CRE戦略とは?企業価値を高める考え方とメリットを解説

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記事公開日:2019/12/18    最終更新日:2026/09/30

CREとは、Corporate Real Estateの頭文字を取った言葉で、企業不動産のことを意味します。CRE戦略とは、経営戦略の一環として自社の不動産を見直し、企業価値の向上につなげる考え方のことです。本コラムでは、CRE戦略がもたらす5つの効果と、特に中小企業がその効果を最大化するために押さえておきたい4つの視点を整理して解説します。

CRE戦略とは

CRE戦略は、2008年4月に国土交通省が公表した「CRE戦略を実践するためのガイドライン」において、『企業不動産について、「企業価値向上」の観点から経営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうという考え方』と定義がされています。

2010年には「CRE戦略実践のためのガイドライン」(2010年改訂版)(全3章)が公表されました。このガイドラインは、国土交通省が設置した研究会により、官民協力の下、CRE戦略の促進および企業がCRE戦略を実践するにあたっての実務の指針を提示することを目的として、作成しされたものです。

CRE戦略を実践するうえでは、現在保有している土地や建物だけを考えるのではなく、賃貸物件から自社物件の購入を検討する、または自社ビルを売却し賃貸物件へ移るといったように、状況に応じて不動産をどう効率よく使えるのかを多面的にみていく必要があります。

CRE戦略がもたらす5つのメリット(企業価値向上の効果)

CRE戦略がもたらす5つの企業価値向上の効果について確認してみましょう。

① 不動産、人件コストの削減

現在の本社や支店の場所が費用に見合った働きをしているのかという観点のもと、拠点の移転や統廃合をすることで、コストの削減が見込めます。
よい立地の物件に移転できれば、人材を確保しやすくなり、採用活動にかかる費用の削減にもつながることでしょう。

拠点の移転や統廃合を実施する場合には、業務の生産性を向上させるテクノロジーや、スペースシェアリングを活用することでワークスペースの削減が期待できます。多面的な広がりをみせる不動産テックの活用を一考してみるのもよいかもしれません。

単に不動産のコストだけなく、立地による人件コストや輸送コストの変動も勘案し、トータルで改善を試みることが重要となります。

② キャッシュ・イン・フローの増強

働く人たちにとって快適な職場環境を整えることや①にあげたコスト削減によって生産性を向上させて、事業収入アップを図ります。

企業不動産の中には、企業活動などに使用されていない、また適切な活用もされていない遊休不動産と呼ばれるものがあります。
本業とは連動しない遊休不動産をどうすべきなのか。そのまま売却もしくは賃貸に出すのか、建物が残っていれば、取り壊して更地として売却するのか、取り壊した後にマンションなどを建て賃貸にだすのか…多くの選択肢が考えられます。

大切なのは、そのときだけでなく未来の企業にとっても、効果的な結果が得られる方法を選択することです。

近年のように先行きが不透明で、将来を予測するのが困難なVUCA時代にあっては、保有している不動産を売却し、手元資金を厚くすることで経営を健全化させる局面が出てくるかもしれません。

エイベックスが2020年1月、本社ビルの売却およびその譲渡益が290億円の見込みであると発表したことは、具体的な売却事例のひとつと考えられます。

③ 不動産デューデリジェンスによるリスク除去・分散・軽減

CRE戦略にそった計画的な不動産デューデリジェンスは、現状の管理状況や適法性を明らかにし、不動産が経営に与えうるリスクを除去・分散・軽減する効果があります。

購入したときから長期間そのままの状態の不動産や管理が行き届いていない不動産などは、経営にまでリスクを与える恐れがあります。近年では、景観に関する規制を強化する自治体もあります。景観を害するような不動産や、テナントとの軋轢、共用部分における不適切な使用等、不動産に関する問題を放置したままにしておくと、その情報が広まっていき、企業の信用や価値の低下に影響を及ぼす可能性もあります。

まずは保有不動産にどおのようなリスクがあるのかよく調査して、必要であれば専門家に協力を依頼すると心強いでしょう。

自社で保有し続けるリスクが大きいと判断した場合には、売却も有効な選択肢になり得ます。管理業務の外部への委託や、建物の改修などにより、リスクの除去・分散・軽減を図ることもできます。

不動産は、ただ保有しているだけでも維持管理費の増加や資産価値の下落など経営リスクへと発展する可能性があります。保有している限りリスクをゼロにはできませんが、CRE戦略に基づいて適切に管理し、自社が許容できる範囲にリスクを抑える必要があります。

④ 顧客サービスの向上

特に顧客が訪れる店舗や事務所の場合、CRE戦略によって企業不動産の配置が最適化されれば利便性が高まり、提供されるサービスや商品のクオリティ向上も見込まれ、顧客に対して価値を生み出す結果となります。

また、副次的な効果としては生産性の向上や不動産・人件コストの削減によって、以前に比べて価格を抑えた商品やサービスの提供が可能となり、顧客層の拡大につなげられる可能性があります。

⑤ 企業イメージ・ブランド価値の向上

どこに企業を構えるのか。場所や建物によっては、企業をアピールできる可能性もあります。

例えば、環境や社会に配慮した建物に入居していれば、環境に配慮している企業というよいイメージが広がり、対外的なアピールにも使えるようになります。

また、その地域のシンボルとなる有名な不動産であれば、親しみやすさや認知度の向上が見込めるかもしれません。

さらに丸の内や大手町、有楽町など東京の中心に不動産を保有することになれば、企業のブラント価値上昇につながる場合もあるでしょう。

企業不動産の位置づけを整理する:コア/ノンコア×保有/賃借×キャッシュ発生の有無

企業経営における不動産の位置づけは、基本的に事業(本業)を軸に考えることができます。すなわち、本業に直接的、または間接的に欠かせない不動産と、本業とはあまり関係がない不動産です。前者は「コア不動産」、後者は「ノンコア不動産」と言えるでしょう。

また権利面に着目すると、「保有」と「賃借」に分けることができます。保有の場合は土地、建物の所有権を持ち、それを自社で使用するか、第三者に賃し出します。賃借の場合は基本的に、自社の本業などのために借りるケースです。

さらに重要なのは、その不動産がキャッシュを生むかどうかという点です。コア不動産にしろ、ノンコア不動産にしろ、また保有不動産にしろ、賃借不動産にしろ、キャッシュを生むケースと、キャッシュを生まないケースがあります。キャッシュを生む不動産は経営にとってプラスです。キャッシュを生まない不動産でも、本業にさまざまな形でメリットをもたらすことがあり、一概に不要とは言えません。

以上のように考えていくと、企業経営における不動産の位置づけは下記1~8に分けることができます。

  1. 「コア不動産」×「所有」×「キャッシュ発生」(例:自社ビル、自社工場、自社倉庫など)
  2. 「コア不動産」×「所有」×「キャッシュなし」(例:社宅、寮など)
  3. 「コア不動産」×「賃貸」×「キャッシュ発生」(例:賃借オフィス、レンタル工場、レンタル倉庫など)
  4. 「コア不動産」×「賃貸」×「キャッシュなし」(例:借り上げ社宅、借り上げ独身寮など)
  5. 「ノンコア不動産」×「所有」×「キャッシュ発生」(例:アパート、賃貸マンション、貸しオフィスなど)
  6. 「ノンコア不動産」×「所有」×「キャッシュなし」(例:自社グラウンド、遊休不動産など)
  7. 「ノンコア不動産」×「賃貸」×「キャッシュ発生」(例:サブリースなど)
  8. 「ノンコア不動産」×「賃貸」×「キャッシュなし」(例:撤退した事業用の賃借不動産など)

こうした区別に応じ、「事業活動の視点」「財務会計の視点」「不動産活用の視点」「事業承継と相続の視点」の4つの視点で、自社における不動産の扱いを検討していきます。

CRE戦略の効果を最大化するための4つの視点

企業にとって最適なCRE戦略は、その企業の経営理念・経営戦略によってさまざまですが、ここではCRE戦略の効果を最大化するための、基本的な4つの視点を整理してみましょう。

① 事業活動の視点

「コア不動産」は本業との関係で考える視点です。具体的には、本社や支店の事務所、工場、倉庫などをどこに、どのように確保するかが問題になります。

創業期の企業の場合、「コア不動産」をすべて自社保有とするには相当な資金が必要となり、キャッシュフローが回らなくなりかねません。そこで、事業の成長スピードに合わせて賃借するのが合理的でしょう。

一方、安定成長の企業で内部留保が厚いような場合は、本社ビルや工場、倉庫などの保有を検討していくことになるでしょう。ただ、支店や支社は移転・統廃合の可能性があるので、賃借するのが一般的です。

なお、新規事業として不動産賃貸業に取り組むような場合、基本的に自己保有で行うことになります。ただし、サブリースのようなビジネスモデルの場合は、不動産を賃借してさらにそれを第三者に転貸することもありえます。

② 財務会計の視点(ROAと不動産の関係)

保有する不動産はバランスシート上、資産に計上されます。資産に見合った収益が上がればいいのですが、バランスシートがあまり膨らむと通常、ROA(総資産利益率)が悪化しやすくなります。

上場企業では、株式市場での株式評価にROAなどの財務指標が影響します。非上場の中小企業の場合、上場企業ほど直接問われる機会は少ないものの、金融機関の評価などで意識しておきたい指標です。

中小企業では不動産を保有するにあたって、借入金とのバランスが重要です。借入金の利息分は経費計上し、元本分は利益から返済することになります。キャッシュフローとの兼ね合いをよく確認するとよいでしょう。

③ 不動産活用の視点

自社が保有する不動産は、どのくらい効率よくキャッシュを生んでいるかが問題になります。

たとえば、本社ビルは本業の拠点であり、事業収益を生み出しているはずです。しかし敷地の容積率が余っているような場合、新たに建て替えて自社で使用するフロア以外を他社に貸せば、新たなキャッシュを生みだすことができます。

かなり以前に取得して簿価が低く、含み益のある不動産は信用力につながる一方、含み益が出ていることでそれ以上の活用は検討せず、その不動産が持つポテンシャルを十分、引き出せていないケースもあります。

工場や倉庫は周辺環境の変化に合わせて用途を変更(コンバージョン)することで、新たにキャッシュを生み出せる可能性があります。

活用の見込みが薄い遊休不動産は、財務戦略の観点から思い切って売却するのもひとつの手です。

④ 事業承継と相続の視点

さらに中小企業の場合、不動産戦略においては事業承継と相続の視点が不可欠です。なぜなら、銀行から融資を受ける際に経営者個人が担保を提供したり個人保証をしたりと、経営者の資産と会社の資産の線引きが曖昧になることが多いからです。

創業当初はそれも仕方のないことですが、いつまでも曖昧なままでいいわけではありません。

将来、事業承継を検討するときに問題になりかねません。
事業承継のパターンは大きく、「親族内承継」「役員・従業員承継」「社外への引継ぎ」の3つに分けられます。「親族内承継」でも相続時の分割や個人保証の引継ぎで問題になることがありますし、「役員・従業員承継」や「社外への引継ぎ」ではマイナス要因になりかねません。

さらに、経営者に相続が発生した場合、事業のために利用している土地の扱いが大きな問題になります。相続人に納税資金がない場合、その土地を処分せざるを得なくなったりすると、事業の継続に支障が生じかねません。また、相続人同士の資産分割において、事業のために利用している土地をどうするか、もめた場合も同様です。

なお、事業のために利用している土地は、相続税評価額が減額される「特定事業用宅地等の特例」があります。

対象になるのは、亡くなった経営者が個人事業を営んでいたときの事業用の土地(「特定事業用宅地等」)、または自身がオーナーだった同族企業に貸し付けていた事業用の土地(「特定同族会社事業用宅地等」)です。ただし賃貸アパートや貸駐車場など貸付事業に使用していた土地はこれらに当たらず、「貸付事業用宅地等」として相続税評価額の減額割合等が少なくなります。

相続においてこうした特例が適用されるかどうかも、あらかじめ確認しておく必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q. CRE戦略とはどういう意味ですか?

A. CREとは、Corporate Real Estateの頭文字を取った言葉で、企業不動産を意味します。CRE戦略とは経営戦略の一環として自社の不動産を見直し、企業価値の向上につなげる考え方を指します。2008年に国土交通省が公表したガイドラインが基本的な定義の拠り所となっています。

Q. CRE戦略に取り組むとどんなメリットがありますか?

A. 主に、①不動産・人件費コストの削減、②キャッシュ・イン・フローの増強、③不動産デューデリジェンスによるリスクの除去・分散・軽減、④顧客サービスの向上、⑤企業イメージ・ブランド価値の向上、という5つの効果が期待できます。

Q. 中小企業でもCRE戦略に取り組む必要はありますか?

A. 必要です。中小企業は特に、事業活動・財務会計・不動産活用に加え、事業承継や相続といった視点が経営者個人の資産とも密接に関わるため、早い段階から不動産の扱いを整理しておくことが将来のリスク軽減につながります。

Q. CRE戦略はどこから始めればよいですか?

A. まずは自社が保有・賃借する不動産を「コア/ノンコア」「保有/賃借」「キャッシュ発生の有無」で棚卸しし、それぞれがキャッシュを生んでいるか、本業に貢献しているかを可視化することから始めるとよいでしょう。

まとめ

中小企業の不動産戦略には、以上のように事業活動、財務会計、不動産活用、事業承継と相続といったいくつもの視点が関係してきます。

自社の経営を安定させ、さらに発展させていくため、CRE戦略の効果も踏まえて不動産をどのように扱うか、必要に応じて専門家の協力を得ながら中長期的な視点で取り組んでいくことが大切です。

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