたことにより、ものづくりの技術が根付いたのだと言われている。

⑤業種は『貸事務所業』が最多

業種別では、『貸事務所業』が62社で最多であった。次いで『貸家業』が34社で2位、『土地賃貸』が23社で同率6位と上位に不動産業が多い。不動産業が盛んな大都市の特徴が表れている。
不動産業に次いで『呉服・服地小売』が32社で3位である。古くから尾張や三河は織物の産地であり繊維産業が栄えていたことから、繊維や呉服関係の企業が多い。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比62.1%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が14.6%、『5千万円以上~1億円未満』が8.4%の順である。
資本金トップは愛知県信用農業(業種:信用農業協同組合連合会)が1,984億円。以下、名古屋鉄道株式会社(業種:普通鉄道業)が962億円、国立大学法人名古屋大学(業種:大学)が723億円の順であった。
上位10社のうち製造業が4社、大学が3社である。

⑦従業員数は『10人未満』が約5割

従業員別では、『10~49人』が構成比32.1%と最も多かった。次いで、『4人以下』が29.7%、『5~9人』が21.7%の順である。10人未満で約5割である。
愛知県の100年企業の多くは小規模企業であるが、従業員3,000人を超える企業は6社あり、トヨタ紡織株式会社、名古屋鉄道株式会社の2社は従業員5,000人を超える。

⑧売上高は『1億円以上~10億円未満』が最多

売上高別では、『1億円以上~10億円未満』が構成比42.0%と最も多かった。次いで、『1億円未満』が35.4%、『10億円以上~100億円未満』が16.3%の順である。
売上高上位10社のうち製造業が6社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は29社

愛知県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は148社であり、構成比では全国5位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は29社存在しており、上場企業は2社であった。
貸事務所業との組み合わせで多いのは、卸売・小売業が12社と最も多く、次いで製造業が9社の順である。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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