新型コロナで注目「クラウドファンディング」による資金調達〜中小企業経営者のための注目の経営トピックス[第3回]
目次
新型コロナの影響で、苦境に陥っている中小企業。資金繰りに行き詰まり、倒産に至るケースも増えています。そのようななか、改めて注目されているのが「クラウドファンディング」です。
メディアでも注目されている企業経営に関するトピックスを解説する本連載。今回は「誰でも」「早く」「世界中から」資金を集めることができるクラウドファンディングの基本について見ていきます。
クラウドファンディングの歴史は意外と古い
クラウドファンディングは、インターネットを活用して不特定多数の人たちから資金調達をする仕組みで、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語です。近年広く知られるようになりましたが、実はその歴史は古く、ヨーロッパでは400年以上も前に、本を出版するための膨大な費用を寄付によって集めたと言われています。資金提供者へのお礼として、寄付者の名前を書籍に掲載するという手法をとりました。
1880年代のアメリカでは、自由の女神の制作過程で資金を切らし、像の台座が造れないという事態に陥った際、新聞社に勤務するジョーゼフ・ピューリツァーが紙面で寄付を呼びかけ、資金不足を回避しました。この時は、6ヵ月で12万5,000人が寄付を行ったそうです。
フランスでも芸術の分野でクラウドファンディングに近い取り組みがされてきました。ルーブル美術館では、著名アーティストの絵画の購入や作品の修復などの費用を寄付で募るプロジェクトを古くから実施しています。
日本においても寺院や仏像の修復・再建のために広く寄付を募る「勧進」が行われるなど、クラウドファンディングに通じることは古くから行われてきました。インターネットを活用する現在の仕組みは、2011年、東日本大震災の復興支援を目的とした寄付型のクラウドファンディングがきっかけとなり、広く活用されるようになりました。
クラウドファンディングの仕組みと主な方法
そんなインターネットを活用したクラウドファンディングの仕組みを見ていきましょう。
[図表1]クラウドファンディングの仕組み
[図表1]のように、
①プロジェクト案をクラウドファンディングサイトに掲載する
②支援者が資金を支援する
③起案者がリターンを提供する
という流れになります。リターンは金銭的なものから、モノやサービスなど様々です。またクラウドファンディングは大きく「購入型」「寄付型」「金融型」の3つの種類があり、それぞれ使用目的や支援者が得られるリターンも異なります。
■購入型
法人や個人など誰でも起案者になり、モノやサービス、体験、権利など、様々なものを販売することができます。プロジェクトを実行したい場合、「パトロン」という形で出資を募ります。支援者はリターンとして対価性のあるものや体験を得ることができますが、金銭的な見返りを得ることはできません。
■寄付型
災害復興のボランティアや財政的支援などの寄付を募ることができます。支援者は金銭的なリターンや対価性のあるリターンを得ることはできませんが、ボランティア活動の報告などを受けることができます。また寄付による税制優遇を受けることができます。
■金融型
金融型はさらに大きく3つに分類できます。
「貸付型」
企業や個人から少額のお金を集めて貸付を行うクラウドファンディングです。プロジェクトに支援者が出資し、起案者は商品やサービスをリターンとして送ります。
「ファンド型」
資産運用をしたい個人や投資家から小口の資金を集めてファンドを組成するクラウドファンディングです。出資者は売上や業績に応じて、金銭的リターンのほか、商品やサービスなどを得ることができます。
「株式型」
成長性の高い未上場企業に対して出資を行うクラウドファンディングです。出資者は業績や上場などのタイミングで配当を受け取ります。
クラウドファンディング活用のメリットとリスク
クラウドファンディングの起案者にとっての最大のメリットは、不特性多数から資金調達ができることでしょう。インターネットを活用し、個人や法人問わず、幅広く資金調達が行なえます。また クラウドファンディングのなかでも購入型、寄付型、株式型は、返済義務がありません。借入のように返済する必要がないのです。さらに、必ずしも銀行融資のように、業績や信用力がなくても、資金調達できる可能性があります。重要視されるのは、プロジェクトがいかに魅力的なものなのか。プロジェクトの魅力によって、出資が集まるかどうかが決まります。
一方でクラウドファンディングにもリスクはあります。
まずクラウドファンディングでは、さまざまなアイデアを公表し出資を募るため、アイデアが盗用される危険を伴います。内容によっては特許を取得するなど対策を行う必要があるのです。またプロジェクトに賛同してもらえなければ、資金調達は成功しませんから、必ず資金調達ができるという保証がない中で、様々な準備を進めるのはリスクと言えるでしょう。さらに、プロジェクトが成立した際には実施する義務が発生し、大きな責任が問われることになります。もしプロジェクトに遅延などが生じた際には、支援者が納得する説明を行う必要があります。
現在、多くのクラウドファンディングサービスが乱立していますが、メジャーなサービスを利用すれば投資家の目に留まりやすく、またサービスによっては担当者がつき、さまざまなサポートを受けることができます。もちろん資金調達に成功した場合にはサービス提供会社への報酬が発生しますが、苦境に直面している時こそ、新しい資金調達方法の1つとして検討してみる価値はあるでしょう。
著者
株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所
1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。