100年企業レポート vol.37 宮崎編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

宮崎県の100年企業に関する分析

宮崎

年間の平均気温17度と、一年を通じて温暖な地域である宮崎県。この温暖な気候を活かし野菜・果実等の生産が盛んで、牧畜業は乳牛・肉牛・豚・鶏のすべてにおいて全国有数の生産高を誇り日本有数の農業県として知られている。「みやざきグローバル戦略」に基づき、EUや北米市場などへも販路開拓を広げており、農産物の輸出量は年々拡大している。

宮崎県の100年企業数は、203社であり、全国46位である。

宮崎県は神話や伝説が多く残り、天孫降臨の舞台になった町「高千穂」がある。大昔に阿蘇山の噴火によりできた渓谷「高千穂峡」は、平均80mの断崖が約7kmも続いており、「五箇瀬川峡谷」として国の名勝・天然記念物に指定されている。ほかにも約1900年前に創建された縁結びの由緒ある神社である「高千穂神社」、世の中が闇に包まれたときに神々が話し合ったといわれる地「天安河原」など、多くの神話や伝説が存在し、「神々の里」としても知られている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、宮崎県の特性を分析した。

厳しい経済面である一方、自然環境の強みを活かした
取り組みにより全国的に有名となった日本有数の農業県

宮崎県は、太平洋に面した温暖な地域であり、自然環境に恵まれた日本有数の農業県である。しかし経済面では厳しい状況であり、6指標全て平均を下回っている。地域経済の活性化は重要な課題であるものの、国内の三大都市から距離が遠く、九州新幹線も宮崎を外れているため、産業集積も進みにくいというデメリットがある。そのような中で、宮崎県は自然環境の強みを活かした取り組みを実施した。県産食材「みやざきブランド」のアピールや都城地域の農工連携、日南地域の「日南海岸きらめきライン」などは、全国的に有名となった。

2.宮崎県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比42.8%であった。次いで『大正以降』の37.8%、『明治前期』の16.7%、『江戸時代』の2.8%の順である。
焼酎のイメージが強い宮崎県だが、日本酒発祥の地ともいわれており、西都市の都萬神社の境内に「日本酒発祥の地」の標柱が立てられている。日本酒の歴史も古くからあり、焼酎はさまざまな原料の銘柄が県内各地で造られているため、お酒に関わる業種が多い。

②創業年TOP5

宮崎県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の京屋酒造有限会社は、全国で1734位となっている。

③市町村別は『宮崎市』が最多

市町村別100年企業数では宮崎市が45社で最多であった。
1位の宮崎市は、『蒸留酒・混成酒製造業』や『呉服・服地小売業』を含めた5業種がそれぞれ2社で最も多い。
2位の都城市は、100年企業数37社であり、業種別に見ると『しょう油・食用アミノ酸製造業』、『蒸留酒・混成酒製造業』、『一般製材業』、『一般病院』の4業種がそれぞれ2社で最も多い。
3位の延岡市は、100年企業数23社であり、業種別に見ると『酒小売業』が3社で最も多く、次いで、『屋根工事業』が2社である。

④産業は『農業』が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が106社(構成比52.2%)と最も多かった。次いで、『製造業』48社(同23.6%)、『サービス業』25社(同12.3%)の順である。
宮崎県は農業が盛んであり、平成29年の農業産出額は、全国でも5位であった。他県に比べて耕地面積や農業者数が少ない条件下で、畜産や施設園芸の土地集約型農業経営などの知恵と工夫で農業産出額を伸ばし、宮崎牛やマンゴーなどの「みやざきブランド」を確立した。
100年企業においては、すべての産業が全国平均と比べると少ない状況であるが、6次産業化などの産業振興施策に堅実に取り組んでいる。

⑤業種は『蒸留酒・混成酒製造』が最多

業種別では、『蒸留酒・混成酒製造』が16社で最多であった。明治末期に焼酎に適した黒麹が発見されてから、宮崎県を含む南九州地域で焼酎造りが盛んになった。宮崎県は南北に長いという地理的要因から、いも、麦、そば、米、雑穀などさまざまな原料の本格焼酎が製造されているのが特徴であり、出荷量は5年連続で日本一を誇っている。(2019年10月時点)
宮崎県は県土の76%を森林が占めており、スギの生産量が28年連続で日本一であった。(農林水産省「2018年木材統計」より)全国的にも有名な日南の「飫肥(おび)杉」は、約400年前の元和時代に、藩の財政を助けるために植林されたのが始まりとされている。江戸時代には、良質な造船材として九州にとどまらず瀬戸内や韓国、中国まで輸出された。そのため『一般製材業』が上位である。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比39.4%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が33.3%、『5千万円以上~1億円未満』が2.8%の順である。
資本金トップは宮崎都城信用金庫(業種:信用金庫)が15億円。以下、都城信用金庫(業種:信用金庫)が6.2億円、ヤマエ食品工業株式会社(業種:しょう油・食用アミノ酸製造業)が1.7億円の順であった。
上位10社のうち製造業が4社、卸売・小売業が3社である。

⑦従業員数は『10人未満』が5割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比40.0%と最も多かった。次いで、『10~49人』が32.2%、『5~9人』が18.3%の順である。10人未満で5割を超える。
宮崎県の100年企業の多くは小規模企業であり、従業員500人を超える企業はない。従業員100人を超える企業は8社である。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比46.7%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が42.8%、『10億円以上~100億円未満』が9.4%の順である。
売上高上位10社のうち卸売・小売業が5社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は5社

宮崎県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は7社であり、構成比では全国36位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は5社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは卸売・小売業が4社であり、本業以外に貸事務所業を行っている企業は少ない。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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