コロナ禍で一気に拡大した「テレワーク」。生産性向上に繋がるか?〜中小企業経営者のための注目の経営トピックス[第5回]

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政府が数年前から推奨してきた「働き方改革」を実現するための切り札と呼ばれている「テレワーク」。なかなか導入に踏み切る企業は少なかったものの、新型コロナウイルスの脅威により一般化し始めました。

本連載では、メディアでも注目されている企業経営に関するトピックスを解説します。今回は「テレワーク」は、今後どのように進化し、日本企業に浸透していくのか、考えていきます。

そもそもテレワークとは

まずテレワークの語義について、おさらいしておきましょう。テレワークとは「Tele(遠隔の、を意味する形容詞)」と「Work(仕事)」を掛け合わせた造語。似たような造語には「Telephone」や「Television」があります。

会社へ出勤せず、離れた場所で働く労働形態を指しますが、テレワーカーは個人事業主ではありません。特定の企業に所属し、その企業のために働くのです。ほかにテレワーカーと混同されやすい、以下のような名称があります。

[モバイルワーク]
テレワークの一種。特定の企業に所属しているが、頻繁に出社はせず、モバイル通信で企業と連携を図る労働形態。外回り業務の担当者が該当する。

[ノマドワーク]
ノマドは、遊牧民という意味。家畜とともに移動する彼ら同様、PCなど仕事に必要な機材と資本があれば、世界中のどこでも働けるフリーランスワーカーを指す。

[SOHO]
Small Office Home Office」の略称。在宅勤務を指しているが、特定の企業に所属しない個人事業主が該当する。

コロナショックを機に導入されたテレワーカーの大半は在宅勤務です。このため「モバイルワークとSOHOの内容を掛け合わせた労働に従事する会社員」ということになるかもしれません。

直近のテレワーク導入実態は

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎながら事業継続性を確保するため、導入が進んだテレワークですが、実態はどうなのでしょうか。正確なデータの把握はまだ先になりそうですが、結果を報告している調査もありますので、以下に紹介していきましょう。

パーソル総合研究所が「10人以上の企業で正社員として働く、全国の20~59歳の男女」を対象に実施した2020年3月の調査によると、テレワーク導入率は全国平均で13.2%でした。しかし4月の再調査では、倍以上となる27.9%にまで上昇しています。特にオフィスが集中している東京都では、3月に23.1%→4月に49.1%と急増しました。全国の導入率は3割以下にとどまりましたが、都心では2~3人に1人の正社員がテレワークを経験したということになります。

[図表1]3月と4月のテレワーク実施率

(出所) 株式会社パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」より株式会社ボルテックス100年企業戦略研究所が作成

現場の声から見るテレワークのメリット・デメリット

先述の調査の中には、テレワークへの不安に関する設問も設けられていました。言い換えれば、テレワーク経験者の感じたデメリットの集計です。

最も多かったのは「非対面のやり取りでは、相手の気持ちがわかりにくい」という意見。また「上司から仕事をさぼっていると思われないか」「将来の昇進に影響が出るのではないか」など、管理職の反応に対する不安も多くあげられています。そのほか「出社中の同僚の負担が増えているのでは」「相談しにくい、仕事を頼みにくいと思われていないか」など、共に働く人たちを意識した意見も目立ちました。

そのほかインターネットやSNS上では「自宅の環境がテレワークに適さない」「オンオフの切替えが難しい」「情報セキュリティ面が心配」などのデメリットがあげられています。また管理職に就く人たちから「部下の勤務態度が見えにくく、公正な評価がしにくい」という意見が出ているのは、気になるところです。

もちろんテレワークのメリットを実感する声もあがっています。「通勤時間が省けるのは、とてもありがたい」という声が非常に多いほか「育児をしながら仕事ができる」という意見も。就労に制限のかかりやすい主婦/主夫層にとって、テレワークが可能性に満ちた労働形態であることがわかります。また「自己管理能力が高まった」「新しい発想が湧いた」というポジティブな感想も、少なからずあげられています。

テレワークの持つ本来の意義とは

5月下旬の緊急事態宣言解除を受け「6月1日から通常出社する」という声が聞かれるようになりました。しかし感染拡大の第二波、第三波が危惧されており、状況が急変する可能性は残っています。その時には再び、テレワークが活性化するでしょう。

ではコロナの脅威が去った後、テレワークは必要なくなってしまうのでしょうか?ここで総務省が提示している「テレワークの効果」を、改めて確認してみましょう。

[企業]
生産性の向上、優秀な人材の確保・離職抑止、コスト削減、事業継続性の確保

[就業者]
多様で柔軟な働き方の確保、育児や介護・治療などとの両立、通勤時間削減

[社会]
労働人口力の確保、地域活性化促進、環境負荷軽減

このようにテレワークは、ワークライフバランスの実現や労働力人口の確保に大きな影響を与える労働形態として、注目に値します。

また総務省は、在宅勤務とモバイルワークのほかに「サテライトオフィスでの就労」を、テレワークの一環と位置付けています。

サテライトオフィスとは、本社や所属オフィスとは別に設置され、ある程度のビジネス機能を兼ね備えた就業場所を指します。オフィスであることに変わりはないものの、本社との距離は「遠隔」にあたるため、テレワークの一形態と言うことができるのです。

テレワーク普及のカギを握るサテライトオフィス
テレワークの未来を考えたとき、サテライトオフィスは、ひとつの有効な展開案となりえます。生産性の向上や事業継続性の確保はもちろん、通勤時間削減や地域活性化促進など、テレワークの効果を複数実現する可能性が、含まれているからです。

企業にとっては「これまで通勤距離を考慮して、見送らざるを得なかった人材の採用が可能となる」「遠距離通勤者の交通費を削減できる」というメリットも。また地方都市のサテライトオフィスを利用すると、都心に比べ物件の賃料が低く抑えられるほか、営業範囲の拡大に繋がる可能性もあります。もちろん在宅勤務とは大きく異なるスタイルですから、コミュニケーションやセキュリティ面での不安も、緩和されやすくなるでしょう。

コロナショックが押し進めた今回のテレワークは、あくまで非常事態を乗り越えるための方策でした。しかし少子高齢化が進む日本で、効率的な労働や生産性の向上を目指す時、テレワークの持つ可能性を否定することはできません。会社員として働く一人ひとりが新しいワークスタイルを考え、活発に意見を交換していくことは、非常に大切なことです。この数カ月で得た気づきを実際の導入へ繋げる、前向きな姿勢が大切となってきそうです。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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