不動産賃貸業とは?ビジネスモデルと市場動向をわかりやすく解説

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記事公開日:2019/12/18 最終更新日:2026/09/15
企業の不動産戦略の一環として、あらためて注目を集めているのが不動産賃貸業です。都心部にオフィスビルなどの不動産を保有する企業のなかには、老朽化した社屋を建て替えて床面積を拡大し、オフィスや商業施設を賃貸することで安定したキャッシュフローを生み出すケースが増えています。また、内部留保に余裕のある中小企業が、将来の事業の柱として都心の区分オフィスなどを取得する例も見られます。
さまざまな形態がありますが、そもそも不動産賃貸業とはどのようなビジネスなのでしょうか。本記事では、事業の分類やビジネスモデル、賃貸用不動産の種類、地域特性の重要性、そして2026年時点のオフィス市場動向までを解説します。
不動産業界における事業の分類と構造
不動産業は一般的に、①不動産開発業、②不動産仲介業、③不動産管理業、④不動産賃貸業の4つに分類されます。
① 不動産開発業
デベロッパーとも呼ばれ、オフィスビルや商業施設、分譲マンション、物流施設などを自ら開発し、分譲・賃貸する事業です。財閥系をはじめとする大手不動産会社や、都心の再開発事業を手掛ける森ビルなどがこれにあたります。
② 不動産仲介業
不動産の売買や賃貸の仲介を行う事業です。売買仲介は大手デベロッパー系列から地場の中小不動産会社、フランチャイズチェーンまで幅広く存在し、賃貸仲介は比較的小規模な地場の不動産会社が中心となっています。これら不動産開発業・仲介業は、宅地建物取引業法による免許が必要な点が特徴です。
③ 不動産管理業
入居者対応や客付け対応など、不動産から得られる収入を最大化するための業務全般を指します。免許は不要で、オーナー自身が管理を行う場合と、管理会社に委託する場合があります。
④ 不動産賃貸業
これに対して不動産賃貸業は、いわゆる大家として、自らが保有する土地や建物などの不動産を第三者に賃貸し、賃料を得る事業です。開始にあたって特別な資格や届出は必要なく、保有不動産もしくは不動産を取得する資金があればいつでも始められます。また、管理を不動産管理業者へ委託すれば運用の手間もほとんどかからないため、本業とは別の補完的な事業として取り組みやすいのも特徴です。
不動産賃貸業はさらに、住宅(店舗併用住宅を含む)を賃貸する「貸家業」と、事務所・店舗などの事業用オフィスを賃貸する「貸事務所業」(貸ビル業)に分けられます。総務省「平成28年経済センサス‐活動調査」によると、貸事務所業の事業所の約8割は法人が営んでいるのに対し、貸家業の事業所の約7割は個人が営んでおり、貸事務所業は法人が中心となって手掛けていることがわかります。
出典:総務省統計局「平成28年経済センサス‐活動調査」事業所に関する集計 https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003215400
賃貸用不動産の主な種類
賃貸用不動産は大きく「住居系」「事務所系」「商業系」の3つに分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
① 住居系
アパートやマンション、戸建が中心です。地主など個人が取り組むことが多く、建築の制約が少ないため、エリアによっては供給が過剰となり競争が激しくなる傾向があります。
近年は、シェアハウスや民泊など新しい形態の住居系賃貸不動産も広がっています。シェアハウスはキッチンやリビング、バスルームなどの共用スペースと個人スペースを備えた賃貸住宅で、家賃はアパートやマンションより低めに設定される一方、入居者が多くなる分、利回りは通常のマンションより高くなる傾向があります。企業が保有する遊休不動産(使われなくなった社宅・独身寮など)をシェアハウスに転用する例も見られます。
② 事務所系
中心となるのはオフィスビルです。テナントは主に法人のため、住居系に比べて契約期間が長くなる傾向があります。一棟丸ごとの取得は費用が大きくなるため、1フロアのみを区分所有してテナントに貸し付ける方法もあります。
近年は、都市部のオフィスビルをコワーキングスペースや貸し会議室として活用する例が増加しています。コワーキングスペースは、異なる企業に所属する人やフリーランスが、事務所や会議室などの空間を共有しながら働く新しいオフィスの形態です。コスト削減や業務の利便性に加え、異分野の人材が交わることで生まれる協業機会の創出などがメリットとしてあげられます。働き方改革の一環としてサテライトオフィスや在宅勤務の導入が進んだことも、普及を後押ししました。
③ 商業系
店舗、駐車場、物流倉庫、ホテルなど、種類が豊富で幅広いのが特徴です。ショッピングモール内の物販店舗や繁華街の飲食店など、生活に欠かせない存在となっています。
幹線道路沿いなど集客が見込める土地を持つ場合、「建設協力金方式」を利用すれば費用を抑えて事業用地を活用できます。これは、土地所有者が特定のテナントの使用を前提に、そのテナントから建築費を借りて建物を建築する仕組みで、建設後はテナントが支払う月額賃料から返済分が差し引かれます。初期投資の負担を抑えられる、入居者が決まった状態で建設できるためリーシングの手間がかからない、長期入居が見込めるといったメリットがある一方、テナント退去後は建物の仕様によって次のテナントが決まりにくい、解体費用がかかるといったデメリットもあります。
EC市場の拡大を背景に、情報システムで物流を一元管理する大型物流センターの建設が続いており、こちらも建設協力金方式で建てられることが一般的です。このほか、コンビニやビジネスホテル、保育園、老人ホーム、介護施設なども商業系の賃貸不動産に含まれます。
不動産賃貸業のビジネスモデル
不動産賃貸業の大きな特徴は「設備産業」であることです。貸家業・貸事務所業のいずれも、ニーズの高い立地であれば長期にわたって安定した収入が見込める一方、土地や建物を取得するための初期投資は非常に大きく、多額の借入金を活用しながら長期間で投資資金を回収し、収益を確保するのが基本的なビジネスモデルです。
景気変動や株式相場の動きに比べ、賃料収入の変動は緩やかであることも特徴です。借り手とは2年契約などの長期契約を結ぶのが一般的で、引っ越しには手間もコストもかかるため、契約更新を繰り返す傾向があるためです。一方で、借入金の支払利息、管理費、修繕費、租税公課、入居者入れ替え時の仲介手数料など、支出項目の中心が比較的固定的なため、入居率や賃料相場が下落した場合でも、コスト削減による収支改善が難しい点には注意が必要です。
だからこそ、不動産賃貸業では事業を開始する段階での収支計画が非常に重要になります。将来にわたるシミュレーションを行いやすい事業でもあるため、金利変動や賃料の変化、自己資金と借入金のバランスなど条件を変えながら、入念に検討していくことが求められます。
地域特性と立地条件が事業の成否を左右する
不動産賃貸業は、地域特性と立地条件が事業の成否を大きく左右します。地域によって人口動態や産業動向が異なり、賃貸不動産に対する需要も変わってくるためです。
貸家業の場合は、アパートや賃貸マンションなどの住宅を貸すため、その地域の人口、世帯数、年齢構成、家族構成などを考慮した事業計画が必要です。スーパーや商店街などの買い物施設、小学校などの教育施設、公園といった生活施設が充実したエリアに人気が集まりやすく、エリアによっては駅の近さよりも、繁華街から少し離れた静かな環境が好まれるケースもあります。
一方、貸事務所業のターゲットは法人であるため、企業の集積度や企業活動の活発さが重要になります。駅周辺のオフィス街や、再開発で整備された都市部のエリアは特に人気が高い傾向にあります。
いずれの場合も、借り手の需要と供給のバランスによって賃料相場が決まります。地域特性を踏まえて、借り手のニーズに合致した物件を提供することが重要といえるでしょう。
オフィス市場の最新動向(2026年)
ここでは「貸事務所業」に関わるオフィス市場の動向を見ていきます。コロナ禍では出社率の低下や大量供給への懸念から、一時オフィスの空室率が上昇し賃料が伸び悩む局面がありました。しかし2023年5月に新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類に移行し、経済活動の正常化が進んだことを機に、オフィス需要は回復傾向にあります。
三鬼商事の調査によると、2026年7月時点における東京都心5区の空室率は1.95%、平均賃料は坪あたり23,287円で、前年同月比11.38%(2,380円)の上昇となっています。
出典:三鬼商事株式会社「オフィスマーケット」 https://www.e-miki.com/rent/tokyo.html
さらにJLLの分析では、都心5区のAグレードオフィスの空室率は2025年第3四半期末時点で0.9%まで低下し、コロナ前の2019年(0.6%)以来の低水準となりました。建築費高騰による大型供給計画の縮小、出社回帰による床需要の拡大、原状回復工事の遅延による二次空室の減少、人材獲得競争の激化によるオフィス環境整備需要の高まりという4つの要因が重なり、「空室枯渇時代」とも呼ばれる状況が生まれています。JLLは空室率0%台の状況が2028年末まで続くと予測しており、賃料水準も月額坪あたり37,042円(2025年9月末時点)から、2029年末には44,000円に達すると見込んでいます。
出典:JLL「東京オフィス賃貸市場の最新動向と2026年以降の展望」 https://www.jll.com/ja-jp/insights/latest-trends-in-the-tokyo-office-rental-market
このように、不動産賃貸業のなかでも「貸事務所業」は需給が急速にタイト化しており、企業にとっては新規参入や賃料改定のタイミングを見極めることが一層重要になっています。
よくある質問
Q. 不動産賃貸業を始めるのに資格は必要ですか?
A. 不動産賃貸業自体に必要な資格や免許はありません。ただし、不動産の売買や仲介を行う場合は宅地建物取引業の免許が必要になります
Q. 貸家業と貸事務所業の違いは何ですか?
A. 貸家業はアパートや賃貸マンションなど住宅を貸す事業、貸事務所業はオフィスや店舗など事業用不動産を貸す事業です。総務省の調査では、貸事務所業の約8割は法人、貸家業の約7割は個人が営んでいます。
Q. 不動産賃貸業の最大の強みは何ですか?
A. 景気が良いときも悪いときも、テナントが入居していれば安定的に賃料収入を得られる点です。長期契約が中心のため、収入の変動が比較的少ないことも強みといえます。
まとめ
不動産賃貸業は、不動産業のなかでも免許が不要で参入しやすいビジネスです。一方で多額の初期投資が必要であり、地域特性や立地条件の見極め、そして事業開始前の綿密な収支計画が欠かせません。
コロナ禍で後退したオフィス需要は2023年以降回復に転じ、2026年現在では空室率が歴史的な低水準まで低下するなど、貸事務所業を取り巻く環境は大きく好転しています。不動産賃貸業は、好況・不況にかかわらずテナントが入っていれば安定的に賃料収入が得られることが、最大の強みといえるでしょう。
【出典一覧】
● 総務省統計局「平成28年経済センサス‐活動調査」事業所に関する集計
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003215400
● 三鬼商事株式会社「オフィスマーケット(東京)」2026年7月時点
https://www.e-miki.com/rent/tokyo.html
● JLL「東京オフィス賃貸市場の最新動向と2026年以降の展望」
https://www.jll.com/ja-jp/insights/latest-trends-in-the-tokyo-office-rental-market














