「資金繰り表」の作成が、確実な経営戦略を描く~会社の「資金繰り」完全ガイド[第3回]

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経営者であれば、突然、資金が必要になる場面に遭遇することは珍しくありません。しかし資金繰りの正しい知識がないと、思わぬトラブルに巻き込まれ、大きな損失に繋がってしまうこともあります。健全な企業経営のためにも、資金繰りの基本を学びましょう。

今回は、資金計画の中枢にあるべき「資金繰り表」に焦点をあてて、解説していきます。

資金繰り表の作成はなぜ重要なのか?

資金繰り表とは、経常収支や設備収支、そして財務収支の3部門を設け、それぞれの入金と出金の予想をもとに作成する表です。企業内のお金の動きに関する未来予想図といえるでしょう。

そのため、資金繰り表の内容が現実からかけ離れているようでは意味がありません。「主要取引先であるA社の売掛金回収は2ヵ月後である」「例年、設備入れ替えを行っているので、2月には設備支出が増える」といったように、過去のデータをきちんと反映することが大切です。企業によって異なる事情がきちんと反映されていてこそ、資金繰り表は意義のあるものになります。

では資金繰り表をきちんと作成し続けることで、どのようなメリットを得ることができるのでしょうか。

■経営計画が見えてくる

お金の動きが把握できていないままに立てられた経営計画は、机上の空論に過ぎません。また、資金繰り表の内容に経営計画が反映されていないのも問題です。資金繰り表と経営計画の立案作成は「鶏が先か、卵が先か」というほど密接に関わっています。両者の間にしっかりとした相関関係が生まれれば、健全な経営目標が形になり、実現を目指しやすくなるでしょう。

「これまで経営計画の立案も、資金繰り表の作成も力を入れてこなかった」という経営者は、習慣を見直す必要があります。資金繰り表はもちろん、経営計画もきちんとまとめるようにしましょう。

■銀行へ融資を申し込む際に評価が上がる

たとえ借入れであっても、銀行を申込先に選択できる企業の信用度は高いです。なぜなら審査が厳しく、ある程度の時間も必要だからです。また、銀行は審査の際、必ず資金繰り表の提出を求めます。「この企業はなぜ、融資が必要なのか?」という判断材料になるからです。

このため、銀行から提出を求められた時点で慌てて資金繰り表を作成するのではなく、習慣にしておくことが大切なのです。

■黒字倒産の防止にも役立つ

2006年に新会社法が施行され、自己資金1円からでも会社を始められるようになりました。こうした機運を受け、新進気鋭のベンチャー企業が多く誕生しましたが「黒字経営のはずなのに、なぜか資金繰りが悪化して倒産する」というケースも多くあります。

こうした企業は資金繰り表を作成していないため、借入れ時期や額が正確に把握できておらず、気が付かないうちにキャッシュフローが破綻してしまっているときがあるのです。過小資本の中小企業にとっては、一度のミスが命取りになります。

「資金繰り表を作るよりも現場でやることがある」という考え方は捨て、自社業務をめぐるお金の流れを、できるだけ正確に把握しておくことが大切です。

資金繰り表に何を記せばいいのか?

資金繰り表の内容は、企業のキャッシュフローが色濃く反映されますので、作成するのは財務担当者が適役です。ただし過去データの参照が必要となるため、経理や総務担当者のサポートも不可欠でしょう。

中小企業の場合は、これらの実務をひとりの社員が兼任しているケースが多く見られます。経営計画の指針ともなる重要な内容なので、経営者も積極的に内容を精査しなくてはなりません。

先述の通り、資金繰り表は「経常収支」「設備収支」「財務収支」の3部門で構成されます。以下で詳細を見ていきましょう。

・経常収支…本来の事業でどのようなキャッシュフローが生まれるかを表す
(項目例:現金売上、売掛金回収、手形取引など)

・設備収支…設備投資や売却によるキャッシュフローを表す
(項目例:設備購入、設備売却、設備収入など)

・財務収支…主に外部からの資金調達や借入れの返済などのキャッシュフローを表す
(項目例:借入れ実行、借入れ返済など)

資金繰り表の雛形は、インターネット上に多数存在しています。「まだ作成したことがない」という企業は、参考にしてみると良いでしょう。

中小企業こそ資金繰り表の作成が必要

資金繰り表で経常収支がプラスであれば業績は好調で、財務収支がマイナスの場合は借入れがかさんでいることがわかります。経常収支のプラスが財務収支のマイナスを十分に補っているようであれば問題ありませんが、そうでなければ経営に黄色信号が灯り始めていることを意味し、早めの対策が必要となります。

ただし、売掛金の回収に時間がかかることもあるので、1ヵ月分の資金繰り表だけですべてを判断することはできません。半年ほどの期間でキャッシュフローを把握していく必要があります。

中小企業には決算書の作成義務はありますが、資金繰り表の作成義務はありません。決算書でわかるのは過去のキャッシュフローだけであって、経営において大切な近未来の資金繰りは管理できないのです。資金繰り表がないということは、資金不足に陥りやすい中小企業が知るべき直近数ヵ月の資金繰りの管理が抜け落ちているということなのです。

資金繰り表を作成することで「自分の会社は1年の中でこの時期が苦しい」「数ヵ月先が苦しくなりそうだ」など、確実な経営戦略が描けるようになるでしょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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