100年企業レポート vol.47 奈良編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

奈良県の100年企業に関する分析

奈良の街並み

百人一首の歌でも知られ「いにしへの奈良の都」である奈良県には3つの世界遺産がある。日本独自の様式を確立したことから高く評価された「法隆寺地域の仏教建築物」や8つの資産で構成されている「古都奈良の文化財」、霊場に点在する社寺に加え自然が手つかずで残されている「紀伊山地の霊場と参詣道」。全国の都道府県の中では最多であり、日本が世界に誇る文化財の宝庫といえる。

奈良県の100年企業数は、372社であり、全国37位である。

日本一の桜の名所として知られる奈良県吉野山の桜は、約1300年前、修験道の開祖・役行者が行により日本独自の仏である金剛蔵王権現を祈った際、その姿をヤマザクラの木で刻みお祀りしたことが始まりといわれており、地元では信仰の対象として大切にされてきた。その数約3万本といわれ、そのほとんどが「シロヤマザクラ」であり、観賞用として江戸時代に誕生した「ソメイヨシノ」とは異なり、寿命が長く大木になることで知られている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、奈良県の特性を分析した。

伝統産業が多いため『100年企業輩出率』、
地価が高いエリアがあるため『相続税課税割合』が高い

奈良時代、平城京が置かれていた奈良県は、世界遺産をはじめとする歴史ある文化財や建造物が多く、世界中から観光客が訪れる観光都市である。歴史のある伝統産業も多く、『100年企業輩出率』が高い。しかし、少子高齢化や若年層の県外流出により、働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)は平均を下回る。遺跡の事前発掘調査が必要となる奈良特有の事情が、企業集積に影響している可能性も考えられる。
また、奈良県は『相続税課税割合』が高い。大阪のベッドタウンとして地価が高いエリアや上昇傾向のエリアもあるため、今後さらに注意が必要である。

2.奈良県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比42.4%であった。次いで『大正以降』の21.7%、『明治前期』の20.4%、『江戸時代』の14.2%の順である。
江戸時代の奈良県は、筆・墨・蚊帳など現在も残る伝統産業や、晒・刀・酒・醤油・饅頭製造などの商工業が発達し、商工業都市として栄えていた。また、寺社をお参りする観光客も増加してきて、観光地としても発展していった。今ではすっかり有名な鹿せんべいも、この頃には販売されていたという記録も残っている。

②創業年TOP5

奈良県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の五位堂工業株式会社は、全国で7位となっている。

③市町村別は『奈良市』が最多

市町村別100年企業数では奈良市が128社で最多であった。
1位の奈良市では、『建築工事業』、『その他の事務用品製造業』、『他に分類されないその他の小売業』の3業種がそれぞれ4社と最も多い。
2位の桜井市は、100年企業数33社であり、業種別に見ると『めん類製造業』が6社と最も多く、次いで『建築工事業』が3社である。
同数2位の天理市は、業種別に見ると『清酒製造業』、『茶類卸売業』、『燃料小売業』の3業種がそれぞれ2社と最も多い。

④産業は『卸売・小売業、飲食店』が最多

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が159社(構成比42.7%)と最も多かった。次いで、『製造業』130社(同34.9%)、『サービス業』36社(同9.7%)の順である。
奈良県には、墨・筆・薬・漆器などの長い歴史を持つ伝統産業が多く、靴下・ニットなどの繊維、木材、医薬品、スポーツ用品などの地場産業が発展している。近年では、一般機械、電機機械などの産業集積も進められている。
また、世界遺産をはじめとする数多くの歴史的文化遺産や自然公園などがあるため、観光業も盛んである。

⑤業種は『清酒製造』が最多

業種別では『清酒製造』が20社で最多であった。奈良県の日本酒の歴史は古く、正暦寺には「日本清酒発祥之地」の碑が建てられている。「奈良流は酒造り諸流の根源なり」といわれ、古代から酒造りが行われていた。その技術は現在まで受け継がれている。
2位は『医薬品製剤製造』が16社であった。日本最古の朝廷があった奈良県は、中国からくすりや医薬術が導入された。多くの寺院などで、民衆の救済のため、施薬と呼ばれるくすりの施しが行われたのである。また地質的にも恵まれていたため、さまざまな生薬や薬草の栽培が行われ、全国的にも有名になった。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比59.4%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が8.5%、『5千万円以上~1億円未満』が5.4%の順である。
資本金トップは国立大学法人奈良女子大学(業種:大学)が287億円。以下、国立大学法人奈良教育大学(業種:大学)が159億円、小山株式会社(業種:他に分類されない物品賃貸業)が2.3億円の順であった。
上位10社のうち大学、物品賃貸業、製造業がそれぞれ2社である。

⑦従業員数は『10人未満』が6割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比39.0%と最も多かった。次いで、『10~49人』が27.4%、『5~9人』が24.8%の順である。10人未満で6割を超える。
奈良県の100年企業の多くは小規模企業であるが、小山株式会社は従業員500人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比46.3%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が38.8%、『10億円以上~100億円未満』が14.5%の順である。
売上高上位10社のうち製造業が4社、卸売・小売業が3社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は9社

奈良県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は18社であり、構成比では全国26位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は9社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは、製造業と卸売・小売業がそれぞれ4社である。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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