「放漫経営」とは~倒産を招いた企業の特徴から学ぶ

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※過去の記事(2020/04/01公開)のデータをアップデートしたものです。

放漫経営は、企業倒産原因の上位にあげられます。企業の平均寿命に満たずに倒産する企業と生き残る企業の間にはどのような違いがあるのかを探ります。今回は放漫経営によって倒産を招いた企業の特徴から、経営者が常に心がけるべきことを解説します。

企業の倒産数と平均寿命

大手信用調査機関の調査によると、2021年に倒産した企業の数は6,000件あまりでした。業種別でみるとサービス業が最も多く、建設業、卸売業が後に続いています。また、倒産した企業の寿命ついては、最も長いのが製造業の36.3年、最も短いのが金融・保険業と情報通信業の15.7年でした。業種別にみるとその差が20年以上あるものの、平均寿命は23.8年という数値も導き出されています。

リーマンショックが起きた2008年(倒産企業数1万3,000件以上)以降、倒産企業数は13年連続で減少しています。しかし、2020年以降は、コロナ禍の厳しい状況を支えるための各種支援策による影響もあるとみられます。したがって回復傾向にあるものの、楽観はできない状況です。

同調査では業歴が判明した5,000件あまりについて、業歴10年未満の企業と業歴30年以上の企業の倒産件数を比較分析した結果も示されています。倒産件数に占める業歴10年未満の企業の構成比は26.5%であるのに対し、業歴30年以上の企業の構成比は33.8%と2年連続で上昇し、外部環境の変化に対応できていない状況がうかがえます。長寿企業といえども、これまでの成功体験にこだわっていては、今後は生き残ることが難しいといえるでしょう。

放漫経営とは

放漫経営とは、企業の所有者や経営者に管理・運営能力がなく、独善的な判断や私物化により、企業経営を混乱されることをいい、企業の倒産原因の上位にあげられます。

ひと口に放漫経営と言っても、その実態はさまざまです。放漫経営は大企業や上場企業よりも、中小企業で進行することが多い傾向があると言われています。所有と経営が一致していて、内部・外部からの統制を受けにくいという特徴が、悪い方向にでてしまった場合に放漫経営に陥ると言えます。

放漫経営による倒産とは~倒産を招く経営・企業の特徴

放漫経営に陥りやすい代表的なケースとして、まず挙げられるのは「ワンマン経営」です。トップの意見がすべてという社風が定着してしまうと、いくら従業員が経営計画を立てても、トップの一声で従業員の努力が水泡に帰すことがあります。

次に、「同族経営を行う中小企業」が挙げられます。こちらはコーポレートガバナンスに関する問題が生じやすいという特徴があります。中には企業を公然と私物化するトップや役員が、親族以外の従業員を悩ませるというケースもあります。

放漫経営の一例

以下に一例を挙げてみましょう。

兄弟三人が立ち上げた国内のある企業は、商品が大ヒットして大きな利益を得ました。三人はそれぞれにマイホームや外車を購入し、贅沢を満喫。また社屋ビルを新たに購入し、従業員の増員も図りました。さらに兄弟のうちの一人が、周囲の反対を押し切り飲食店舗をオープンするなど、他業種への進出にも積極的だったそうです。

しかし、こうした成功企業には、銀行をはじめとするさまざまな金融機関が営業攻勢を仕掛けてくるものです。無理のない範囲で始めたはずの投資に失敗した兄弟は、やがて巨額の負債を背負うことになってしまいます。本業の商品力はまだ充分残っていたにもかかわらず、社屋ビルは他人の持ち物となり、やがて倒産の道を選ばざるを得なくなってしまいました。

ワンマン経営や同族経営の場合、上記のような「本業以外の出費」が命取りになるケースが多々あります。また、ずさんな管理体制は従業員による「小さな不正」の温床となりがちです。その積み重ねは企業を内側から腐敗させ、業績が悪化した際に致命傷となるのです。

放漫経営による倒産を避けるための対策

ここまで放漫経営の概要ついて触れてきました。思い当たる節がある経営者は、すぐに態度を改める必要があります。なぜなら放漫経営は慢性化しやすいため、気付いた時にはすでに手遅れとなっている可能性が高いからです。では具体的にどのような点を改善していくべきなのか、みていきましょう。

1.ワンマン意識を捨て去る

放漫経営の最たる原因は経営者および周囲の従業員にあります。このため該当者が気持ちを入れ替え、謙虚に経営と向かい合うことが、倒産を回避する最も有効な手段となります。

まず経営者は「自分の考えが絶対に正しい」という意識を捨てることです。一代で会社を築いた人、そして先代から厳しい英才教育を受けてきた人は、ひとつの成功パターンに固執してしまったり、新しい経営方針へ柔軟に対応できないといった傾向が見られます。また、他人の意見に合わせたり、コロコロと方針を変えるのは経営能力がないからだと思い込んでいるケースも多いようです。

しかし、会社経営に「絶対的な成功の法則」などありません。経営者は信頼できる有能な人物を雇用し、経営陣の一人として重用しながら意見を求める姿勢を持たなくてはなりません。また、役職者ひとり一人に経営ビジョンを育ませ、企業全体で統一の目標に向かい、就業する体制を整えていくことも同様に大切です。「従業員にふさわしい人物がいない」という場合は、外部の経営コンサルタントに助言を求めながら、経営の軌道修正を模索していくという方法もあります。

2.従業員を大切にする

先述の通り、ワンマン経営者は「自分の意見だけで何でも決める」という特徴があります。残業や休日出勤の強制など、パワハラとも呼べる指示に振り回される従業員たちは、やがて疲弊し目の前の業務に淡々と対処するだけになり、経営者に対しては「YESと言っておけば良い」という諦念を抱きがちになります。こうした雰囲気が社内に蔓延してしまうと、従業員は視座を高める意欲を失い、経営計画自体が机上の空論となってしまいます。

したがって経営者は、従業員の待遇改善や労働基準順守はもちろんですが、日頃から「YESマンだけを優遇しない」、「手柄は褒め、失敗の責任は共に取る」という態度を示すことが求められます。どんな従業員とも分け隔てなくコミュニケーションを取ることが、社内に健全な経営計画が醸成される環境を整えていくことにつながるのです。

3.同族企業なら長所を伸ばす

同族経営を行う企業の中には、偏った人事の発生などにより、ネガティブなイメージが付いてしまうことがあります。しかし、一族の企業価値を高めようという意識がポジティブに働けば、安定した長期経営が実現しやすくなるのも事実です。現に国内外の各業界でトップを走る企業には、同族経営が数多く存在しています。

親族が創業者の理念を誠実に継承していくことで、健全な職場環境は実現しやすくなるはずです。そのためには同族企業に生じがちな「コーポレートガバナンスの欠如」という問題と真摯に向かい合うことが大切です。ぬるま湯のような血縁関係が放漫経営に繋がることのないよう、各自が強い倫理観と責任感を持ち続けることが重要となります。

4.適切な内部留保を心掛ける

ワンマン経営者は、思い付きで新事業に手を広げ、営業規模拡大に乗り出してしまう傾向があるようです。また、「今ある資本をもっと増やす」という名目で、思い切った投資を選択しがちです。

しかし、資本力がそれほど大きくない中小企業の場合、一定の利益を内部に確保しておくことは非常に重要です。財務計画を考慮し、堅実に貯蓄しておくことで、『いざという時のお金』を手元に残せますので、心がけると良いでしょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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