CFOならではの業務「経営企画」。そのスキルが最も発揮できる企業タイプとは?~「会社の番頭」の選び方・育て方[第3回]

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ひと昔前、会社の役職といえば、会長、社長、部長などと、日本語で統一されていましたが、近年はすっかり横文字の役職名も定着しました。

最もわかりやすい例が、CEO(Chief Executive Officer)です。日本語に訳すと最高経営責任者で、旧来の役職名の中では代表取締役が最も近いでしょう。日本では、代表取締役と社長職(President)を兼任していることが多いため、CEOと社長がよく混同されています。そしてここ数年、新たに認知され始めているのがCFO(Chief Financial Officer)です。

本連載では、CFOの職務内容、必要なスキル、そして育成法などについて解説していきます。第3回目の今回は、CFOに必須の経営企画業務について紹介します。

「経営企画」はCFOならではの業務

これまでの日本企業で活躍してきた財務本部長は、比較的CFOに近いポジションといえます。会社の資金情報を全体的に把握し、その出納状況や資金計画を経営者に報告するのが彼らの主な役割だからです。企業内のキャッシュフローを明確にするため必要とされる職務には、財務のほかに経理もあります。財務は「企業がこれから動かすお金」を管理し、経理は「企業がこれまでに動かしたお金」を管理しているのです。中小企業では「財務と経理の統括をひとりの人物が兼任している」というケースも多く見られます。

このように財務本部長は企業内で重要なポジションですが、実際の経営に影響を及ぼすほど大きな発言力を与えられている訳ではありません。そこがCFOとの決定的な違いです。

CFOはCEOやCOOと並び立つ経営陣の一角で、具体的な数字を活用しながら今後の経営方針を定めるために活躍します。このため、従来の財務本部長が持つファイナンシャルスキルのほかに、経営企画に必要なスキルを身に着けていなくてはなりません。

CFOの力が発揮される3つの業務

1.経営戦略や経営計画の立案

行き当たりばったりに経営を続けていると、企業はやがて暗礁に乗り上げてしまいます。このため「将来に渡り事業を続け、目標を達成する」という経営計画は必要不可欠です。CFOはCEOと共に、その立案に携わります。

企業理念を踏まえたうえで商品力や生産性の向上を図り、成長戦略や業界内での差別化、そして事業再編やグローバル化に向けての戦略までを考えていくのです。

特に重要なのは、経営に関する諸分析です。CFOには、企業や業界を取り巻く環境の変化をいち早く察知する分析能力が求められます。また、企業全体の経営戦略を考えるのはもちろん、企業内の事業一つひとつについても戦略を細部まで突き詰めていかなくてはなりません。

このためCFOは、コンサルティング能力を磨いておくことが必須です。正確な経営計画立案のためには、随時社内コンサルティングを実践していく必要があるからです。ですので、戦略系コンサルティングファームの就業経験者は、CFOの適性が高いといえるでしょう。

なお、企業全体の経営戦略については、3年に1度程度の見直しが求められます。

2.企業価値の検証

自らが経営陣として立案した経営計画が軌道に乗り、きちんと価値を生み出しているかを検証するのも、CFOの重大な役割のひとつです。

「収益性に見る企業の安定性や存在意義」「資本コストや営業キャッシュフローから算定する企業価値」そして「株主サイドから見た収益性」などのさまざまな指標から、客観的に企業価値を割り出していくのです(IR方針の立案やイベント/ツール制作もCFOが統括します)。

また内部の個々のプロジェクト一つひとつと、そのリスクマネジメントに関してもチェックを怠らないようにしなくてはなりません。プロジェクト自体の方向性が経営計画と合致しているのか、PDCAサイクルに停滞はないのか、そしてさまざまなリスクの可能性を検討しながら不祥事の発生を未然に防げるのかなど、検討すべきことは多岐に渡ります。

こちらの業務に関しては、先述のコンサルティング能力はもちろん、ファイナンシャルやマネジメントのスキルも総動員したうえで、作業にあたる必要があります。

3.マネジメントレポートの作成

上記の内容をまとめたうえで、CFOから提出されるのがマネジメントレポートです。毎月作成し、経営陣や役職者の間で共有しながら、今後の方針について議論を交わしていきます。

日本ではまだ、マネジメントレポートの共有が徹底されていない企業が多く存在しています。まずは簡易版から作成し、徐々に内容をブラッシュアップしていくと良いでしょう。

経営企画スキルの発揮を左右する企業規模

ここまで紹介してきたように、CFOの業務は多岐に渡ります。さらにファイナンシャル業務も加えると作業量は膨大となりますので、実務を担当するスタッフの確保も重要となります。

とはいえ就業する企業の規模によって、CFOが発揮すべきスキルにも強弱が生じます。企業を「大企業」「中小企業」「ベンチャー企業」「再生企業」「外資系企業」の5つに分類した場合、CFOの業務内容の中で経営企画に大きな比重がかかってくるのは、再生企業と外資系企業です。

再生企業の場合、企業が倒産状態に追い込まれる理由は複数考えられますが「経営計画がきちんと機能していなかったから」という可能性も充分に考えられます。経営の在り方を根本から見直し再生を目指していくために、CFOの手腕が必要とされているのです。

もちろん、債務超過や赤字収支など財務上の問題を抱えた企業が進退を賭けている状況下なので、ファイナンシャルスキルの発揮も同様に求められます。財政面で早急に結果を出しつつ、経営陣として企画業務にも携わっていかなくてはなりませんが、その分やりがいも大きいといえるでしょう。

また、CFO発祥の地であるアメリカに本社を持つ外資系企業では、経営企画およびマネジメント業務に能力を発揮するCFOが高く評価されます。精度の高いマネジメントレポートの提出が当然の義務と考えられていますから、気を引き締めて業務にあたる必要がありそうです。

なお、中小企業、ベンチャー企業の場合は、事業内容が比較的多様ではないことから、経営計画や戦略についての発案はそれほど必要とされていません。CFOはファイナンシャル業務を中心に企業価値検証などの業務を遂行しながら、CEOの役割を補佐していくことになるでしょう。

また、国内の大企業においては、CFOは象徴的な経営陣の一角に祭り上げられてしまうケースが多いため、その実力を発揮できる機会が少ないのが現状です。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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