100年企業レポート vol.38 三重編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

三重県の100年企業に関する分析

三重の街並み

三重県は日本高度経済成長の象徴である工業地帯「四日市コンビナート」があり、産業の街として発展してきた。かつては発展途中に大気汚染等の工業問題も発生したが、現在は快適な環境を取り戻している。四日市の工業地帯はダイナミックで、さまざまな角度から観賞を楽しむことができることから「3D夜景」呼ばれている。工場観賞愛好家からは「聖地」といわれており、全国の工業地帯・コンビナートを有力な観光コンテンツとして導く柱となった。

三重県の100年企業数は、678社であり、全国18位である。

日本神話における最高神「天照大神」を祭る重要な役割を持つ神社で、皇大神宮と呼ばれる「内宮」と、豊受大神宮と呼ばれる「外宮」を中心に125社のお宮とお社の総称である「伊勢神宮」があることでも有名である。また、伊勢神宮内宮の門前町の真ん中にある「おかげ横丁」は、江戸時代から明治期の伊勢の町並みが再現され、建築物が移籍・再現されている。妻入りやきざみ囲い、南張り囲いなど伊勢地方の伝統的木造建築も見ることができる。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、三重県の特性を分析した。

「伊勢神宮」を擁する歴史のある地域であることから
『100年企業輩出率』が高い

三重県は、お伊勢参り(お蔭参り)の名で知られる「伊勢神宮」を擁する歴史のある地域であることから、『100年企業輩出率』が高い。あわせて『有効求人倍率』も高く、これは伊勢神宮やF1グランプリなどの観光業や、四日市市を中心とした重化学工業の発展によるものと考えられる。
『相続税課税割合』は平均を上回っているものの、東海地方4県の中では一番低い。これは地価が低いことが原因と考えられる。しかし三重県は貯蓄残高が高いというデータがあるので、相続が発生する際には注意が必要である。

2.三重県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比40.5%であった。次いで『大正以降』の22.7%、『明治前期』の23.1%、『江戸時代』の13.2%の順である。
江戸時代、津城を中心とした城下町や伊勢参宮の街道などで、さまざまな商業が発展した。特に「伊勢木綿」という綿織物は大流行し、伊勢商人の手により江戸へと販路は広がった。また鳥羽や志摩では、素潜りで貝や海藻などを獲る「海女漁」が古くから行われており、水産業も多い。

②創業年TOP5

三重県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の辻内鋳物鉄工株式会社は、全国で128位となっている。

③市町村別は『四日市市』が最多

市町村別100年企業数では四日市市が126社で最多であった。
1位の四日市市では、『製茶業』が5社と最も多く、次いで『その他の水産食料品製造業』、『清酒製造業』の2業種がそれぞれ4社である。
2位の津市は、100年企業数115社であり、業種別に見ると『他に分類されないその他の卸売業』が5社と最も多く、次いで『建築工事業』、『その他の水産食料品製造業』、『生鮮魚介卸売業』の3業種がそれぞれ4社である。
3位の伊勢市は、100年企業数94社であり、業種別に見ると『他に分類されないその他の卸売業』が8社と最も多く、次いで『生菓子製造業』が6社である。

④産業は『製造業』が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が323社(構成比47.6%)と最も多かった。次いで、『製造業』179社(同26.4%)、『建設業』87社(同12.8%)の順である。
三重県は、古くから製造業が盛んなモノづくり県である。明治期には繊維工業が発展し、戦後になると、四日市の石油化学コンビナートが形成され重化学工業へシフトしていった。現在は、輸送用機械器具製造業、電子部品・デバイス製造業、化学工業などが、三重県の経済を支えており、平成29年の製造品出荷額は全国9位である。

⑤業種は『清酒製造』が最多

業種別では、『清酒製造』が23社で最多であった。年間を通じて寒暖差が激しい気候の三重県は、上質な酒米が生産され、紀伊山脈からの良質な伏流水にも恵まれているため、古くから酒造りが盛んであった。2016年の伊勢志摩サミットの乾杯に使われて一躍有名になった。
2位は『貸事務所業』が12社であった。本業が好調時に不動産を取得し、その後本業が縮小したケースがほとんどであり、東京をはじめとする大都市で多い傾向がある。ちなみに東海地方は『貸事務所業』がどの県も比較的上位であった。
「海女」が県の無形民俗文化財として指定されており、古くから水産業が盛んである。伊勢エビやカキなどの特産品に代表される『他の水産食料品製造』と『生鮮魚介卸』も同数4位に入っている。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比49.6%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が28.0%、『5千万円以上~1億円未満』が4.2%の順である。
資本金トップは株式会社第三銀行(業種:普通銀行)が374億円。以下、住友電装株式会社(業種:内燃機関電装品製造業)が200億円、株式会社三重銀行(業種:普通銀行)が152億円の順であった。
上位10社のうち製造業が5社である。

⑦従業員数は『10人未満』が6割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比39.2%と最も多かった。次いで、『10~49人』が28.2%、『5~9人』が24.4%の順である。10人未満で6割を超える。
三重県の100年企業の多くは小規模企業であるが、住友電装株式会社は従業員6,000人を超え、株式会社第三銀行、株式会社三重銀行、株式会社柿安本店の3社は従業員1,000人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比45.8%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が44.0%、『10億円以上~100億円未満』が9.0%の順である。
売上高上位10社のうち製造業が5社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は9社

三重県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は34社であり、構成比では全国24位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は9社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは、卸売・小売業が8社と大半を占める。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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